日本で本物の銃を目にすることは滅多にない。しかし世界に目を向けてみると、数百万丁の違法な銃器が出回り、一秒に一人が銃によって命を落としていると言われている。とりわけ法規制や法律遵守がおざなりにされ、貧困等の社会問題が多い開発途上国では、深刻な問題となっている。
そんな違法な銃を世界中から無くそうと奮闘するのが、スウェーデンのNPOであるIM Swedish Development Partner(以下、IM)だ。IMは違法銃器を回収して溶かした人工的な金属「ヒューマニウム」を作り出した団体で、1938年から平和のための地道な活動を続けている。以前、IDEAS FOR GOODでご紹介した「違法銃から作られたイヤホン」もIMと音響機器メーカーの連携により生まれたものである。
そしてこの度、ヒューマニウムから新たに腕時計を作り出したのが、日本にも上陸したスウェーデンブランドTRIWA(トリワ)だ。TRIWAは北欧特有のシンプルさとクラシカルなフォルムを融合させ、腕時計に新たなバリューを創出した。2019年1月25日(金)よりTRIWA SHOP表参道、TRIWA POP UP STORE銀座にて先行発売し、2019年2月8日(金)からはTRIWA取扱店舗で販売を開始するようだ。
誰もが携帯電話を持つこの時代、腕時計は時間を把握するためのツールだけではなく、ファッションアイテムとしての価値を高めている。
そして使用される金属には、世界から違法な銃を取り除いたという“重み”も加わっている。TRIWAはまた、銃を無くすだけでは満足せず、売上の一部を紛争地域の復興と、負傷した被害者救済のために寄付している。この時計はまさに、世界平和のシンボルともいえるだろう。
IMはこれまで、自分たちで発足した「Humanium Metal Initiative」のイニシアチブを通して約1トンのヒューマニウムを生産してきた。また2017年には、カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルで金属であるヒューマニウムが「ライオンズイノベーション」も受賞している。
人や希少な自然動物を傷つける銃器を回収して破壊し、新たに有益なものを生み出すこの取り組み。自分の身を守るために銃で武装する必要のない、安全で平和な社会を構築していくことが急務であるこの社会で、世界中の市民の願いを形にした一例だ。