新型コロナウイルス感染症が世界的に大流行したことで、各地でロックダウン(都市封鎖)や外出自粛の要請がされた2020年。今は海外旅行に行きたくても行けないと、もどかしさを感じている人もいるだろう。しかし平時から、移動にそれ以上の不自由を感じている人たちがいる。
厚生労働省の発表によると、日本国内にいる障がいを持つ人の数はおよそ936万6千人、そのうち身体障がい者は436万人だという(※1)。先天的な障がいに加えて、病気や、事故などによる怪我で体が不自由になる場合もあり、誰にとっても決して他人事ではない。
そこで新たに登場したのが、旅行予約サイト「Wheel the world」だ。同サイトでは体が不自由な人でもアクセスしやすいホテルや、観光ツアーの予約ができる。身体に障がいのある人にとっては、ちょっとした段差でも大きな障壁となりうるが、ここで予約できるホテルは、たとえば廊下やエレベーターに車椅子が入れるような十分な広さがあったり、段差がないように設計されていたりと、すべてバリアフリーな場所が選ばれているので安心だ。
ホテルは、太平洋に浮かぶチリ領イースター島のTaha Tai Hotelや、ハワイ諸島マウイ島のKohea Kai Hotel、フランス・パリのHotel Le Cardinalなど、2020年12月時点で世界40か所が掲載されている。旅行パッケージには、ビーチ・プール・海で使用できる水陸両用の車椅子や、さまざまな身体障がいのある人向けのアダプティブ・カヤックも用意されている。また、「車椅子に乗る人の目線で、行きやすい観光地」等を紹介するコラム記事もあるなど、コンテンツが充実している。
手足が自由に動かない、下半身麻痺といった、体の不自由な人たちが旅行するのには、不安や苦労が絶えない。世界中に宿泊施設は数多とあるが、必ずしも障がい者のアクセシビリティが事細かく説明されているわけではない。また、障がい者向けであっても、選択肢が限られていたり、高額だったりする場合もある。
「Wheel the world」に触発されて、他の多くの宿泊施設もバリアフリーの設計を採用したり、障がい者向けの案内を充実させたりすれば、さらに多様な人の行動範囲を広げることができる。現在は、まだ移動による健康リスクの懸念があるが、このパンデミックが収束したら活用される機会も増えてくるだろう。
【参照サイト】Wheel the world
Edited by Kimika Tonuma