バングラデシュの革職人と日本の企業の協力によって作られた“フェア”なビジネスバッグ「Jillanie(ジラニエ)」が、クラウドファンディングを行い注目を集めている。
“バッグはただ荷物を運ぶ道具ではなく、自分らしさを表現するもの”という考えのもとで生まれた、シンプルながら存在感を放つレザーのバッグ。プロジェクトに携わったのは、ビジネスを通して途上国への支援を行う株式会社4th Avenueだ。
このバッグを見たとき、背負ったとき、歩いているときなど、あらゆる場面で気分が上がるかどうか。そのバッグについて誰かに語りたいと思えるかどうか。そんなことを考えた結果、余計な装飾のないデザインになったという。
背中からカバー部分まで一枚革が使われており、バックの前面には細かなものを入れるポケット、バックの中にはPCを入れるスリーブなど、ビジネスバッグとして無駄のない最低限の機能を兼ね備えている。
Jillanieが他のレザーバッグと大きく異なる点は、製品の購入によって得られた利益を“フェア”に分配する仕組みがあること。プロジェクトに関わる人々への基本給を含む全経費を差し引いた純利益を、バングラデシュの会社、スタッフ、革職人チーム、日本の会社、スタッフでそれぞれ20パーセントずつ分ける。
つまり、職人たちは給料に加えて20パーセントの報酬も受け取ることになる。また、お金の流れを見える化するため、分配される報酬をウェブページで公開する予定だ。
このプロジェクトの背景にあるのは、バングラデシュの革職人の貧困問題である。職人たちは専門的なスキルとプライドを持ち、20年以上働いているにも関わらず、ひと月にたった2万円ほどしか貰っていないという。バングラデシュの一般家庭の生活費は約1万円以上かかるため、子どもの教育費や、交際費、医療費などのためにさらにお金が必要になる。
また、ある革職人は家族を近くの街に住まわせるお金がないため、自分は工房で寝泊まりをし、その家族は離れた村で暮らすという生活を10年間続けているそう。
Jillanieの仕組みによって、職人のもとに多くのお金が流れ、職人の家族だけでなく周りのコミュニティなどにも恩恵がもたらされ、世の中が自然と良い方向へとむかっていくことをこのプロジェクトでは目指していくようだ。
Jillanieのコンセプトは、バックを背負った人をカッコよく見せるだけでなく、 社会も良くなることで持ち主を特別な気持ちにさせること。デザインそのものにこだわることに加え、「鞄を買う」という単なる消費活動に新たな価値を加えたのだ。また、バッグには職人たちの顔がエンボス加工されたキーホルダーが付いており、消費者が生産者へも思いを馳せられるようにという願いが込められている。
バングラデシュでは、1日200円以下しか使えない生活水準を持つ貧困層が24.3%もいる。このバックが多くの人に買われることによって、職人たち、その家族、地域社会、国、世界へと豊かな連鎖を生むことができるのだ。シンプルでわかりやすい“フェア”な仕組みが、これから世界を緩やかに変えていくことに期待したい。
(2020年10月22日追記)再び日本でクラウドファンディングが始まっています → Jillanie – 世界をフェアにするビジネスバックパック
【参照サイト】外務省バングラデシュデータ
【参照サイト】The World Bank Bangladesh