レクサスが女性寿司職人によるレストラン「なでしこ寿司」とコラボ。ブランドが伝えたかった新たな価値とは?

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近年欧州では自動車の販売台数の伸びは鈍化しており、メーカー各社は新製品の開発だけでなく、テクノロジーを活用した新しいビジネスモデルの開発やブランディングにも力を入れている。

例えばVOLVO社が「2020年までにVOLVO社製の新しい車による死傷者を0にする」というビジョンを打ち出し、交通システムやインフラへの整備も始める事例が見られる。自動車業界を始め企業のブランディングの一環として、社会課題解決へのコミットメントを表明する動きが活発化しているのだ。

高級自動車ブランドのレクサスは、ヨーロッパでの新モデル発売に合わせて、スウェーデンの首都ストックホルムで期間限定のポップアップ寿司レストランを2日間限定でオープンした。展示されている販売予定のレクサス最新モデルの脇にある店舗で、日本初の職人が全員女性の寿司レストラン「なでしこ寿司」の千津井由貴さんが握る寿司を食べられるという企画だ。

トヨタの傘下ブランドであり、日本の職人意識とプロフェッショナリズムに重きを置くレクサスは、伝統産業である寿司を通して企業のスタンスをアピールし、常に時代の古い価値観を変革する企業であることを表現している。

従来の日本の寿司文化では「女性は男性に比べて体温が高い」「月経周期のため味覚が不安定である」といった偏見に基づく要因のため、伝統的に女性は寿司職人にはなれなかった。近年はジェンダー不平等を是正する動きもあり、2010年に職人が全員女性の「なでしこ寿司」が東京に誕生するなど、寿司職人文化の変化がみられている。

レクサススウェーデンのPR&CSR担当者によれば、来店者からは好意と驚きを伴った反応が多かったそうだ。ストックホルムにいながら、東京のなでしこ寿司店舗が再現された店内で寿司を食べられるという経験と、すぐ隣に最新の高級車が展示されていることの新鮮さ、それらを組み合わせることで、レクサスが伝えたかったコンセプトは共感を呼び、来場者の関心が集まった。

レクサス側が元々見込んでいたビジネス的な効果も得られている。ビジネス街の中心地で今回の企画を行うことで、普段自動車ディーラーに訪れない人にレクサスのことを知ってもらうだけでなく、ブランドイメージや価値観を伝える機会となった。寿司レストランと高級車というユニークな組み合わせで注目を集めながら、レクサスブランドの核にある古い価値観の変革と職人意識というコンセプトを伝えることに成功したようだ。

このように近年、企業が社会課題への取り組みを踏まえてブランディングや事業の検討を行う傾向は大きくなっている。世の中から共感されるブランドになることが企業に求められる時代になっており、今後も企業が社会課題を取り上げる取り組みは増えていくだろう。

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