NASAの技術で太陽光を輝くネオンに。台湾国際会議センターに設置された光の芸術作品

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太陽の光は波長によって7色に分けられることが知られている。我々が絵画や様々な物体の色を認識できるのも、物体がその色の光を反射しているからだ。商業用ビルや建築において、人々に光を心地よく感じてもらうため、デザイナーや建築家たちは光のデザインに細心の注意を払っている。今回紹介するのは、自然の太陽光をまるでネオンのように変化させる、台北国際会議センターのアート作品だ。

繊細なガラスや光を用いた作品を制作するアメリカのアーティスト、クリス・ウッドが手掛けたこの作品、「Light Wall」は、20世紀にNASAが開発したダイクロイック・ミラーで構成されている。ダイクロイック・ミラーとは、光源装置や照明装置に用いられるもので、光の波長の違いを利用し、異なった色の光を投影可能にするものだ。クリス・ウッドはこのミラーを使い、これまでに様々なアート作品を制作してきた。

Luce Colorata

Luce Colorata, Cambridgeshire, UK 2004 – Image via Chris Wood Light

「Light Wall」には、2500枚ものダイクロイック・ミラーが使用されている。作品は、国際会議センターの最上階のカーテンウォールに設置されている。そこへ太陽光が差し込めば、鮮やかな光が屋内に満ち、ミラーを通してみる風景も様々な色へ変化する。

ミラーの設置場所を決める工程も複雑だ。クリス・ウッドは、作品を設置する土地の文化を大切にしている。彼女の「Light Wall」の作品解説によれば、今回は活気と商売繁盛の意味を持つ台湾の赤いランタンに着目したという。そして台湾と貿易を行っているトップの19ヶ国の言葉へ「赤ランタン」を翻訳。翻訳した単語をコンピュータプロセッサへの命令に用いられるバイナリコード(2進コード)へ変換する。変換されたバイナリコードに沿って、ミラーの設置位置を決定しているとのことだ。

Light Wall in Taipei

Image via Chris Wood Light

Light Wall in Taipei

Image via Chris Wood Light

台北国際会議センターは、台湾のカルチャーのシンボルともいえる場所だ。そうした場の特性を意識し、国同士の関わりも考慮に入れた、その土地ならではのインスタレーション作品だといえるだろう。

クリス・ウッドは様々な国でクライアントから依頼を受け、作品を制作するコミッションワークを行っている。興味を持たれた方は、彼女の公式サイトギャラリーをぜひご覧いただきたい。公式サイトによれば、現在日本で展覧会を企画しているとのことだ。新型コロナウイルスの影響も続くだろうが、日本で彼女の作品が見える日を楽しみにしている。


【参照サイト】Chris Wood Light
【参照サイト】Artist Uses NASA-Developed Light Filter to Turn Sunlight Into Dazzling Neon Displays
【参照サイト】ダイクロイックミラー

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