オランダ発、人を土の栄養に変えるコンポスト棺桶

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いま日本では、多くの場合に遺体は火葬され残った骨は墓に納められる。しかし土葬の場合、あなたと棺桶が土に還るまで、どのくらいの時間がかかるかご存じだろうか。実は人の体が堆肥化するには10年以上かかり、ニスが塗られた棺桶の金属部分と合成衣類は、数十年から何百年といったさらに長い時間がかかる。

今回、オランダのデルフト工科大学の学生が設立したスタートアップLoopは、菌を使った生きた棺桶を開発した。堆肥化のプロセスを促進し、2〜3年で人の体を堆肥化させるこの棺桶は、人体からの老廃物を栄養素に変えるだけでなく、周りの土の性質を改善し、新しい生命が繁栄する機会を与える。

(c)TU Delft

菌糸体(菌糸の集合体)はロッテルダムで土壌浄化に使用され、一部の農家ではよい土をつくるために使われている。さらに、チェルノブイリの原子炉で発見された菌は放射線で成長してガンマ線を化学エネルギーに変換することから、国際宇宙ステーション(ISS)で30日間にわたって実験が行われ、その効果が確認された。

Loopの設立者であるボブ・ヘンドリックス氏は、TU Delftのホームページで「生きた棺桶は私たちを再び自然と一体化させ、土壌を汚染する代わりに豊かにする。」と述べている。アメリカに本拠を置くバイオマテリアル企業Ecovative Design LLC社が試験を行ったところ、この生きた棺桶は30〜45日で堆肥化されることがわかった。

Loopは、オランダの葬儀協同組合であるCUVOとDe Laatste Eerとともに、生きた棺桶を実用化するためのさまざまなテストを行い、2020年9月上旬に、10棺が実際の葬式で使用された。今後Loopは、オランダのナチュラリス生物多様性センター(Naturalis)と共同で、他の生物を用いて、同様の形式の埋葬ができるか、さらなる研究を行う予定だ。

(c)TU Delft

生きた棺桶は現在、オランダ南部に位置するケルクラーデ市のキューブデザイン博物館で開催中の(Re)Design Death展で展示されており、訪問者は生きた棺桶に“餌”をあげることで、森の成長に貢献できる。当展覧会のテーマは、別れを告げる、死、喪、追悼だ。

私たちがこの世を去るとき、出来るだけ早く土に還り、周りの自然に良い影響を及ぼすことができる、生きた棺桶。「Cradle to Cradle(ゆりかごからゆりかごへ)」を真に実践し、持続可能な世界に貢献する斬新なアイデアだ。

【参照サイト】TU Delft start-up develops ‘living coffin’
【参照サイト】ゴミが分解されるまでにどれだけかかる?
【参照サイト】A Self-Replicating Radiation-Shield for Human Deep-Space Exploration: Radiotrophic Fungi can Attenuate Ionizing Radiation aboard the International Space Station
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(※画像:TU Delftより引用)

Edited by Tomoko Ito

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