「サーキュラーエコノミーplus」の概念を軸に、地域をあげてサーキュラーエコノミーの推進に取り組む神奈川県横浜市。Circular Yokohama編集部による、横浜市政策局共創推進課の関口昌幸氏と、IDEAS FOR GOOD編集長の加藤佑との対談前編では、横浜市を東西南北4つのエリアにわけてそれぞれの地域が持つ特性や課題について議論、またサーキュラーエコノミー発祥の地であるオランダ、アムステルダムと横浜の意外な共通点についても言及した。
その後編となる本記事では、「サーキュラーエコノミーplus」の掲げる4つの領域、ローカル・フォー・ローカル、サステナブルデベロップメント、パラレルキャリア、ヘルスプロモーション、それぞれの概念をより深く、具体的に掘り下げていく。
横浜のビジョン「サーキュラーエコノミーplus」が持つ意味
関口氏:サーキュラーエコノミーplusの4つの領域の中軸に「公民連携とオープンイノベーション」がありますが、これがここまでに話した社会関係資本がサーキュラーエコノミーには欠かせないという点や、社会関係資本を可視化するためには新しい技術やデータ分析、そのデータに基づいた具体的な取り組みが必要であるということを示しています。これからの社会関係資本は、一昔前の共同体によってくるめとられた義理や人情ではなく、世代に関わらず誰もがデータに基づいてオープンに議論し、納得できる形で育んでいく信頼です。これがオープンイノベーションの基本的な考え方であり、そのためには多様な主体と連携していく必要があるのです。多様性はサーキュラーエコノミーには欠かせませんし、横浜も非常な多様な人々がいる地域です。だからこそ、オープンイノベーションとして多様な方々と連携し、新しいテクノロジーも活用しながら新しい形の社会関係資本を作っていく、そして地域の循環を実現するというのがこの中軸です。
生産と消費の距離を近づけ、地域を潤す「ローカル・フォー・ローカル」
加藤:できるかぎり地域の中で資源を循環させる「ローカル・フォー・ローカル」という考え方は、サーキュラーエコノミーにおいて基本的なコンセプトです。「地産地消」とも言われるように、生産と消費の距離をできる限り短くし、地域の中での循環を作るということです。横浜を含む都市の暮らしでは、食料もエネルギーも他の地域に依存しているという課題があります。コロナによって、そうしたグローバルなサプライチェーンに依存している生活がいかに脆弱なものであるかを皆が改めて認識しました。そして、現在は食料もエネルギーもできる限り地域のなかで作っていこうという考えに移行している最中だと思います。
なぜ地域の循環が大切なのかというと、生産者と消費者の距離を近づけることで環境の負荷が減るというのはもちろんですが、それが地域の経済にも恩恵をもたらすからです。例えば、海外で作られた農産物を買うよりも、自分の地域で作られた農作物を買った方が、地域にお金が落ちますよね。消費者としてこれだけ大きな購買力を持っている横浜市民は、果たして誰にお金を払っているのでしょうか。海外の農家、中東の石油。それでは地域は潤いません。消費の流れをグローバルではなく地域のなかに変えていけば、地域の経済が潤うのです。ローカル・フォー・ローカルは、環境負荷を下げ、地域の経済も潤すための最もシンプルかつ有効な戦略だと考えています。
ただし、例えばエネルギーなどは発電できるスペースが限られますし、ゼロカーボンを目指している横浜でも、これだけの消費人口がいれば、市内だけで全ての再生可能エネルギーを賄うことはできません。そこで、例えば「横横プロジェクト」(青森県横浜町で作られた再エネを購入する横浜市・横浜町の地域連携プロジェクト)のように、再エネをつくる土地はあるけれどもそれを消費するだけの世帯がない地方と、その逆に消費者はたくさんいるけど発電できるスペースがない横浜がお互いの強みを活かして連携することで、エネルギーの地域循環共生を実現するというモデルをつくることも理想的な形の一つです。
関口氏:食とエネルギーの問題はとても大切ですね。実は、横浜は都市農業が盛んで、特に郊外部にはまだまだ農地が残っています。消費者との距離も近いので、美味しくて質の良いものを作ればより高いお金で買ってもらうことができるという利点がある一方、そうは言っても農家も高齢化が進んでいて後継者難やそれに伴う休耕地の増加が問題になっています。休耕地を減らすための解決策の一つとしてあがっているのが、横浜でのオリーブ栽培です。オリーブはそのほとんどを輸入に頼っているのが現状ですが、横浜の土壌を分析してオリーブを育てている社団法人があり、有機肥料の掛け合わせによっては手間をかけずにオリーブを栽培できることが分かってきました。そして、多様な可能性を秘めたオリーブを使った加工品や精製品を商品開発する計画を農家やレストラン経営者、社会起業家などと進めています。休耕地問題へ貢献すると同時に、郊外部と都心臨海部をオリーブでつなぐことをやっていきたいのです。
さらに、これからオリーブを育てるための肥料の研究開発も行うのですが、金沢区の海の公園に打ち上げられてこれまでは焼却処分されていた海藻を使うアイデアがあります。現状では海藻はCO2を吸収してくれるということが分かっているにも関わらず、それを焼却処分することで再びCO2を発生させてしまうという矛盾が起こっています。そこで、横浜オリーブの肥料としてその海藻を活用し、これまで廃棄されていたものを地産地消のエンジンにして循環型農業、循環型経済を加速させるという面白い取り組みが始まっています。
加藤:SDGs横浜金澤リビングラボが取り組んでいる、間引きしたアマモを活用した循環型農業の取り組みは本当に素晴らしいですよね。横浜は農業エリアと消費エリアの双方を持ち合わせているため、食の地産地消ができるというのが都市としての大きな強みですね。
関口氏:エネルギーの地産地消もとても大切ですよね。今は太陽光発電も普及していますが、これもきちんと蓄電池を整備して広げていくと、いざというときの防災拠点にもなります。再生可能エネルギーを蓄電池とセットで用意しておけば、停電などの場合にその電気を使うことでそこを拠点となって非常事態を凌ぐことができます。ですから、防災という観点からも再生可能エネルギーを地域で循環させていくことが有効です。
例えば、今はまだ一部の住宅地に取り入れられているだけですが、これから市内のあらゆる施設に太陽光発電と蓄電設備を広げていけば、太陽光発電も安価になってきていますので、将来的にはまち全体を発電所にしていくことも可能だと思います。さらに現在、リビングラボサポートオフィスの再エネ部会では、災害時に「おたがいハマ」の精神で、スマホ等の充電にクリーンエネルギーをお裾分けする給電スポットを向こう三軒両隣につくろうという運動も始まっています。
このように一定以上のクリーンなエネルギーを自分たちで生み出すことができれば、地球にも優しいし都市の自律性も高まり、コミュニティでの新しいつながりも生まれます。とは言え、やはり今の段階ではまだまだそこには程遠いので、先ほど話に上がったように青森や秋田といった地方と交流しながら取り組む必要があります。そして、それがエネルギーのやりとりだけではなく、環境省が描く「地域循環共生圏」のように、ひいては文化や産業全体の交流に発展していく可能性もあります。
加藤:そうですね。食やエネルギーを通じて、それをきっかけに地域の関係人口や社会関係資本を構築していくのが、次の循環を作りあげるのだと思います。また、横浜という都市にインプットされている資源の中でも特に重要となる食とエネルギーをどれだけ自給できるかという点は、コロナ禍のように非常時が日常化している状況において求められる地域のレジリエンスに直結すると思います。
持続可能なまちをつくる「サステナブル・デベロップメント」
関口氏:持続可能な都市開発において、横浜の空き家や休耕地問題など使われていないスペースをどのように有効活用しながら社会関係資本を築いていく拠点にできるか、サーキュラーエコノミーを物理的に回していくことができるかという点が、サステナブル・デベロップメントの基本となる考え方です。
加藤:エネルギーの話にもつながりますが、例えば横浜のSDGs推進企業として有名な太陽住建さんが展開している「solar crew」の事業のように、空き家にオフグリッドの太陽光発電と蓄電池を設置して、平時は社会関係資本を作るためのコミュニティスペースとして使い、災害時や非常時は電源用や避難所として使えるようにするという事例がすでに生まれています。
このように、「ローカル・フォー・ローカル」と「サステナブル・デベロップメント」を重ね合わせ、連携させていくのも大切だと思います。SDGsは2030年までの目標として非常に大事にされていますが、たくさんの目標が掲げられているなかで具体的に何をやるのか?というときに、その手段として有効なのがサーキュラーエコノミーです。サーキュラーエコノミーには環境の話はもちろん、どのようにコミュニティに雇用を生み出し、包摂的に富を分配していくかという社会の側面も含まれます。また、「エコノミー」という名の通り、地域の経済を潤すことも前提にあります。
サーキュラーエコノミーをSDGs達成のための手段と捉えると、多くの目標に同時にアプローチすることができます。さらに、横浜以外の都市でもグローバルな共通言語として使用できるSDGsというキーワードをサーキュラーエコノミーplusのビジョンに含めることで、SDGsの目標17にあるように他都市とのパートナーシップも実現しやすいというメリットもあります。
関口氏:サーキュラーエコノミーは、これまで無駄だと思われていた資源や空間を有効利用していくということだと思うので、空き家や休耕地を活用しながら地産地消を実現していくことはローカル・フォー・ローカルとセットになった持続可能なまちづくりの概念ですね。
循環に欠かせないパートナーシップを媒介する「パラレルキャリア」
関口氏:サーキュラーエコノミーplusの3つ目の概念「パラレルキャリア」も、人口減少や高齢化社会が進み、これから一人の人間が柔軟にいくつもの役割を担いながら暮らしていく必要が高まっている横浜においてはとても重要なポイントです。兼業や副業はもちろん、女性や病気や障害に直面している人、そして外国につながる市民も、それぞれの個性や能力、状態・状況に応じていきいきと学び、働き続けられる環境を整えることが大切だと考えています。この点はサーキュラーエコノミーと絡めると、ヨーロッパの動きはいかがですか?
加藤:サーキュラーエコノミーとパラレルキャリアの話をセットで語るというのはあまり聞いたことがありません。だからこそ、「plus」という「人」の視点を大事にし、横浜ならではのサーキュラーエコノミービジョンをつくるうえでパラレルキャリアの観点を含めているのはとても価値があることだと思います。なぜなら、実はこの2つはすごく関連があると考えているからです。
例えば、循環型経済のシステムを考える上で最も参考になるのは「自然界」です。自然界はゼロウェイストで、誰かが出した排泄物は誰かの栄養になり、あらゆるものが循環することで完全に廃棄物がないシステムが実現できています。それではなぜ自然界でこのようなシステムが実現できるかというと、そのポイントはやはり多様性です。多様性があるからこそ、誰かにとってのゴミが誰かにとっての資源となるのです。
ただ、循環を実現させるうえで大事になるもう一つのポイントは、それらの多様な個がお互いにつながっているという点です。ただ多様な人がいるだけでは意味がなく、お互いの凸凹を埋め合うようにつながりあうことで初めて循環ができるのです。よくサーキュラーエコノミーではパートナーシップが欠かせないと言われますが、これも同じ理由です。違う業界同士や企業、消費者などがお互いに協働することで、ようやく循環のループを閉じることができるのです。
それでは、こうしたつなぎ役やパートナーシップの媒介役となるのは誰かというと、それがパラレルキャリア人材です。異なる業界や組織、領域を横断し、越境できるパラレルキャリア人材は、サーキュラーエコノミーを加速させるマッチングを生み出すハブとなれる人材なのです。つまり、越境型のパラレルキャリア人材が地域に増えれば増えるほど、より多様な人が交わる機会が増え、優れたパートナーシップが生まれる可能性が高まるのです。
また、マクロとミクロというのは常に相似しますので、システム全体が多様性を求める経済の中では、そこを生きる個人の中にも必然的に多様性が求められます。イントラダイバーシティ(内部の多様性)とも言われますが、キャリアの視点でも自分の中に多様性を創り出していくことが有効な戦略となるのです。例えば、平日は会社でITエンジニアとして働き、休日はシェア畑で農業をするといった人が増えれば増えるほど、一人一人のキャリアのレジリエンスが高まるだけではなく、地域内の多様性が高まり、循環の仕組みを作りやすくなります。また、多様な関係性が育まれることで、地域の社会関係資本もより豊かになっていきます。
一見関係ないように思われるかもしれませんが、働き方をパラレルに、多様にしていくということは、マクロではなくミクロからサーキュラーエコノミーの実現に貢献していく上で有効なアプローチなのです。そして、パラレルキャリアを当たり前にすることで、横浜の中により生産者を増やしていくことができます。平日は東京で働いていたとしても、休日は横浜の郊外で農業をやるといった人が増えれば、食の地産地消は加速されていきます。パラレルキャリアは、ローカル・フォー・ローカルの推進にもつながるのです。
関口氏:サーキュラーエコノミーは、多様であることによって成立するということですから、一人ひとりの学び方や働き方、暮らし方を多様にしていくということはまさにサーキュラーエコノミーの基盤となるものですね。人も資本も一部ですから、人そのものの暮らしが多様化するということが、実は社会全体のサステナビリティにも寄与するという点が理論的に説明できます。実際に、横浜の場合は学校や企業という枠組みのとらわれず、リビングラボなどを通じて地域に多様な困難に直面する市民が安心して交流できる居場所をつくりながら、学びや就労の機会や場を保障して行こうという公民連携の取組が様々な形で生まれています。
「人」を意味するサーキュラーエコノミーの「plus」は、単におまけとして付け加えているのではなく、サーキュラーエコノミーの本質につながる概念なのだということが今日の対談でクリアになったと思います。
地域のウェルビーイングを実現する「ヘルスプロモーション」
関口氏:最後のヘルスプロモーションの概念もとても大切です。高齢化の中で生涯現役社会の実現が求められており、国内の寿命もこの何十年で大きく伸びています。70代・80代でも元気な方々が多いですから、医療や福祉のあり方も大きく変わっていく必要があります。
一つは、生活サービス産業としての医療福祉をどう回していくかです。ヘルスプロモーションは、市民一人ひとりの幸せのためだけではなく、産業経済の問題とも結びついているのです。例えば、病気を見つけてから対処するのではなく予防的な観点からスポーツやヘルスケアと一体的に医療福祉を提供していく必要があります。総合的なヘルスプロモーションを行うことで、健康、医療、福祉をシームレスに結びつけて循環型かつ持続可能なサービス産業を実現することができます。現代の高齢化社会を乗り越えていくためのポイントになるということで、ヘルスプロモーションも概念をサーキュラーエコノミーplusに含めています。
加藤:正直、サーキュラーエコノミーplusの概念を聞いたとき、私の中で最後までその意味を定義しきれていなかったのがヘルスプロモーションでした。
関口氏:ヘルスプロモーションは不可欠な領域ですが、今までなかなか文脈として語られることはありませんでしたからね。
加藤:そうですよね。しかし、コロナショックが起こってからグリーンリカバリーやBuild Back Betterなど様々な復興策が語られ、その具体的な手段としてグローバルにおいてサーキュラーエコノミーやドーナッツ経済の考え方が注目を集める中で、このヘルスプロモーションこそが、実はサーキュラーエコノミーの大きな目的でもあり、横浜がサーキュラーエコノミーを実現するための手段でもあると気づきました。
今、世界では「ウェルビーイング(幸福)」という言葉が改めてとても注目されており、例えばスコットランドやニュージーランドでは「ウェルビーイング・エコノミー」という概念を政策に取り入れています。コロナをきっかけに、多くの人々が足元の生活を見つめ直し、何のために生きるのか、働くのかという点を考え直しました。そこで、結局一番大事なことは家族や地域といった「すでにそこにあるもの」を大事にしながら幸せに暮らしていくことだという結論に達した人も多いのではないでしょうか。これこそがまさに「ウェルビーイング」なのだと思います。
ウェルビーイングは、「何のために」サーキュラーエコノミーを進めるのか、その究極的な答えなのではないかと思います。ヘルスプロモーションとは、つまりウェルビーイングを実現することと同義だと思うのですが、誰もが健康で幸せに生きられる仕組みをつくる。それがサーキュラーエコノミーの目指すべき姿だと思うのです。
ウェルビーイングという概念の優れたところは、環境、社会、経済を包括的に考える必要があるということです。例えば、個人のウェルビーイングを実現するためには、綺麗な空気、おいしい水、豊かな自然など、健康に暮らすための環境が欠かせません。ただ、人間は豊かな自然さえあれば幸せになれるかというと、そうではない。人とのつながりや、コミュニティへの帰属感といった社会とのつながりも幸福には欠かせない要素です。社会的な存在として認められ、その中で社会全体に貢献できる役割を持っていることが重要なのです。そして、そうした環境や社会へのアクセスを持つためには、経済的な土台も欠かせません。つまり、ウェルビーイングについて考えるということは、環境、社会、経済について全てをホリスティックに考えるということでもあります。これは、サーキュラーエコノミーやドーナッツ経済のアプローチそのものです。ヘルスプロモーションを通じて、一人一人が身体的にも精神的にも健康な状態になっている。それを追求すればするほど、経済自体もより健康になっていくのです。
また、少子高齢化や産業構造の変化が進み、地域のなかに生産の担い手が減っていく横浜でローカル・フォー・ローカルを実現するためには、これまで消費者として暮らしていた人がサービスや財の作り手へと変わっていく必要があります。その担い手として期待されるのが、まだまだ元気に働くことができ、熟練した技術も持っている高齢者です。ヘルスプロモーションを通じて高齢者が持続的にいきいきと働ける環境をつくることで、ローカル・フォー・ローカルはさらに加速します。サラリーマンを引退した人が、健康のために地産地消型の農業をやってみる。工場勤務で培った技術を生かして、まちにリペアカフェを開いてみる。こうした人が増えていけば、自然とサーキュラーエコノミーが実現していきます。
関口氏:その通りですね。病気になってから直すとか、介護をせざるを得なくなってから対処する、といった対処療法では、いつまでもいきいきと働き続けられるような産業の担い手としての高齢者は実現しないと思うのです。
それでは医療福祉に社会的コストが多くかかってしまいますので、治療ではなく予防に投資することで、その人たちが担い手として活躍し続けられるようにしなくてはなりません。日本人にとっては、働き続けることが自分にとっての喜びであり生きがいであり、逆に言えばいきいきと働ける環境を作ればよいのです。その基本的な資本となるのが健康です。対症療法ではなく予防的な観点から生活環境そのものを見直し、データや最新のテクノロジーなども活用しながらみんなが健康になれる仕組みを作っていく。これは、新しい形での地域の包括的ケアを目指している戸塚や竹山のリビングラボにとっても大きなテーマになっています。
加藤:歳を重ねた人々が、介護や福祉といったサービスの受け手、サポートされる存在ではなく、むしろ商品やサービスを生み出し、提供する側になる。これが実現すれば、ローカル・フォー・ローカルも実現できるし、サステナブル・デベロップメントの担い手にもなれます。その意味で、ヘルスプロモーションは急速に高齢化が進んでいる横浜でサーキュラーエコノミーを実現するうえで欠かせない要素です。
多様な人が集うリビングラボは、サーキュラーエコノミーの実験場
加藤:これら4つの領域を関連させながら包括的に捉え直していくと、サーキュラーエコノミーをPlanet(環境)やProfit(経済)だけではなくPeople(人々)の視点からも考えていくことの重要性がとてもよく分かりますね。地域の経済の主役は、その地域で暮らす一人一人の多様な個人です。多様な人々が集まり、公民連携によってオープンイノベーションを起こしていく。そのための実験場がリビングラボであり、リビングラボはサーキュラーエコノミーを推進する拠点となっていきます。こうした多様な人が集い、地域の課題解決に取り組んでいるリビングラボがすでに各地にあるというのも横浜ならではの強みですね。
関口氏:その通りです。今後は、このように議論や対話によって意味や意義が紐解かれていきます。そして、今横浜市内各地にあるリビングラボではサーキュラーエコノミーplusの概念に当てはまる活動が次々と起こってきています。これらの活動を丁寧に拾い上げ、全体をプロモーションしていくためにも、この4つの概念を広めていきたいですね。そのために、11月上旬にスタートする「ワールドリビングラボ」を皮切りに、公民連携でセミナーやスクールなども展開していきたいです。
加藤:そうした学びの場があると、地域の中に新たなつながりや社会関係資本が構築されていきます。サーキュラーシティは、「まちづくり」=「ひとづくり」であり、その担い手をどのように作るかが一番の課題です。だからこそ、実際に地域の課題に直面しているリビングラボとも連携しながら、サーキュラーエコノミーを頭と足の両方を使って学べるプログラムがあれば、すごく価値があるものになりそうですね。ぜひ皆さんと一緒に取り組みたいです。
関口氏:今日は加藤さんとお話できたことで、横浜という都市の特徴がサーキュラーエコノミーplusとすごく結びついていることが分かり、大きな学びがありました。ぜひ一緒にやっていきましょう。本日は本当にありがとうございました。
加藤:こちらこそ本当にありがとうございました。
編集後記
Circular Yokohama編集部として横浜のサーキュラーエコノミー推進に関わるまで横浜に20年以上暮らしてきたにも関わらず、この地が日本国内どころかアジアの経済循環をリードするほどの資源と資産、そしてその可能性を秘めているとは考えてもみなかった。
しかし、横浜という地域を知り、横浜で人と出会い、そしてサーキュラーエコノミーを学べば学ぶほど、サーキュラーエコノミーは私たち市民一人ひとりの行動によって実現されるものであることがわかってきた。「エコノミー」という言葉を聞いて、難しい経済や金融の話なのだろうと敬遠する人がいるかもしれない。しかし、私たちが日常生活の中で食事をしたり、服を買ったり、電車に乗ったりする、その全てこそが経済活動であることを思い出してほしい。そのような私たちの経済行動一つ一つが積もり積もって、世界全体の経済を形成しているのだから。
地域の未来、ひいては地球の未来を守るであろうサーキュラーエコノミー実現のため、まずは今日利用するかもしれないスーパーマーケットで自分が暮らす地域の商品を購入してみたり、明日捨てるかもしれないその洋服や家具を売りに出してみたりしてはどうだろう。きっともっと地域に愛着が湧いて、その思いと行動の連鎖が私たちの暮らす地球の未来を大きく変えることになるかもしれない。いま、私たち一人ひとりがその可能性を手にしている。
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【参照サイト】一般社団法人YOKOHAMAリビングラボサポートオフィス