問題を生むのではなく解決するビジネスを。ウェスト・ポウがつくる、環境にも社会にも優しい犬用おもちゃ

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牧羊犬や、狩猟、番犬など、古くから人間を助けるさまざまな役割を担ってきた犬たち。近年は、そうした目的のために飼育されるより、「大切な家族の一員」として迎え入れられることが多くなっているようだ。ペットを飼うことが一般的になるにつれて、さまざまな店で容易に安価なペット用品を手に入れられるようになった。

壊れてもすぐ買い替えられる――そんな時代に、気軽に買えることよりも「安心して長く使い続けられること」に重きをおいたハイクオリティなペット用おもちゃを販売しつづけている会社がある。アメリカ・モンタナ州にあるウェスト・ポウだ。ウェスト・ポウは、1996年の創業以来、動物の安全に配慮された丈夫で長持ちするペット用品のデザイン・製造をしてきた。アメリカ国内での製造にこだわった製品は、地元の人々からの信頼も厚い。また、100%リサイクル可能なZogoflex(ゾゴフレックス)という独自のエコ素材を開発するなど、環境保護への取り組みにも力を入れている。働く人を大切にしており、従業員がいきいきと働きやすいのも特徴で、2013年には「関わる全ての人やモノにベネフィットをもたらす会社」として、モンタナ州で初めてBコーポレーション認定を受けている。

2019年6月、編集部は来日していた創業者兼CEOのスペンサー・ウィリアムズさんと、輸出部門マネージャーのリタ・ヴィエールさんにお話を伺うことができた。ウェスト・ポウの製品に込められたこだわりとは?Bコーポレーションに認定されたGOODビジネスとはどんなものなのか?取材のようすをお届けする。

自分たちにとって、地球のことを考えるのはごく当たり前のこと

Q:ウェスト・ポウについて

スペンサーさん:ウェスト・ポウは、1996年にアメリカ・モンタナ州で誕生したペット用品を扱う会社です。愛犬用のおもちゃや、ペット用のベッド、首輪などペット用品のデザイン、製造、販売を行っています。私たちのビジネスの目的は、犬の一生をより良いものにすること、そして、おもちゃを通して犬と人間の絆を深めることです。犬たちにとって安全なものを提供するのはもちろん、環境や社会、人間に、より良い影響が与えられるようにと心がけています。

スペンサー・ウィリアムズさん

スペンサー・ウィリアムズさん

Q:ウェスト・ポウの製品について

スペンサーさん:ウェスト・ポウの看板商品といえるのが、Zogoflex(ゾゴフレックス)という素材でできたおもちゃです。ゾゴフレックスは、多くの科学者たちの協力のもとウェスト・ポウが開発した独自素材。完全にリサイクルが可能で、環境にやさしいのも特徴ですね。

ウェスト・ポウの商品

ゾゴフレックスは、アメリカのFDA(Food and Drug Administration:アメリカ保健福祉省の組織のひとつ、食品医薬品局)により有害物質フリーであるとの認証を受けている。犬が口にしても安全だ。

ウェスト・ポウのパズルトイ

犬のための知育玩具「ゾゴフレックス タップル」。おもちゃの中に、おやつをセットして使う。おやつを取り出そうと試行錯誤することが、犬の脳に適度な刺激となり、健康が促進されるという。賢い犬でも飽きずに遊べるよう、複数のおもちゃを組み合わせて難易度が調整できるようになっている。

ゾゴフレックスを開発する際、私たちが重視したのは「丈夫で長持ちする素材」にすることでした。耐久性の高さは、犬の安全のためにも、地球のためにも大切なことだと考えたからです。

リタさん:たとえば、木製のおもちゃは、自然の素材なので犬が口にしても問題ありませんが、犬にとって完璧に安全かというとそうではないのです。人間が投げたおもちゃを犬がとってくるという遊びをしているとしましょう。犬はものすごいスピードで走っていきます。止まっているときよりも、おもちゃが体にあたったときの衝撃がより大きくなってしまうと想像がつきますよね。木はとても固いですし、衝撃を受けて破損することもあります。当たるとかなり痛いでしょうし、割れた破片が口やのどを傷つける可能性もあり危険です。

ゾゴフレックスの場合は柔軟性があるので、ぶつかっても犬のからだを傷つけることがありません。弾力性があり丈夫なので、壊れて破片が飛び散ることもなく安全なんです。

スペンサーさん:また、壊れやすい安価な製品は犬にとって危険なだけでなく、すぐにゴミとなってしまうので環境にも良くありませんよね。環境への配慮の観点からも、私たちはハイクオリティで長く使える製品を作りたいと考えているのです。また、アメリカ国内ではお客様が使わなくなった自社商品を回収、リサイクルし新たな商品へと作り替える「Join the Loop」というエコ・プログラムも行っています。

創業時から、商品の安全性や品質を評価していただいてきましたが、最近は「長く使えるものを消費した方が環境にも影響が少ない」というサステナビリティの観点から商品を購入してくださる方も多いですね。「どうせ買うなら、環境にも社会にも配慮された良いモノにお金をだしたい」と考える人が増えているように感じます。

イエローストーン国立公園

Image via shutterstock

「地球のことを考える」というのは、ウェスト・ポウのDNA。私たちにとってごく当たり前のことなんです。モンタナ州の自社工場は、イエローストーン国立公園から2時間ほど車を走らせたところに位置しています。あんなにも美しい自然を間近で拝むことができるのですから、環境を汚すのがいかに恥ずべき行為なのか、私たちはよく分かっているんです。

とくに僕は、家族が牧場を経営しており、幼いころから自然や動物に囲まれて育ってきたので、地球や動物に心配りをするのは当たり前のことでした。それが、今の事業やプロダクトにも反映されているのかな、と思いますね。

問題の元ではなく、「解決策」となるビジネスを

Q:Bコーポレーション(お客様、環境、地域社会、従業員など全てのステークホルダーに配慮した事業活動を行う企業)に認定されたウェスト・ポウだが、ビジネスで一番大切にしていることとは何か?

スペンサーさん:私たちが生み出したいのは、おもちゃそのものではなく「違い」です。私たちにとって、ペット用のおもちゃを作ることは目的ではありません。「世の問題を解決にみちびく手段」なのです。利益をあげるために地球資源を乱用したり、社会問題を引き起こしたりという問題の「根源」になるようなビジネスではなく、問題の「解決策」となれるようなビジネスを行っていきたい――私たちはそう考えています。社会にポジティブな変化をもたらすことは、ビジネスを行う者の義務であり、喜びでもあると思うんです。自社にとどまらず、製造からサプライヤー、輸送業者、ブランドや小売店など、ペット業界全体を巻き込んで良い変革を起こせるようこれからも全力を尽くしたいですね。

GOODインパクトをもたらす

Image via shutterstock

僕にとって、社会に及ぼしたいGOODインパクトのひとつは「国内に仕事を提供すること」でした。90年代後半から2000年代にかけて、アメリカの人々はモノづくりの拠点を国外に移すようになっていきました。たくさんの人に「全ての製造を海外にアウトソースしなければ事業が立ち行かなくなるぞ」とアドバイスを貰いましたが、私たちはそれには従わなかった。ずっと「アメリカ国内で生産する」ことにこだわってきたのです。それは、僕にとって「地元でモノをつくり、地元で売る」というコミュニティに根付いた仕事を作ることが重要な要素の一つだったからです。

私たちの頭の中には、どんな決断をするときにも「この選択によって、ウェスト・ポウが及ぼしたいような良いインパクトを及ぼせるようになるだろうか?」という問いがあります。パートナー企業を選ぶときも、原料の仕入れ先を探すときも、一つ一つの決断をする前にはきちんとこうしたことを考えてきました。社会に良いインパクトをもたらすことは大切ですが「事業を持続・成長させる」ことだってもちろん不可欠な要素ですよね。利益だけ、ソーシャルグッドだけ、とどちらかに偏ってしまうのではなく、「自分たちは何が得意か」を考えたうえで「ここはゆずらない」という部分を決めること、そして事業の持続可能性とバランスをとりつつ「会社にとっても社会にとっても一番良いインパクトが出せるような選択」をすることはとても重要だと思いますね。

フラットな関係性がより良いビジネスを生み出す

Q:会社のチームワークのために気を付けていることは?

スペンサーさん:会社にやってくるみんなは「スペンサーの雇われ人」ではありません。一人ひとりが大切な仲間。ですから、私たちは従業員としてではなく「人間として」きちんと関わっていきたいと思っています。そのためにも、フラットで透明な関係づくりを心がけていますね。部署や立場の違いなど関係なく、対等に話せる関係を作っておくことで、皆が自分をクリアに表現することができるようになりますし、「一人の人間として」知りあうことができます。従業員みんながより自分らしく生きられるように、心配事も、新しいアイデアも、気軽に口にできるような状況を作っておきたいと考えていますね。

リタさん:仕事に関係することからそうでないことまで、様々な学びの機会が設けられているのもウェスト・ポウならではの良さだと思います。私が入社した際にびっくりしたのは、新入社員にファイナンス教育をすること。個人の家計管理についてのレッスンがあるのです。家計をうまくやりくりするためには、数字的なセンスや適切な予算管理力が必要ですよね。こうした力はビジネスファイナンスにも応用することができるとのことでスタートしたものなのですが、とてもユニークですよね。

それから、社員たちがボランティア活動に参加できる機会を設けています。ボランティアは、コミュニティとのつながりを生みますし、会社に戻ってきてからボランティアでの経験をシェアすることで仲間とのつながりを深める機会にもなるのです。

スペンサーさん:他にも、ランチを食べながら学ぶ「ランチ&ラーン」という取り組みがあります。テーマは日ごとに異なり、ある日は「個人の目標をどう設定するか」について話をしましたね。従業員たちがさまざまに自分の経験をシェアしたり、思いついたアイデアを試してみたり……互いに刺激を貰ったり与えたりできるような素敵な機会になっています。

良い刺激を与え合う仲間

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ビジネスに関する方針も、経営層が独自に決めたものに従ってもらうのではなく「皆で話して、皆で進む方向を決める」というようなスタイルですね。

2012年に、工場の生産ラインに問題が起きた際も、従業員たちの意見やアイデアをたくさん貰って解決することができたんですね。そのときから、ウェスト・ポウでは従業員に対して「2週間ごとに経営情報をシェアする」「6か月ごとにビジネスプランを提示する」ということを続けており、皆から意見を募るようにしています。

ウェスト・ポウでは、部門を問わずいつもいろんなところからアイデアが生まれていて。それが会社をどんどん良い方向に導いていっていると思います。この前、「お客さんのために販売運営をこう変えたらどうだろう?」と提案してくれたのは、セールス部門でもマーケティング部門でもなく、輸送部門のメンバーでした。部署関係なく、よりよいビジネスにするためにはどうしたらいいだろうと皆が考えており、それを発信できるというのは本当に素晴らしいことだと感じましたね。

ビジネスという長いゲームをプレイしているのは、自分ひとりじゃない。だからこそ、大切な決断は自分一人で下すべきではないと思うのです。大切なのは、事業にとっても、従業員にとっても、お客様にとっても、地球にとってもベストな決断をすること。「どうやって解決しようか?」と皆で考えて、自分だけでは思いつかないような素敵なアイデアが生まれたら、それってとても素晴らしいことですよね。

消費者としてお金を払うことの責任

Q:ペットたちのアニマルウェルフェア(動物福祉)についてどう考えているか?

リタさん:ペットが家族の一員として扱われるようになったり、動物の安全に配慮した製品が作られたりという動きがあるのはとても良いことだと思っています。その一方で、劣悪な環境で子犬を繁殖させるブリーダーがいたり、ティーカッププードルや豆しばなど「人間が好むから」という理由で個体を大きくしないようにコントロールされている犬たちがいたり……動物たちがモノのようにずさんな扱いを受けている状況についてはとても心配しています。

喜ばしいことに私の故郷オランダでは、2019年春、政府が「短頭種(頭蓋骨よりマズル[鼻口部]が短い犬種)の繁殖への取り締まりをより厳重に行っていく」と宣言しました。例えば、フレンチブルドッグ、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルなどの種。鼻がぺちゃっとつぶれているのがトレードマークですが、あれは人間によって品種改良を重ねられたことでうまれた特徴なのです。脳の容積に対して頭蓋が小さいために頭痛が起きていたり、口腔の面積が狭く上手に体温調節ができなかったり、病気にかかりやすくなったり……見た目がかわいらしいからと無理に身体を改変したことによって、そうした犬たちは健康面に問題を抱えやすくなってしまいました。オランダ政府は、こうした状況に対してNOを突き付けたわけですね。

フレンチブルドッグの画像

Image via West Paw Inc.

なぜ犬たちの健康を害してまで品種改良が行われているかって、理由はすごくシンプルで、「消費者が欲しがるから」なんですよね。自分好みの可愛いらしい犬が飼いたいとお金を払う人がるから、ブリーダーたちは自然の姿に手を加える。消費者の欲望のせいで、子犬たちが苦しんでいるのです。日本には、欧米にはない「犬カフェ」や「猫カフェ」といった独自の動物ビジネスが存在していますよね。諸事情でペットが買えない人にとっては魅力的な場所だと思いますが、そういうところにいる動物たちがきちんと扱われているか確認したことがあるでしょうか?

スペンサーさん:お金を払って店を利用するということは、事業を支え、店舗の経営を継続させる支えになるということ。消費者は大きな力を持っているのです。動物にストレスがかかりすぎていないか?自分が「サポートしたい」と思えるようなビジネスモデルなのか?そういったことについても考えながらサービスを利用するのは大切なことだと思いますよ。

Q:読者へのメッセージ

スペンサーさん:サービスであれモノであれ、自分が何にお金を使っているかに気を配ってほしいと思います。あるモノを買ったりサービスにお金を払ったりするのは「私は、これをOKなものだと思っている」と表明する行為。お金を払うというのは、その製品やサービス、企業に大きな一票を投じているのと同じこと、いわば「投票」なのです。

逆に言うと、何にお金をかけるかによって、自分たちの「声」を挙げることができるということです。消費の仕方ひとつで、環境や社会に違いをもたらすことができます。環境にどういう影響を及ぼしているか?従業員の福祉サポートをしっかりしているか?買いものというよりも「ビジネスをサポートする」というつもりで、消費を見直してみてほしいですね。

自分が今、一番お金をかけているものは何でしょうか?そこにかけているお金の一部を、気がかりな問題の小さな解決策に使ってみてはどうでしょう。たとえば、コーヒーショップに行くのが日課になっているなら、紙コップの代わりに、タンブラーに注いでもらえるよう、お気に入りのタンブラーを買ってみる、とか。小さなことが積み重なって大きな違いを生むはずです。

リタさん:猫であれ犬であれ他の動物であれ、動物はみな、それぞれ異なる性格をもっています。人形でもおもちゃでもなく、心を持った生き物なのです。それを忘れず、動物たちにもリスペクトをもって接してあげてください。ペットたちと、楽しい満ち足りた関係を築くために、自分には何ができるでしょうか?一緒に散歩することかもしれないし、ペットが好きそうなおもちゃを探してあげることかもしれないし――できることは人によって違うけれど、動物たちのことを考えて共にすごすすべての時間はとても素晴らしく、喜びに満ち溢れています。世界にはもっと喜びが必要でしょう?あなたのそばにいる、かけがえのない「喜び」を大切にしてあげてください。

ウェスト・ポウのスペンサーさんとリタさん

We Are Dog’s Best Friend|「古来から犬は『人間にとってのベストフレンド』だったと言われるけれど、私たちこそ『犬にとってのベストフレンド』でいられるように努めていたいですよね。」

編集後記

「ペットショップにウェスト・ポウの商品が陳列されていたので、今日も写真を撮ってきたんです。工場のスタッフたちに見せたくて!自分が作ったものが外国の店先に並んでいるなんて、きっと彼らは誇りに思うでしょう!」

そう言って笑うリタさん。2人は仕事で海外を訪ねると、ペットショップや食べ物、道や看板など、あらゆるものを写真に収め、従業員たちにシェアするのだという。そんな2人にとって動物とは何かと聞いてみると、「パートナーであり、深い思いやり(コンパッション)であり、喜びそのもの」との返事が返ってきた。犬たちは、慌ただしく生きる私たちに「スローダウンすること」を教え、本当に大切なことを思い出させてくれる。「私たちはもうちょっと犬を見習わなくてはいけないのかもしれませんね」とスペンサーさんが言うように、私たち人間が彼らから学ぶべきことはたくさんある。

偏見や固定概念を持たず、どんな人とも分け隔てなく接すること。目の前のものごとをそのまま受け取るまっすぐさ。自分の感情に従い、嬉しいときは全力で喜びを表し、嫌な時は嫌だと態度で示す素直さや正直さ。物事を疑いの目で見すぎないこと。精一杯遊び、時には休み、愛する人たちとゆったり時間を過ごすこと――

リタさんは「犬は、私たち自身をうつす鏡のようなもの」だと語る。ペットに接し彼らに気を配るとき、私たちはまた、自分自身についても考え、何かを学んでいるのだ。同じ言葉を持たずとも、動物たちは澄んだ瞳で私たちに語りかけ、大切なことを思い出させてくれる。愛犬や、街中で出逢った犬たちがどのように振る舞っているか、ゆったり眺めてみるのもいい。あるいは、ペットショップに通りかかったとき「かわいいね」と目を細めるだけでなく、彼らの置かれた環境に少しだけ想いを馳せてみるのもいいだろう。私たちに気づきと喜びを与えてくれる愛すべき存在――彼らのために、何かできることはないか。ほんの少しだけ、考えてみてはどうだろう。

ウェスト・ポウのスペンサーさんとリタさん

2人が犬を見つめるまなざしは、愛そのもの。|取材会場となった、ウェスト・ポウ等海外製ペット用品の輸入販売を行う会社「レンジャース」。取材中も看板犬・レンジャーくんが社内を元気に走り回り、皆をリラックスさせていた。

【参照サイト】West Paw Inc.
【参照サイト】レンジャース
【参照サイト】Dier&Recht”De Bulldog krijgt eindelijk zijn snuit terug”
【参照動画】知育玩具「ゾゴフレックス タップル」
【参照動画】『創業者&CEOスペンサー・ウィリアムズが振り返る~ウェスト・ポウ創業からの20年』
【関連ページ】Bコーポレーションとは・意味
【関連ページ】サステナビリティとは・意味