その「油」は大丈夫?LUSHと考える、絶滅危機のオランウータンを救うエシカル消費

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「パーム油」という油を知っているだろうか。

パーム油は実は世界で最も多く生産されている植物油脂だ。即席麺、スナック菓子などの食料や、石鹸、洗剤、化粧品といった生活用品など、パーム油は固めても溶かしても使用できる油で、安価で作りやすいため幅広く使われている。

これほど大量に使用されているというのに、なぜパーム油の存在が消費者に知られていないのだろうか。その理由として日本では原材料表示にパーム油を「植物油脂」と記載していることが多く、内訳まで表示することを義務化されていないために消費者がいかにパーム油を日常的に消費しているのかが認識されにくいということがある。

生産地に目を向けてみると、パーム油の原料はアブラヤシの実であり、インドネシアの森はアブラヤシの植林が盛んなため世界一森林破壊の速度が速いと認知されている。その影響でインドネシアに生息する絶滅危惧種のオランウータンは16年の間で半減したという。パーム油の需要が世界中で高まれば高まるほど森林伐採や山焼き、交通インフラの整備などによって、自然豊かな生態系が消えていく。

この現状から化粧品ブランドLUSHは、2019年1月25日から2月7日(木)の間、インドネシア、スマトラ島に生息するオランウータンの住処である森林再生を目的にした「#SOSsumatra キャンペーン」の第2弾を実施している。

今回、IDEAS FOR GOOD編集部はLUSHが主催する、オランウータンを取り巻く現状を3団体が紹介するトークイベントに参加し、各団体のアクション事例とLUSHのキャンペーンについてお話をお伺いした。

イベントの様子

イベントの様子

登壇者一覧
  • 熱帯林行動ネットワークJATAN運営委員 中司喬之氏
  • 一般社団法人グリーンピース・ジャパン広報担当 河津純子氏
  • 学生団体palmstream 代表 樋山輝氏

熱帯林行動ネットワーク(JATAN)「パーム油を利用する企業に情報公開を」

この画像を見てほしい。

via Centre for Orangutan Protection

Image via Centre for Orangutan Protection

一見すると荒れ果てた森の中をオランウータンが歩いているだけに見える。しかしこれは森が焼かれた後のアブラヤシ農園に迷い込んだオランウータンの姿だという。

熱帯林行動ネットワーク(JATAN)運営委員 中司喬之氏によると、普段オランウータンは森の中で木を伝いながら生活する動物であるため、このように何もない地上を歩いていることは異常であるという。飢えたオランウータンはもともとあった住処を山焼きによって失ったことで、パーム油の原料となるアブラヤシの芽を食べてしまうため、害獣として駆除の対象になるのだ。

このような現状に対して、同団体は環境保護団体である5団体(メコン・ウォッチ、FoE Japan、地球・人間環境フォーラム、レインフォレスト・アクション・ネットワーク日本代表部、サラワク・キャンペーン委員会)とのパンフレット作成や、パーム油の使用について企業へのアンケート調査、一般向けにパーム油を巡る問題について現状を伝える活動などを行っている。

また、同団体が運営する「あぶない油総選挙」のサイトではカップ麺やチョコレートの各人気商品がパーム油を使用しているかどうかをメーカーに情報公開することを求めている。誰でも参加可能で企業に情報公開を求めることが出来るので、ぜひアクセスしてほしい。

グリーンピース・ジャパン「企業のファンを巻き込んだ署名活動」

一般社団法人グリーンピース・ジャパン広報担当 河津純子氏によると、グリーンピースでは企業に直接働きかける以外にも、現地調査や企業のファンを巻き込んだ署名活動を行っているという。

グリーンピースジャパン河津氏

グリーンピース・ジャパン河津氏

グリーンピース・ジャパンがパーム油使用についてキャンペーンを行っているのは世界最大のパーム油取引企業であるウィルマー・インターナショナルである。同団体はウィルマー・インターナショナルが取引する大手菓子メーカーや化粧品メーカーのファンを含む世界130万人から「自分の好きな商品が持続可能で環境にやさしい商品であってほしい」という署名を集めた。

そこで2019年末までにウィルマー・インターナショナルは森林伐採を行う供給者からパーム油を買わないことや、供給者が森林伐採を行った場合に取引をやめること、さらに衛星のモニタリングを使って供給者が森林伐採をしていないか管理することなどを取り決めた。今後もグリーンピース・ジャパンは聞き取り調査や課題の交渉によって経過をモニタリングしていくようだ。

palmstream「無関心層にも気づきを与える」

学生団体palmstream 代表 樋山輝氏は高校の生物の授業でパーム油に興味を持ち、団体を立ち上げた現在も代々木公園のアースデイや渋谷のエシカルフェスタなどのイベントで参加者にパーム油の現状を伝えてきた。

そうした活動の中で樋山氏は、イベント参加者の大半は既に社会課題に敏感であるため、無関心層を取り込まなくてはいけないと感じ、2018年5月の2日間ズーラシアでイベントを行った。そのイベントで樋山氏は、参加者にパーム油に関する楽しい謎解きをしてもらい、最後にレクチャーとして「絶滅に瀕したオランウータンに消費者ができることは何か」を伝えた。こうして動物園に訪れた2000人ほどのパーム油を聞いたことがない人たちにも関心を持ってもらうことができた。

palmstream樋山さん

palmstream樋山さん

この取り組みを通して樋山氏は、イベントの参加者に商品に何が使われているのか、成分表にもっと関心を持って見てみることや、好きな商品を扱う企業にサステナブルなパーム油を使っているかを問い合わせることといった消費者としてできる大事なアクションを提案することができた。

LUSHが挑む、失われた森林の再生

森が消える時彼らも共に消えてしまう

森が消える時彼らも共に消えてしまう

今回LUSHが始めた本キャンペーンでは期間中、スマトラ島に生息するオランウータンの数に値する合計14,600個のチャリティ商品「オランウータン ソープ」を発売するほか、オンラインショップ限定アイテムとして「スマトラ シャンプバー」も販売する。それぞれパーム油不使用の、イノベーティブな商品だ。

このキャンペーンによる売り上げ全額で、アブラヤシの植林に使われていた50ヘクタール(東京ドーム約10個分)の土地をパートナー団体を通じて追加購入する。購入した土地の森林を再生させることで、絶滅の危機に貧するオランウータンなどの野生生物の保全につなげる。

パーム油との戦いはキャンペーンでは終わらない。これからもLUSHは環境に負荷をかけずに商品クオリティを担保できるようなパーム油の代わりになる原材料を探し続ける。さらに取引先企業の徹底調査だけでなく消費者の啓蒙を含めて取り組んでいくという。

インタビュー後記

イベントの後、株式会社ラッシュジャパン PRマネージャーの小山大作氏が「安いからではなく、ブランドの信念に基づいて倫理的な考え方をもって購入することが、ラッシュの原材料購買の絶対条件」と話していたことが強く心に残った。大手化粧品メーカーであるLUSHがこうした環境問題に積極的であることによって生まれる、これまで無関心だった消費者や生産者に対する影響力は計り知れない。

確かに、インドネシアやスマトラ島のオランウータンの話と聞くと日本人には想像しづらいと思うかもしれない。しかしいつも目にする生活用品や食料品が、絶滅に追い込まれている動物の住処を犠牲にして生み出されているものだとしたら、私たち消費者ができることは沢山ある。1人の消費者があるブランドに動物実験をしているかと問い合わせをしたら事業の見直しになった例もあるほどだ。

まずはイベントなど、知るきっかけになる場に積極的に出かけること。そして消費者から見えないことに対して知らないふりをしない。そんな姿勢が遠く離れた生態系を救う。

【参照サイト】LUSH 1月25日、日本を含む9の国と地域でチャリティ商品「オランウータン ソープ」を販売
【参照サイト】ズーラシア謎解き振り返りシート