若者の失業問題を解決せよ。学生のためのノーベル賞「Hult Prize」が東工大で開催

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世界1,200以上の大学の学生らが社会課題の解決につながるビジネスアイデアを競い合う、「学生のためのノーベル賞」とも称される世界的な学生ビジネスプランコンテストをご存じだろうか?

それが、ハルト・インターナショナル・ビジネススクールの野心溢れるMBA学生だったAhmad Ashkar氏が2009年に立ち上げた「Hult Prize(ハルトプライズ)」だ。若者の力で持続可能な社会の実現に向けたスタートアップのアイデアを生み出すことを目的として始まったこのビジネスコンテストは、今や世界中に2,500人のスタッフを抱え、この10年で50万米ドル以上の資金を動かし、世界100ヶ国以上で100万人以上の若者を刺激する世界で最も影響力のあるムーブメントへと成長している。

世界中から応募してきた学生の頂点に立ったチームに与えられる優勝賞金はなんと100万米ドル。社会はもちろん、参加する学生の人生をも大きく変えうる特別なイベントだ。

10周年となる今年、このハルトプライズのオンキャンパスプログラムが東京工業大学にやってきた。主催したのは同大学に通うGrace Kaghoさんを中心とする組織委員会で、同大の飯島淳一教授のサポートのもと、学生たちが主体となってゼロからイベントを作り上げた。

12月8日にキャンパスで開催されたコンペティションには、3~4名程度の東工大生で構成されるチームが合計20チームエントリーし、当日は17チームがビジネスアイデアを競い合った。

ハルトプライズのテーマは、毎年ビル・クリントン元アメリカ大統領によって決められる。過去には教育へのアクセス、きれいな水、クリーンエネルギー、食糧危機など様々なテーマがあったが、今年のテーマは「若者の失業」だ。具体的には、「10年以内に10,000人の若者に有意義な仕事を提供するアイデア」を提示することがミッションとして課された。

少子高齢化による労働力不足が課題となっている日本人にとって、「若者の失業」はあまり身近な問題としては捉えにくい。しかし、ひとたび世界に目を向けてみると、欧州の一部や途上国では「若者の失業」は最優先に解決すべき重要な社会課題となっており、雇用をめぐる課題は国連SDGsの目標8「包括的で持続可能な経済成長、全面的かつ生産的な雇用、すべての人のための有意義な仕事」にも掲げられている。

当日は17チームの中から6チームが最終のプレゼンテーションに勝ち残った。プレゼンでは、リサーチを行いたい研究者とフィールド調査に協力可能な学生を結びつけるサービス、電子廃棄物の収集・リサイクルと若者雇用を結びつけるビジネス、マッチングアプリ「Tinder」のようなスワイプ操作ができるゲームアプリを通じて、マーケティング調査やCSR推進をしたい企業と収入を得たい若者をつなげるサービスなど、若者の雇用を生み出すユニークなアイデアが数多く登場した。

決勝プレゼンテーションの様子

その中から最終的に優勝を勝ち取ったのは、甲斐康平さん、赤木茅さん、シュパルトフ・ペータさん、永田彩乃さんの4名からなるチーム「ITHE(アイス)」だ。

ITHEが提案したのは、ギグエコノミーのモデルを活用し、ビジネスのアイデアが思いついた人、そのプロトタイプを創りたい人、販促をする人、製品化をする人など、アイデアがプロダクトになるまでのプロセスをオンラインでワークシェアリングし、事業化に向けたアカウンティングなどのサポートも受けられるプラットフォームを創るというアイデアだ。

デザイン、IT、農業、製造など、業界や分野によって分断されている技術やコミュニティを統合し、それぞれが得意分野を活かして事業づくりに貢献できる仕組みを作ることでスタートアップ企業の生存率を上げ、新たな雇用の創出を目指す。

見事優勝を勝ち取ったITHEの4名(左から永田彩乃さん、甲斐康平さん、シュパルトフ・ペータさん、赤木茅さん)

ITHEのアイデアは、もともと赤木さんが研究室で取り組んでいるテーマから生まれたもので、ハルトプライズへの参加をきっかけに4人で議論を進めたことでようやく認められるビジネスアイデアまで昇華したのだという。

ITHEのメンバーらは「優勝という結果に驚きが隠せない」としつつ、「今回のテーマは非常に難しく、誰をターゲットにどんなメッセージを届けるのか、それはビジネスとしてインパクトがあるのか、という点に時間をかけて議論を重ねた」と話してくれた。

また、今回のハルトプライズのスポンサーでもあり、審査員も務めた東工大系のベンチャーキャピタル、みらい創造機構の金子大介氏は、今回のイベントを支援した理由について「今後は東工大の学生スタートアップをどんどん増やしていきたい。東京大学には東京大学エッジキャピタルができて約10年が経ち、今ではスタートアップに行く東大生も普通になったが、東工大はまだまだスタートアップ企業が少ないのが現状。当社はまだ会社ができて4年、ファンドができて2年少しだが、文化を創るには10年かかるので、長期的な視点でサポートしていきたい」と語った。

みらい創造機構の金子大介氏

大学生や大学院生が世界中にいる同年代の若者と社会課題の解決に向けたビジネスアイデアを競い合うというイベントはなかなかない。プレゼンテーションの勝ち負けに関わらず、今回参加した学生にとっては非常に貴重な機会になったに違いない。

世界の将来を担う若者たちが国籍や国境を超えて体験を共有することで生まれるコミュニティやネットワークは、彼らが大人になりそれぞれの組織や業界で影響力を持ったときにその真価を発揮するはずだ。

今回優勝したITHEチームは、15チームが参加する地域別の決勝ラウンドに進出し、優勝すれば来年夏のインキュベーションプログラムへの参加資格が得られる。そこでメンターらのサポートのもとビジネスモデルを磨きあげ、最終的に2019年9月に行われる決勝ラウンドで勝利すると、賞金の100万米ドルを手にすることができる。

最終的にどんなチームが、どんなアイデアと共に栄冠を手にするのか。ITHEの健闘を期待するとともに、今後の大会の行方に期待したい。

Hult Prize Tokyo Tech 参加者全員の集合写真

【参照サイト】Hult Prize Tokyo Tech
【参照サイト】Hult Prize