「見える距離感」で本質的な「エシカル」を目指す。草木染めランジェリーブランドLiv:ra

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「花の命を着る。」をテーマにした、日本発草木染めのランジェリーブランド「Liv:ra(リブラ)」。シルクやオーガニックコットンなどの天然素材を、2000年前から日本に伝わる伝統的な草木染めで丁寧に染め上げたランジェリーは、女性たちに好評だ。

さらに自宅で簡単に、そして楽しく染め直しが出来る染め直しキットも用意されており、愛着がわくような商品設計になっている。今回は、都内で開催されたLiv:raの個展を訪れ、デザイナーの小森優美さんにブランドストーリーを伺った。

Liv:ra代表の小森優美さん

Liv:ra代表の小森優美さん

ファストファッションから、「草木染め」の世界へ

小森さん:ファッションの専門学校を卒業した後、ファストファッションブランドでデザイナーとして働いていました。しかし、自分がデザインした30%もの洋服が廃棄を見込んで作られていることや、大量生産・大量廃棄によって環境問題や労働問題など様々な社会課題を生んでいることへの違和感が増していきました。

また、2011年に起こった東日本大震災からも大きな影響を受け、もっと人や環境に優しい服作りをしていきたいという気持ちに。特に、個人的に最も気になったのが大量生産による水質汚染の問題です。ファッション産業が全体のおよそ20%もの汚染を生んでいることを知り、環境負荷を出さないような服を作りたいと思いました。

そういった中で出会ったのが、京都に拠点を持つ「京都 川端商店」さんでした。そこで「新万葉染め」と呼ばれる、独自の技術で草花を分子のレベルまで微粉砕することで色素を定着させ、草花の色素をしっかりと生地に落とし込む染めの技術を知り、その色彩の鮮やかさにとてもワクワクしました。加えて、草木染めは保温や消臭などの効能が期待出来ます。色彩の美しさだけでなく、自分の体を守ってくれるお守りのようなイメージで肌に触れる「ランジェリー」を草木染めにして自分のブランドを作ろうと決めました。

薬を飲むことを「服用」と言うように、昔の日本では、衣服を着ることは薬を飲むことと同じ意味があったと考えられているそうです。天然の衣服を草花で染めることは、薬効成分を体に染み込ませるためにあり、衣服はただ着飾るためのものではなく、自分を守る大切な「お守り」でした。こうした草木染めの奥深さを、Liv:raを通して次世代に継承していきたいという思いがあります。

Livra

Livra

草木染めのランジェリーを作り始めた頃はとても苦労しました。私が以前働いていたファストファッションのように、広告を使ってその時々流行りのものを瞬発的に回転させていくようなビジネスと、クオリティの高い商品を作り時間をかけて丁寧に育てていくビジネスは、同じファッションでも仕組みそのものが全く違うので、一から学び直さなければいけなかったからです。「量」ではなく「質」にこだわり、1つのものを大切に育てていくことは、一層時間がかかりました。

同時にその中で仕事に成長させられてきた自分がいるな、とも感じています。たとえば手探りでブランドを始めた頃は、お客様からのネガティブなフィードバックを受けた時はただ精神的に落ち込んでいましたが、今ではそういった声を自分がどう捉えるのか、そしてどう建設的な対応、さらなる商品のクオリティの向上に繋げていくか、に集中して考えられるようになりました。ネガティブフィードバックにこそ変化のチャンスがあるので、こういった良い循環はさらに自分自身の内面を成長させてくれますし、結果的にLiv:ra自体の完成度も高めていくスパイラルだと思っています。

「エシカル」と言わないからこその、新たな出会い

Livra商品

Livra商品

小森さん:最近、様々なブランドで「エシカル」という言葉を耳にしますが、前面に出しすぎて「中身」がちゃんと伴っていないと、エシカルなブランドがさらに増えてきた時に継続が難しくなるのではないかと思います。Liv:raでは、「エシカル」を前面に打ち出してはいません。ファッション産業が抱える問題に気づいてもらいたいし、エシカル自体を皆さんに知ってもらいたい、という思いはもちろんありますが、価値観の強要はしないというスタンスをとっています。

逆に、「エシカル」と発信しない方が様々な人が集まってくれるので、間口を広げる役割という意味で、Liv:raを通してエシカルな世界観を多くの人に感じていただきたいですね。私自身は、エシカルといった内容を個人的に、また別会社で発信していますが、Liv:raというブランドに対しては主役はLiv:ra自体であり、私自身の主義・主張は前に出ないようにしています。

拡大せず、カスタマーとの距離感を大切に

Livra商品

Livra商品

小森さん:このブランドを大きくしようとは、全然考えていません。Liv:raに関してはコンパクトに回していけるこの規模感でブランドを続けていくことが、結果的に「エシカル」だと思っています。無理をしてブランドを大きくすることで、生産者や環境、カスタマーを取り巻く仕組み自体が変化してしまい、ブランドを運営する自分自身が自由で楽しくやれる状態がなくなってしまうことは避けたいので、意識的にそうならないよう気をつけています。

大きく所有しようとすると、結果として環境や働く人たちなど、いろんな場を荒らしてしまうこともあると思います。人間って、そんなに大きな範囲を見られないですし、自分やブランドのキャパシティと距離感を把握することが大切ではないでしょうか。

Liv:raで大切にしているのは、お客様や取引先に対してお互いに依存はしすぎない、ある意味「ドライ」ではあるけれど、繋がるところは繋がって楽しくいられる距離感。ブランドを運営するリーダー的存在の人が、生産背景が見える範囲でものづくりをすることで、誰も傷つけず、しっかりコミュニケーションを取れる環境を作ること。

お客様と気軽に話せるような関係性で一緒に商品を楽しんだり時にはフィードバックをいただくこと。それらは関わる全員にとって幸せな循環を生みます。こういったコンパクトで自由な規模感の企業が増えることは本質的にサステナブルな社会に繋がると思っています。

編集後記

以前取材させていただいた草木染めワークショップ(「大量消費に替わるクラフティビズム。草木染めから見直すファッションとの付き合い方」)でも講師をされていた小森さん。2013年に起こったバングラデシュでの縫製工場倒壊事故がきっかけとなり世界規模で「ファッション」のあり方が模索されている中、サステナブルな素材やリサイクルに焦点を当てたブランドも出てきている。

そもそも生産と消費の距離の見直しが問われているように感じる。世界規模に拡大したブランドだからこそできるアプローチもあるが、Liv:raのように小規模だからこそ生み出されるお客さんたちとのコミュニケーションはとても強固なものであろうし、そういった循環こそが「エシカル」の本質の追求に向けて大きなエネルギーとなるに違いない。今、「エシカル」自体の取り組みにはっきりとした「正解」が無い中、自らのときめきにアンテナを張って積極的にブランドに触れていくことが大切なのではないだろうか。

【参考サイト】Liv:ra