ゼロウェイスト達成率9割。廃棄物ゼロレストラン7つのアクション | 店舗デザイン編【Pizza 4P’s「Peace for Earth」#13】

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ベトナムの大人気ピザ屋「Pizza 4P’s」のSustainability Managerである永田悠馬氏による、レストランのサステナブルなプロジェクトに焦点をあて、Pizza 4P’sがさらにサステナビリティを突き詰めていく「過程」を追っていくオリジナル記事シリーズ「Peace for Earth」。

前回は「ゼロウェイスト」をテーマに、新しくオープンしたPizza 4P’sカンボジア店での実際のごみ削減アクションやその結果、お客様の反応や今後の展望など、サステナブルアクションに取り組む企業のリアルな現場をシェアしてきた。

▶ ゼロウェイスト達成率9割。廃棄物ゼロレストラン10のアクション【Pizza 4P’s「Peace for Earth」#12】

第13回目である今回の「Peace for Earth」は、引き続きPizza 4P’sカンボジア店について紹介する。前回の記事では、カンボジア店オープン後の具体的なアクションを中心に紹介してきたが、今回はカンボジア店を作り上げる上で意識した「いかにゼロウェイストを店舗デザインに組み込むか」について7つのアクションを取り上げる。店舗で実際に使う建材や、スタッフが身につけるユニフォーム、レストランに欠かせない小物など、ありとあらゆる場面にゼロウェイストを意識してきた。カンボジアでのゼロウェイストレストラン実践の舞台裏をシェアする。

Photo: Pizza 4P’s

Photo: Pizza 4P’s

1. 3トンのプラごみを、家具にアップサイクル

Pizza 4P’sでは「エデュテインメント」という言葉を大切にしている。これは、エデュケーション(教育)とエンターテイメント(娯楽)を合わせた言葉で、「楽しく学ぶこと」を表す。カンボジア店では、お客様が楽しくゼロウェイストについて学べることを目指した。それによりお店での体験や気づきを振り返り、その人自身の生活においてもゼロウェイストを考えるきっかけを作ることができる。そこで、カンボジア店では店舗デザインや、レストランで使用するアイテムの随所にゼロウェイストの考え方を取り入れた。

店舗デザインにおいては、以前からベトナム側で何度もコラボレーションをしているPLASTICPeople社に依頼し、店舗で使う家具の一部にプラごみを大々的に採用した。

テーブルや椅子など、お客様の目に付く場所に、Pizza 4P’sのコーポレートカラーでもあるインディゴ色のプラごみから作った素材を組み合わせたのだ。これらの家具を製作するために、3トン以上のプラごみが再利用された。

Photo: Pizza 4P’s

Photo: Pizza 4P’s

また、各テーブルに常備しているカトラリーボックスやスパイス入れも、PLASTICPeople社に依頼し、アルミ付き紙パックのごみから製作した。

Photo: Pizza 4P’s

Photo: Pizza 4P’s

カンボジア店には「リサイクルルーム」と呼ばれる分別後のごみを保管しておく部屋がある。ここでは20種類のごみを分別して保管しているが、それらを保管するボックスもPLASTICPeople社に依頼し、アルミ付き紙パックのごみから製作した。この部屋はお客様は誰でも見学することが可能になっており、Pizza 4P’sが実際にどうごみを分別して処理し、それらを再利用しているのかについて学ぶことができる場となっている。

Photo: Pizza 4P’s

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2. 廃棄ガラス瓶を、テラゾーとグラスに

さらに、ピザ窯を囲う形で配置されているカウンター席のテーブルにもこだわりがある。このテーブルは「テラゾー」と呼ばれる人造大理石で作られており、セメントにガラスを混ぜ合わせることで美しいパターンを作り出している。実はここで使われているガラスは全て、捨てられたガラス瓶を再利用したものだ。

Photo: Pizza 4P’s

Photo: Pizza 4P’s

お客様に提供する水を注ぐグラスも、実はワインボトルを半分にカットして作られたものを使用している。一見すると普通のグラスにも見えるが、よく見ると底に大きな窪みがあるので、ワインボトルを再利用したものだと気付く方も多い。

Photo: Pizza 4P’s 

Photo: Pizza 4P’s 

3. 廃木材は再利用し、フローリングやカゴに

店内のフローリングに使用する木材は、廃材を利用した建築を手がけるNiron House社に依頼し、廃材を再活用した。カンボジアでは違法な森林伐採が深刻な問題となっているため、こういった廃材を再活用する動きは非常に有意義だと考えている。さらに、廃材を使っているからこそ、ヴィンテージ感があるため見栄えもいい。フローリングや壁材以外にも、お客様の荷物を入れておくカゴや、チーズ盛り合わせを提供する木製プレートもこの廃材で製作した。

Photo: Pizza 4P’s, Niron House

Photo: Pizza 4P’s, Niron House

4. 捨てられるはずだったレザー素材をビルホルダーに

カンボジアは安価な労働力から、国際的なアパレルブランドの工場が多くある。そのため、そこから出る廃棄物の量も多い。そしてその廃棄の中には、革製品も多く含まれる。そんな廃棄されてしまう革製品を回収し、Gomi Recycle社に依頼してビルホルダーを製作した。元々は大手アパレルブランドで使用されるはずだったレザー素材であるため、余って廃棄されてしまうものでもしっかりした品質だ。

Photo: Pizza 4P’s

Photo: Pizza 4P’s

5. 小麦袋をエコバッグに

言わずもがな、ピザ小麦はピザ作りに欠かせない素材だ。しかしそのピザ小麦を輸送する段階では、軽くて耐久性のあるナイロン製の袋が使用されている。この袋をどうにか再利用できないか、ということでOnly One Planet社に依頼し、このポリエチレン袋を再利用したピザテイクアウト用エコバッグを製作した。ピザを入れるバックなのでかなり大きめなサイズだが、折り畳むことでポケットにも入るサイズになるのが特徴だ。

Photo: Pizza 4P’s

Photo: Pizza 4P’s

6. 銃弾の空薬莢から作られたピザサーバー

カンボジアは1970年代に内戦を経験している。その傷跡はまだ今も残り、カンボジアの農村地帯では今も地雷や不発弾が見つかることがある。そんなカンボジアの負の遺産を、美しいジュエリーとしてアップサイクルしているのがAndkow&Co社だ。彼らは銃弾の空薬莢(からやっきょう)を回収し、それをジュエリーに生まれ変わらせている。

今回、カンボジア店で使用するピザサーバーと、エントランスに掲げるPizza 4P’sのロゴを彼らに依頼し、空薬莢を再利用した真鍮で製作した。かつて人を傷つける目的で作られたものが、平和を目指すピザレストランで再利用されることになった。

Photo: Pizza 4P’s

Photo: Pizza 4P’s

7. 余った布を使って作られたユニフォーム

お店で働くスタッフが着用するユニフォームにもこだわった。ユニフォームを作ってくれたのは、性産業で働いていた女性たちが自立できるように職業訓練を行っているNGO・Daughters of Cambodiaだ。今回、カンボジア店で採用したユニフォームは全て彼らに製作してもらい、かつ使用する素材も通常の衣服を製作するときに余ってしまう布を再活用した。

また、お客様が食べ終わった後のお皿を回収するためのトローリーを覆うためのカバーは、オーダーメイドのワイシャツを製作するSui Joh社に依頼し、こちらも廃棄されてしまう布を使って製作してもらった。

Photo: Pizza 4P’s

Photo: Pizza 4P’s

常に進化し続けるゼロウェイスト店舗を展開する

これらの取り組みの結果、お客様からは「ゼロウェイストへの細かいこだわりを感じる」といった好意的なコメントをいただいている。こうしてお店に足を運んでくれる人々が、少しでもゼロウェイストに関心を持ってくれるようになることほど嬉しいことはない。

今後、Pizza 4P’sとしてプノンペン市内にさらに2店舗をオープンさせる計画だ。もちろん、その全ての店舗においてゼロウェイストを目指していく。カンボジアのカントリーディレクターである久保田は、今後の展望についてこう話す。

「この店舗はゼロウェイストを達成する上でのはじまりです。新たな店舗展開に合わせて、ゼロウェイストの取り組みを発展させる3店舗のプランを考えております。常に進化し続けるゼロウェイスト店舗を展開することによって、これがより大きなメッセージとなり、同じようにサステナブルを意識するお店が増えていくことが目標です。」

正直、飲食店として地球環境や社会のために何ができるかと言われれば、わからない。私たちもそれを模索している段階だ。今回、このカンボジアに作ったゼロウェイストをコンセプトとした店舗は、Pizza 4P’s自身にとっても実験的な店舗であり、だからこそ今後カンボジアに限らずベトナムのPizza 4P’sの事業展開においても、多くの示唆を与えてくれている。レストランとして、ごみを一切埋立地へ送ることのないモデル、そのチャレンジに向けて、引き続き努力していきたい。

筆者プロフィール:Pizza 4P’s Sustainability Manager 永田悠馬(ながた ゆうま)

1991年、神奈川生まれ。東京農業大学を卒業後、カンボジアに渡航。2014年からカンボジアの有機農業や再エネ関連の仕事に携わったのち、2018年にベトナムへ移住。ケンブリッジ大学ビジネスサステナビリティ・マネジメントコース修了。現在はPizza 4P’sのサステナビリティ担当。著書に『カンボジア観光ガイドブック 知られざる魅力』。

Edited by Erika Tomiyama

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