北欧スウェーデン発祥のイケア(IKEA)は、シンプルなデザインの家具で知られており、世界的に数々の拠点を持つ一大ブランドだ。イケアは長らく、再利用可能な買い物バッグを安価で販売していることも知られているが、そのバッグにまつわるある珍事が話題になっている。
このほどイケア・シンガポールが販売したKLAMBYと呼ばれるバッグは、本来「www.ikea.com.sg」と書くべきところを「www.ikea.co.sg」と「m」が抜けてミスプリントされていた。これが明らかになったのは、一人のユーザーがFacebookに投稿し、指摘したことがきっかけだ。お店の看板とも言えるウェブアドレスを間違い、その間違いが世間に知れ渡ってしまったのだ。
通常であれば商品名や企業名などをミスプリントしたものはリコールされて廃棄される。しかし今回、イケアはあえてそれを回収・廃棄せずに「今しかない限定品」として売り続けた。「間違えても大丈夫。何度でも再利用できる完全な状態のバッグを、スペルミスが理由で無駄にすることはしない」という資源を大切にする企業の姿勢が伺えてユニークである。
シンガポールは都市国家で、国土が非常に限られており資源に乏しいが、斬新な取り組みを次々と打ち出して、世界のイノベーションをリードしている。ごみ処理施設にも限界があり、徹底したごみ削減政策が行われており、世界一ごみの少ない国と言われている。イケアが今回の決定を下した経緯には、シンガポールという現地の事情も影響しているかもしれない。
また、イケアの「失敗を寛容する精神」や「不完全であることを面白がる文化」も背景にはある。これは有形無形を問わず、ものづくりをしたり、何かを生み出したりする際にとても重要だ。間違ってしまったことが、軽いジョークとしてニュースになり、イケアの“資源を無駄にしない”サステナブルな取り組みがユニークな形で世間に伝わっているのだから、逆にマーケティング効果があったとも言える。
ちょっとしたアクシデントで生まれた、このレアな限定版エコバッグは、シンガポール在住の人ならイケアシンガポールのウェブサイトで購入可能だ。これは単なる笑い話ではなく、その背景には質実剛健で先進的な企業の思想が見え隠れしている。
【参照サイト】IKEA – KLAMBY bag
Edited by Kimika