【デンマーク特集#7】ゼロウェイストを目指して。100%オーガニックの量り売り専門店「LØS market」

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ヨーロッパやデンマークと聞くと、環境に配慮したサステナブルなライフスタイルをイメージする方が多いかもしれないが、実際にはまだまだ課題もあるのが現状だ。Eurostatによれば、EUでは毎年一人あたり156kgもの包装廃棄物が生まれている。

食料廃棄削減に取り組むNGO、Stop Spild Af Mad(Stop Wasting Food)などの活躍によって2010年から2015年までの5年間で25%もの食料廃棄削減に成功し、欧州中の注目を集めたデンマークでさえ、いまだに家庭から出る食品廃棄量は年間247,000トンとなっており、一人あたり毎年約43kgもの廃棄を出している計算となる。

これらの食料廃棄や無駄な包装を削減し、よりサステナブルな買い物文化を定着させることを目的として2016年の9月にデンマークの首都コペンハーゲンでオープンしたのが、同国初となる、パッケージを一切使用せずに100%オーガニック商品のみを取り扱う量り売りストア、「LØS market」だ。

LØS marketでは、ナッツ、チョコレート、フルーツ、野菜、紅茶、コーヒー、調味料、パスタ、お米、豆、オイル、ビネガー、石鹸など食品を中心とする約350種類のオーガニック商品を量り売り形式で購入することができる。

LØS marketの店内

システムはとてもシンプルで、自分で持ってきたビンなどの入れ物を量りにおいて重さを量り、出てきたラベルを貼ったらあとはその入れ物に好きな商品を好きなだけ詰めて、レジに持っていくだけだ。包装は一切使用しておらず、必要なものを必要なぶんだけ購入できるので、家庭でのロスも減らすことができる。

この量り売りシステムはよりサステナブルな買い物スタイルを望む市民から人気を集め、現在コペンハーゲン市内で2店舗を運営している。

LØS marketを立ち上げたのは、21年前にフランスからデンマークに移住してきたフレデリック・ハンバーガーさんだ。フレデリックさんはこの店をオープンした経緯について、こう語る。

「もともと輸出関連の多国籍企業で働いていたんだけど、自分たちのやっていることが環境に悪影響を与えていることに罪悪感と恐怖を覚えて、その仕事にうんざりしてしまったんだ。僕はもともとオーガニックフードを愛するような家庭で育ってきたから、いちど自分のルーツに立ち戻って、そこで仕事の経験を生かしたいと思った。一番大事なことは、CO2も含めてあらゆる環境への負荷を減らすことだよ。」

フレデリック・ハンバーガーさん

LØS marketの肝となるポイントは、大きく4つある。ゼロパッケージ、食品ロスの削減、100%オーガニックの商品、そしてそれらを一般の小売店よりも競争力のある価格で提供することだ。

LØS marketでは、買い物に使用するガラス瓶や袋などの容器を何度も繰り返しリユースするのが前提だ。店頭ではオリジナルなエコバッグなども販売されているほか、顧客がいらなくなったガラス瓶や容器を店に持ってきてシェアできる仕組みがあり、入れ物がない人も買い物ができるようになっている。

また、量り売りというシステムをとることで、50グラムだけ、100グラムだけといったように必要なものを必要なぶんだけ買えるので、自宅での食品ロスも減らせるほか、経済的にも無駄がない買い物ができるようになっている。また、新鮮さが重要となるフルーツや野菜についても古くなったものは最大50%まで値下げをすることで、店で発生するロスも極限まで減らしている。

そして、LØS marketが取り扱う商品は100%オーガニックとなっている。化学肥料などを使用せず、環境に負荷をかけない形で育てられた野菜や果物だけを販売することで、顧客の健康も地球の環境も同時に守ることを大事にしている。さらに、商品についてはできるかぎり地元デンマークの農家から調達することで生産と消費の距離を短くし、輸送などにかかる環境負荷も減らしている。

最後のポイントは価格にある。LØS marketでは、大量の商品をまとめて調達することで一般的なスーパーマーケットよりも安くオーガニック商品を提供しているのだ。環境意識の高い人はもちろん、価格を重視する人にとってもLØS marketでの買い物は魅力的な選択肢となっている。

フレデリックさんの出身であるフランスでは、こうした量り売りスタイルの店はすでに普及していたものの、2016年当時のデンマークでは全く新しいコンセプトだった。そのため、最初は銀行などの協力を得るのが大変で、特にお金集めに苦労したという。

しかし、最終的にはクラウドファンディングにより55,000ユーロの調達に成功し、そのクラウドファンディングに参加してくれた人々が最初の顧客ベースとなってくれたことで、順調にビジネスをスタートできたそうだ。いまでは、市内ではなく遠くからわざわざLØS marketに買い物に訪れる人も少なくないという。

消費者の環境意識が高いイメージがあるデンマークだが、フレデリックさんによれば、「フランスやドイツと比べるとまだまだ遅れている」とのこと。それでは、どのように消費者の意識を高めていけばよいか?との質問に対しては、こう返してくれた。

「そうだね、こういった場所を増やして、そして人々が自分自身で選択できるようなツールを与えること、そしてそれは可能だってことを示すこと。それが大事だね。彼らがよい経験をして、それが気持ちよいことだと感じてくれて、そしてより環境に配慮した行動をとる人々がマジョリティになっていけばいいね」

サステナブルな消費スタイルを浸透させていくコツは、LØS marketのような店を一つでも多く増やすこと。フレデリックさんのその回答は、シンプルながらも非常に的を射ていると感じた。

日本では、いざ環境に配慮した買い物をしようと思っても、消費者に十分な選択肢が与えられていないのが現状だ。量り売りの店も少ないし、コンビニに行けば自分から断らない限り、勝手に商品をビニール袋に入れられてしまう。パッケージも必要以上に小分けになっており、家に持ち帰ればゴミとなる。

消費者一人一人が意識し、努力することも大事だが、それ以上に、少しでも環境に優しい選択をしようと思ったときに、それをすぐに実践できる状況をつくることも大事なのだ。

現在2店舗を少人数で運営しているフレデリックさんの次なる目標は、コペンハーゲンで新しい店をオープンすることだという。地道だが、着実にコペンハーゲンの人々の生活に変化をもたらしているLØS marketのような店が、日本においても少しずつ増えていくことを期待したい。

【参照サイト】LØS market