米ワシントン州立大学が、新たに介護ロボット(以下、RAS)を開発した。このロボットの目的は、主に高齢者や認知症患者が自分の家で自立して暮らすための支援だ。スマートホームに組み込まれたセンサーを使って、ユーザーの居場所や行動を検知し、日常生活において支援が必要な場面を判断するという。実用化に向けた実験も、すでに行われている。
いま、日本を含めた多くの国で高齢化が進んでいる。日本では、65歳以上の人口の割合が2025年に約30%、2060年には約40%に達すると予測されており、高齢者人口の増加に伴う介護職の人手不足も深刻化してきている。
ワシントン州立大学によると、85歳以上の高齢者の50%が、食事の準備や薬の服用など毎日の生活へのサポートを必要としているそうだ。米国におけるこういった支援の年間費用は約2兆ドルにのぼる。さらに、85歳以上の人の数は2050年までに3倍になると予想されている。
そんななか、「生活への支援が必要な高齢者の多くは、自宅での生活を望んでいる。」と語るのは、適応システム高度研究ワシントン州立大学センターのディレクターで、RAS開発に寄与したクック氏だ。同氏は「私たちは介護者(ヘルパー)を呼んだり、高齢者を老人ホームに住まわせたりするのではなく、テクノロジーを使って彼らが自立して暮らせるようにしたい。」と続ける。
さらにクック氏は、RASなどの技術が高齢者の自立を支援することで、医療システムへの経済負担を減らすことを願っている。
RAS の仕組みはこうだ。RAS は障害物を避けながら部屋を通り、ユーザーである高齢者のところまで行く。そして、高齢者に簡単な操作方法をビデオで指示し、薬がある場所や台所にある目的の食べ物まで高齢者を連れて行くのだ。
実証実験では、26人の学生がRASを使って、スマートホームで以下の3つのタスクを行った。犬の散歩の準備、食事をとったり水と薬を飲んだりすること、そして植物に水をやることだ。
学生がタスクの開始に失敗したり、タスクの実行が困難だったりすることをスマートホームのセンサーが検出すると、RASは助けを求めるメッセージを受け取る。その後、RASはマッピングとナビゲーションカメラ、センサー、およびソフトウェアなどを駆使しながら、家にいる学生を見つけてタスク実行を手伝ったという。
そして学生は、タブレットを使って、いま行っている最中のタスクの次のステップをビデオで確認したり、タスク全体のビデオを見たいと指示したり、犬の散歩用リードや台所にあるシリアルまで連れて行ってくれるように、ロボットに頼んだりできたのだ。
実験後、研究に参加した学生の多くはRASを高く評価し、タブレットが使いやすかったと語った。「RASはまだ開発の初期段階だが、期待できる結果が得られた。次のステップは、高齢者グループと一緒にRASのパフォーマンスをテストして、ロボットに関する理解を深めることだ。」と研究チームの一員であるマイナー氏は述べている。
高齢者や認知症患者が、自分の家で自立して暮らすための支援をする介護ロボット。私たちが必ず迎える老後を、できるだけ満足して心豊かに過ごせるように、介護ロボットが助けてくれる日がもうすぐ来るのだろう。今後の開発に期待したい。
【参照サイト】WSU smart home tests first elder care robot
【参照サイト】総務省 超高齢社会におけるICT活用の在り方
(※画像:WASHINGTON STATE UNIVERSITYより引用)