2020年5月、アメリカ・ミネソタ州のミネアポリスで、白人警察官がアフリカ系住民ジョージ・フロイドさんを不当に暴行死させた映像がインターネット上で出回ったのをきっかけに、かねてより鬱積していた市民の「差別」に対する怒りが爆発した。アメリカ各地で大々的な抗議デモが起こり、今ではその勢いは国境を超え、世界的な運動に発展している。
この運動が、最近ニュースで見かけるであろう “BLM(Black Lives Matter=黒人の命は尊い)” である。現在のアメリカでは、法的に人種差別があってはならないとされているが、職場や学校、普段の生活コミュニティなど、社会のあちこちに今も根強く差別意識が残っているのが実態だ。
そこで注目されているのが、黒人系やその他の少数派(マイノリティ)の仕事探しを支援する転職口コミサービス「Dyversifi(ダイバーシファイ)」だ。サイトに登録すると、黒人やアジア人、ムスリム、女性、LGBTQの他、障がい者や退役軍人など、過小評価されやすいマイノリティの人たちの、実際の経験に基づいた率直な企業レビューが見られるようになる。
ユーザーは、人種や年齢、性別といった基本的な情報の入力の後、「ポートレート」と呼ばれる匿名のプロフィールを作成する。ポートレートでは、3種類のストーリー(アドバイス・体験・評価)を入力することで、似たポートレートの人による企業口コミとマッチする仕組みだ。
たとえば、「この職場は車椅子で働ける環境が整っているか」「沈みやすいメンタルを適切にケアしてくれるか」「自分と似たような属性を持つ人がリーダーシップを持つポジションにいるか」など、転職のときに気になる情報を簡単に見つけられるようになる。
Dyversifiの目標は、働き手が愛着を持てるキャリアを見つけられるように、信頼できる情報を提供すること。企業側にも、今まで気にしたことのなかった新たな視点をもたらすことになりそうだ。
実際にBLM運動では、企業の姿勢や取り組みにも鋭い視線が向けられている。アメリカの黒人差別の歴史は、奴隷制にさかのぼる。南北戦争後の1863年に当時のリンカーン大統領が奴隷解放宣言を行うも、1964年に公民権法が制定されるまで、合法的な人種差別は続いていたのである。
今回のようなマイノリティのための転職口コミサイトで、「こういう視点で職場を見たかった」と助かる人がいる。人種差別に限らず、世の中のさまざまな差別を是正することが期待される取り組みだ。
【追記:2022/11/8】本日確認時点で、サービスが終了しています。