エコな食品容器を広告媒体にしたマレーシアの注目スタートアップ。成長の鍵は、自分が変わり続けること

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自然環境と人間の健康にとって悪影響を及ぼし得るプラスチック容器。しかし安価で手に入れやすいことから、なかなか代替品へと踏み切れない飲食店や消費者は多いだろう。そんな人にとって朗報だ。

紙でできた食品容器を広告媒体として活用することで、飲食店向けに容器を安く提供しているスタートアップがマレーシアにある。それが「Foodabox」だ。

今回、マレーシアの首都クアラルンプール郊外にある同社を訪ね、ビジネスの仕組みから今後のビジネスモデルの転換、クリエイティビティに必要なことまで、共同創業者の一人であるディックに話を聞いてきた。

Foodaboxの創業者

Foodabox創業者

エコな容器を飲食店にも消費者にも届けやすくビジネスモデル

世界中でこれだけ脱プラスチックの流れが進んでいる一方、紙の食品容器はなぜ普及していないのだろうか。理由の一つは、コストがかかることだ。例えばマレーシアでは、プラスチックのランチボックス一個が0.12RM(日本円で約3円)なのに対し、紙のボックスはその3倍以上の0.4RM(日本円で約10円)かかる。

Foodaboxはこのギャップを埋めるため、広告主に容器の紙面を広告媒体として使ってもらう代わりに、飲食店に安く容器を提供するビジネスモデルを考えた。食品容器市場は競争が激しくコスト面で妥協することはできないなか、飲食店、広告主、消費者の三者にとって「おいしい」仕組みである。実際、飲食店も消費者も、食品パッケージに広告が載っていても気にすることはないという。

Foodaboxの製品

Image via Foodabox

多くの競合他社があるなかで、Foodaboxは食品容器の原料となる紙にこだわりを持っている。紙は、「FSC(Forest Stewardship Council:森林管理協議会)認証」マークを取得しているフィンランドの会社から調達している。さらに、オーガニックで生物分解可能なコーティング素材を用い、大豆由来のインクを使用しているため、そのままリサイクルが可能だ。もちろん、温かくても冷たくても、食べ物が漏れることはない。

Foodaboxの食品

Image via Foodabox

また、パッケージのサイズや色などをカスタマイズできることもFoodaboxの強みだ。通常、食品容器を特注する場合、最低5万個ほどの商品を発注しないければならない。しかし、多くのスタートアップにとって、それだけのストックを持つことはお金がかかるしリスクでもある。その点Foodaboxは、5千個から注文を受け付け、クライアントのニーズに合うように柔軟性を持ってカスタマイズをしている。

Foodaboxのカスタマイズできるパッケージ

Image via Foodabox

このように企業ごとの要望を聞くことはコストも手間もかかる。しかし、ディックは次のように説明した。

「自分たちがやっていることは、ただ商品を売っているのではなく、問題を解決することです」。

ビジネスの根本が、for profit(利益のため)ではなく、for purpose(目的のため)であることを、自分たちの提供するサービスから体現している企業である。

広告業から製造業へ。環境にあわせ自分たちも変化する

この画期的なアイデアを思いつき実行に移したのは、同じ大学に通う学生たちであった。

「社会的なプロジェクトをビジネスで解決するのはおもしろそう」という純粋なパッションを持っていた彼らは、大学生活最後の年である2014年にキャンパス内のカフェでこのビジネスモデルを施行した。2017年にはランチボックス以外のカップやカトラリーなど商品カテゴリーを増やし、2019年にはこれまでの広告業から製造業へと大きく舵を切ることを予定している。

木でできたカトラリー

Image via Foodabox

この転換の背景には、これまで培ってきた経験がある。

「事業転換には2つの理由があります。まず、これまでの広告業主体のビジネスモデルは新しいコンセプトであるため、広告主を見つけ説得することは簡単ではありませんでした。広告の選択肢が多様化し、広告主が必ずしも自分たちの広告媒体を選ぶわけでもありません。

また、自分たちで製造できないと、商品の納期や質、コストなどをコントロールすることが難しいと感じていました。中国などからの輸入もあり、食品容器業界は競争が激しいからこそ、より効率よく安定して持続的にビジネスができるように、自分たちで製造することにしました」。

将来的には、これまでのモデルのように広告主を集めたいと考えている。しかし現状では、無駄を省き効率よくパッケージを製造できるソフトウェアを活用しコストを抑えている。

Foodabox

Image via Foodabox

2014年に学生プロジェクトからはじまったFoodaboxだが、次第に商品の種類を増やし、ビジネスモデルのシフトを迎えようとしている。大きく見える転換だが、ディックたちにとっては自然な流れであったようだ。

「周りの環境が変わるのにしたがって、自分たちが生き残るためにビジネスモデルを調整してきただけです」。

注目スタートアップのCEOが考える、クリエイティブになるのに大切なことは?

周りの環境が変化するにつれて、自分たちも素早く柔軟に変わり続けることができるのは、スタートアップの強みである。

その中でもとくにFoodaboxは、ソーシャルビジネスや若手リーダーに関する国際的な賞をいくつも受賞するなど、マレーシアの注目スタートアップのひとつである。

クリエイティブになるのに大切なことは何か、ディックに聞いてみた。

「自分の心が赴くままに任せること、自分を制限しないことだと思います。みんなが自分らしくいられ、快適に働けるように、会社として制限は最小限にし、自由に発言できる空間を大切にしています」。

その言葉のとおり、会社の6つのコアバリューには、ディックの考えが反映されている。

・Open minded(他人の考えや視点を受け入れようとすること)
・Deliver more(期待されている以上に与えること)
・Drive change(自分で変化を起こすこと)
・Purpose driven(なぜその行動をとるのかを考えること)
・Embrace failure(失敗を許容すること)
・Never settle(凡人で立ち止まらないこと)

ソーシャルビジネスのお手本となるようなマインドとミッション、アイデアを持ったFoodaboxの話を聞いていると、ビジネスをはじめた原点に立ち返る大切さを思い出させてくれる。

そんなFoodaboxは現在、デザインやマーケティング、ビジネス戦略などに強みを持つインターン生を募集している。過去にも、フランスやオランダ、インドなどからインターン生を受け入れてきた。マレーシアのリーディングスタートアップで働く経験は、あなたのユニークな強みになるだろう。興味がある方は連絡をとってみてはいかがだろうか。

【参照サイト】Foodabox