レストランから出るプラごみを価値に。ベトナムのサーキュラーエコノミー【Pizza 4P’s「Peace for Earth」#06】

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ベトナムの大人気ピザ屋「Pizza 4P’s」のSustainability Managerである永田悠馬氏による、レストランのサステナブルなプロジェクトに焦点をあて、Pizza 4P’sがさらにサステナビリティを突き詰めていく「過程」を追っていくオリジナル記事シリーズ「Peace for Earth」。

前回は「ナチュラルワイン」をテーマに、ベトナム初となるナチュラルワインの商業輸入達成までの過程や、ナチュラルワイン輸入に潜む品質リスクにどう対応するか、作り手の想いをどうお客様へ伝えていくかなど、サステナブルアクションに取り組む企業のリアルな現場をシェアしてきた。

▶︎丁寧な食が「インナーピース」を育む。ベトナム初のナチュラルワイン輸入に挑戦【Pizza 4P’s「Peace for Earth」#05】

第6回目である今回の「Peace for Earth」のテーマは、ベトナム国内の「サーキュラーエコノミー」に焦点を当てる。近年、ヨーロッパを中心にサーキュラーエコノミーという概念が広まりつつある。今までの経済が「製造→消費→廃棄」というリニア(直線的)のシステムで成り立っていたのに対し、サーキュラーエコノミーとは通常廃棄されてしまうものに再び価値を与えて再活用し、地球から新しく資源を採掘することなく経済を循環させていくという概念だ。行政が主体となりサーキュラーエコノミーに取り組む動きも欧州では活発になっている一方、アジアでは比較的新しい概念だと言える。

しかしここ数年で、ベトナム国内でもサーキュラーエコノミーにつながるような動きや企業が現れ始めた。今回紹介するのは、ベトナム・ホーチミンを拠点としてプラスチックごみを価値あるものに変えようと取り組むスタートアップ「PLASTICPeople(プラスチックピープル)」社だ。Pizza 4P’sも彼らと協業を始めたが、その道のりは平坦ではない。ベトナム国内でサステナブルアクションに取り組む企業のリアルな現場をシェアする。

85%のごみがリサイクルされていない

日本からベトナムへ旅行に来た人がはじめに驚くのは、おそらく街中に捨てられたごみの多さではないだろうか。それくらいベトナムの都市部にはごみが溢れている。プラごみや、タバコのポイ捨てもよく見かける。

事実、ベトナムは世界で4番目の海洋プラスチック排出国というデータも出ている。先進国のようなきちんとしたリサイクルインフラはまだ整備されておらず、発生するごみのおよそ85%が分別もリサイクルもされずに、埋立地で山積みになっている。しかし今、その埋立地もキャパオーバーになりつつあるというのが、ベトナムの現状だ。

プラスチックごみ

Photo: Naja Bertolt Jensen / Unsplash

そんな中でも、ベトナム現地に住みながらよく観察してみると、あることが見えてくる。実は「価値のあるごみ」はきちんと回収され、リサイクルされていたのだ。「価値のあるごみ」とはつまり、リサイクル工場が買取をしてくれる「お金になるごみ」である。

例えば、ソフトドリンクのアルミ缶や、キッチン油の一斗缶などは、新しい缶を作るためのアルミ原料として容易にリサイクル可能なため、ベトナム国内でもリサイクル率は高いと言われている。他には、紙資源としてリサイクル可能な段ボール、プラごみの中では比較的リサイクルが容易なペットボトルはよく回収されている。

Pizza 4P’sからも出るこれらのごみは、資源ごみ収集の方がほぼ毎日お店を訪れて買取をしてくれている。彼女らはそれらを回収センターへ持っていき、ごみの種類と量によってお金をもらうわけだ。

ごみを運ぶ女性

Photo: falco / Pixabay.com

ごみに価値を与える会社「PLASTICPeople」

では、価値のないごみはどうなるのか。レストランでは、お客さんの食べ残しや調理時に出てくる生ごみ、食材の包装で大量に使われているプラスチック包装、ビールやワインのガラス瓶、レシートや紙ナプキンなど、多種多様なごみが出てくる。悔しいが、それら「価値のないごみ」はほとんど全て、一緒にされて捨てられているのが現状だ。特に「アルミ付き紙パック」はジュースや生クリームといった液体の長期保存を可能にするためにプラスチック、アルミ、紙といった素材が何層にも重なり合っているため、リサイクルが非常に難しい。

そんな「価値のないごみ」に価値を与えようと取り組むスタートアップが、ホーチミンを拠点に活動する「PLASTICPeople(プラスチックピープル)」社だ。同社は、前途したようなリサイクルしにくいごみをアップサイクルし、美しいデザインの家具や建材を作っている。

プラスチックピープル

Photo: Pizza 4P’s

プラスチックピープル社の事業は多岐に渡る。ごみからリサイクル家具を作ること以外にも、プラスチック使用量を減らしたい企業へのコンサルティング、プラスチックやごみ問題を子どもに教えたいと思っている学校での教育、最近ではリサイクル素材を使い、地方に住む人のための安価な住居「ソーシャルハウジング」も作っている。

Pizza 4P’sもこれまで、プラスチックピープル社と様々なコラボレーションを行ってきた。オフィステーブルや、店舗のベンチやバーカウンター、直近では、Pizza 4P’sの自社チーズ工房から出てくるアルミ付き紙パックのごみを回収し、店舗で使用するコースターにリサイクルするプロジェクトが進行中だ。

プラスチックピープル

Photo: Pizza 4P’s

しかし当然、会社の物品を購入するということは、他の製品との価格比較が行われる。当初、アルミ付き紙パックをリサイクルしたオフィステーブルをプラスチックピープル社から購入しようとした際、筆者が見積りを取得したところ、彼らのリサイクルテーブルは新品のテーブルよりも2割ほど価格が高かった。

やはり価格が高いから却下されてしまうのではないか、と筆者はヒヤヒヤしつつ見積書を担当部署へ提出した。しかし驚くことに、購買担当だったベトナム人は「値段や保証内容にほとんど差はないので、どうせならサステナブルなものを買いたい」と自ら上司へ提案してくれたのだ。

結果、新品のテーブルではなく、プラスチックピープル社が作ったリサイクルテーブルが4P’sのオフィスに納品された。ベトナム人の若い購買担当者だったが、安い価格だけを求めるのではなく、環境への意識も持っていた。

テーブル

Photo: Pizza 4P’s

レストランのプラごみリサイクルは可能か?

技術的には、Pizza 4P’sの店舗から出るプラごみを全てプラスチックピープル社へ送れば100%リサイクル可能だ。しかしだからといって、それがすぐに実現できるわけではない。

まず、レストランから出るプラごみにはどんな種類があるのだろうか。筆者が実際にPizza 4P’sから出てくるプラごみを観察してわかったのは「価値のない」プラごみがあまりにも多く発生しているということだ。

例えば、セントラルキッチンやチーズ工房から配送されてきた食材。これにはパスタソース、サラダのドレッシング、チーズなど様々な食材が含まれている。そして、それらを包むプラスチック包装は、それらの食材が内側にねっとりと付着しているのだ。

レストランから出るごみ

Photo: Pizza 4P’s

これらの汚れが付着したプラごみをリサイクルするためには、プラごみを洗浄する必要が出てくる。しかし、今まで分別すらしてこなかったキッチンでいきなり「では今日からごみを洗ってください」と言っても、そう簡単にはいかない。

「そもそも、ごみを分別するスペースがない」
「キッチンは忙しくて、ごみを洗う暇なんてないよ」
「こんなに頑張って、何か僕たちにメリットがあるんですか?」

そんな現場の声が聞こえてくる。

そこで、全21店舗にて一斉に始めるのではなく、まずは一店舗だけで小さくスタートすることを検討した。環境問題に関心があり、ごみのリサイクルに関心があるメンバーがいる店舗をモデル店として選んだのだ。

しかし、一日に何百人という数のお客様が食事をするレストランにて「汚いプラごみを洗う」ということは、それでもハードルが高いことがわかった。そこで、まず最初のステップとして「汚くないプラごみ」だけを集めることにした。主に、ウェットティッシュの包装や、食材サプライヤーからのプラ袋などだ。

プラスチック

Photo: Pizza 4P’s

これはうまくいくことがわかった。ある程度の量にまとまるまで保管し、その後プラスチックピープル社の工場へ送るのだ。自分たちが目指したい姿からすればものすごく小さなステップだが、どの程度の作業であれば無理なく「最初の一歩」を踏み出せるのか理解できた非常に良い経験となった。

まだまだ課題が残る、ベトナムのサーキュラーエコノミー

今後、Pizza 4P’sの各店舗で分別ができたとしても、まだ多くの課題が残されている。例えば「輸送」だ。現在、ホーチミンだけでもPizza 4P’sの店舗は10店舗あるが、その各店舗からプラスチックピープル社までのプラごみ輸送をどう手配するかについては検討が必要だ。各店舗から別々に送るべきか。それとも、どこかにまとめてから送るべきか。最も効率的な輸送方法が求められる。

さらに、プラスチックピープル社がリサイクルした製品の需要をもっと作り出していくことも重要だ。プラスチックピープル社の活動は寄付や補助金で運営されているわけではない。彼らも家具を販売して利益を生み出さなければ、ごみを回収し続けることはできないのだ。

ベトナムのサーキュラーエコノミーへの移行にはまだまだ課題が残る。しかしそれでも、それに向けて日々奮闘する人々がベトナムにはいる。ベトナムの人々は「これだ!」と思ったら、それをとことん追求する力強さがあると筆者は常々感じている。そんなエネルギー溢れる人々がいる国であり、リサイクルのインフラがほとんど整っていないベトナムだからこそ、もしかするとサーキュラーエコノミーの実現はそう遠い未来でもないのかもしれないと、私は考えている。長い道のりだが、ベトナムの人々と共に、一歩ずつ変化を生み出していきたい。

筆者プロフィール:Pizza 4P’s Sustainability Manager 永田悠馬(ながた ゆうま)

1991年、神奈川生まれ。東京農業大学を卒業した後、カンボジアに渡航。2014年からカンボジアの有機農業や再エネ関連の仕事に携わったのち、2018年にベトナムへ移住。ケンブリッジ大学ビジネスサステナビリティ・マネジメントコース修了。現在はPizza 4P’sのサステナビリティ担当。著書に『カンボジア観光ガイドブック 知られざる魅力』。


【参照サイト】 PLASTICPeople
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【参照サイト】 Pizza 4P’s

Edited by Erika Tomiyama

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