待ち時間は、文学に触れよう。1分で読める短編小説を買える無料自動販売機

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通勤中の電車内や、待ち合わせをしているときなど、空き時間にはついスマートフォン(以下、スマホ)ばかりを見ていないだろうか。SNSやアプリゲーム、動画視聴、地図検索などさまざまな機能が詰まったスマホでできることは多く、中毒性が高い。

モバイルに特化した調査研究機関、MMD研究所が2016年に実施した「スマホ依存に関する調査」によると、10~30代の2割以上が「かなり依存している」と自覚し、その内の21.2%が1日に7時間以上スマホを触っていると答えたという。また、厚生労働省研究班は、病的なインターネット依存が疑われる中高生が過去5年間で倍増し、全国で93万人に上るとの推計を発表した。肩こりや眼精疲労、睡眠障害、うつ病などを引き起こすスマホ依存は、誰もがなりかねない現代病だろう。

今回は、ディスプレイばかり見ている現代人にぴったりな「無料自動販売機」を紹介する。2019年4月にロンドンの駅構内に置かれたこの自動販売機には、1、3、5分と書かれたボタンがあり、押すと短編小説や詩などランダムな文学作品をチケットのように印刷できるのだ。

短編小説を出してくれる自販機

印刷される作品のテーマは多様で、サスペンスやSF、恋愛ものなど300万点以上の作品を、8000人の作家が書いているようだ。この自動販売機は2011年にパリのシャルル・ド・ゴール空港に設置されてから話題となり、現在では駅、病院、カフェ、ホテル、大学のキャンパスなど世界各地2000ヶ所に広がっている。

設置場所の多くが、人が待ち時間を持て余す場だ。うつむいてスマホを触るだけではなく、質の高い文学にも触れることで人生を豊かにすることを提案している。

短編小説を出してくれる自販機

Photo by Olivier_ALEXANDRE

この自動販売機を考案したフランスの会社Short Editionは、社会全体の文学に対する関心の低さに危機を感じていた。隣国のイギリスでは、SNS利用で忙しいという理由で、年間5300万冊の本が読了されていないという。Short Edition社は、時代を超える文学の重要性を説き、本を読むことへの意識を向上させるためにこの自動販売機を考案したのだ。

情報が溢れるスマホから目を離し、多くの学びを与えてくれる文学作品に気軽に触れることができる自販機。デジタルデトックスや、読書に興味を持つきっかけにもなるだろう。世界各地で設置が進む同社の取り組みに、今後も注目したい。

【参照サイト】Short Story Dispenser
【参照サイト】These vending machines are giving out free short stories to London commuters
【参照サイト】2016年スマホ依存に関する調査 – MMD研究所
【参照サイト】ネット依存 中高生の14% 厚労省推計 5年で倍増の93万人に
(写真提供:Short Edition

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