多くの雑誌やメディア、本などがデジタル化されている今、印刷会社の今後が危ぶまれている。経済産業省「平成29年工業統計調査」によると、印刷産業の2016年の出荷高は前年に比べて3.4%減の5兆2,752億円、事業所数は4.8%減の2万3,205カ所と縮小している。
一方で、古紙は年間2,000万トン以上廃棄されていることをご存知だろうか。この印刷廃材をそのまま捨ててしまうのではなくクリエイティブな製品に変え、中小企業が主体となって印刷業界を活気づけるプロジェクト「大喜利印刷」の製品展示会が、渋谷のFabCafe MTRLで1月17日から始まった。
全日本印刷工業組合連合会がプロデュースするこの企画では、日本各地の印刷会社4社による実験的クリエイティブユニット「CMYK」が結成された。ユニット名はC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の色の3原色とK(ブラック)から取られており、これらの色を混ぜ合わせることであらゆる色彩を表現することができるという。印刷業界ならではのネーミングだ。
紙業界の低迷は、パソコンやスマートフォンの隆盛と大きく関係している。そんななかCMYKはライバルともいえるインターネットの雄、ツイッターに人々がこぼす、さざなみのような小さな呟きを原資に、ユニークで思わず使ってみたくなるプロダクトの数々を開発した。
三共印刷所(福島県、東京都)の通称チームコンビニは、印刷工程で不用となったヤレ紙(※1)や使い終わったカレンダーで、実に見事なグラフィックを描くことが出来る『ガムテープ文字ジェネレーター』や、印刷用紙が包まれる厚手のクラフト紙「ワンプ」を使って水に弱い紙製品の難点を解決する『ワンプde...』をこの展示会に投入している。
篠原紙工 (東京都)が開発した紙ナプキンのメモ帳は、レストランやカフェなどで人々が紙ナプキンについメモや落書きをしてしまうことにヒントを得たプロダクトで、ソフトな紙の引っかかり具合まで再現している。雑談しながら軽いタッチでペンを動かすことで、脳が活性化されさまざまなアイデアが浮かんでくる。
平山印刷 (沖縄県)のパラパラまんがマシン『P16号』は、楽しくアニメーションの原理を学ぶことができるプロダクトだ。また、オブジェとして飾っておくだけでも場が和むだろう。
他にも『印刷屋さんの芳香剤』や、顔を隠して早弁できる『早弁専用ゴーハン英和辞典』、白いものだと思い込んでいた障子をあえて黒く染め抜き、星をちりばめていつでも星空を楽しめる『障子の星空』などの製品には目からうろこが落ちる。
どのアイテムも、プロダクトというよりアートの領域に達している。本来なら捨てられてしまう大量の廃材にこれだけの息吹を吹き込むクリエーターならではの、実に自由な発想力をとくとご覧あれ。
※1 刷り始めはインクの乗りが安定しないため、品質を保つために廃棄しなければならない紙のこと
「大喜利印刷」展示会情報
場所 | FabCafe MTRL |
住所 | 東京都渋谷区道玄坂1丁目22−7 道玄坂ピアビル2階 |
営業時間 | 10:00~22:00 |
営業日 | 月~金 |
URL | https://mtrl.com/shibuya/ |
【参照サイト】大喜利印刷