カナダの団体が、あるウェブサイトを立ち上げた。文章のスペルはめちゃくちゃ。文字が点滅したり、勝手に動いたり、時にぼやけたりしているので、とにかく読みづらい。
これは、日常的に「ディスレクシア(失読症・読み書き障害)」と共に生きる人の気持ちをより多くの人に知ってもらうためのサイトだ。ディスレクシアとは、知的能力には異常がないものの、字の読み書きに困難がある学習障害のことで、サイトを立ち上げたDyslexia Canadaによると、世界中の5人に1人がこの障害を患っているという。これは身近な友人に一人はいてもおかしくない数字であるにもかかわらず、認知度はまだまだ低い。
この啓発サイトではディスレクシアの基本的な情報を学ぶと同時に、エフェクトによってディスレクシアの人の視点を疑似体験できる。読みにくいバージョンと文字が正しく並んでいる読みやすいバージョンがあるため、見比べてみるといかにディスレクシアを抱える人が読みづらい世界で生きているか、知ることができる。
例えば、以下のページには「読む力がなければ教育システムを活用したり、満足のいく仕事を見つけたり、友達を作ったりすることさえ難しい」「カナダの学校の教室では、およそ2~5人の生徒がディスレクシアが原因で文字を読むことに苦労している」(一部抜粋)と書かれている。
個人差はあるものの、ディスレクシアを持つ人々はテキストを他の生徒と同じようなペースで読むことは難しいし、職場でもマニュアルを正しく読めずミスが発生するかもしれない。文字が読みづらいことはただそれだけでも大変なのに、障害から派生する問題と向き合う必要があるのだ。
さらに、ディスレクシアには根本的な治療法がなく、対処療法として読み書きのトレーニングをするしかない。見た目では分かりづらい障害のため、ディスレクシアの認知度が低ければ、子ども自身や周りの人たちも障害が原因で文字が読みづらいことに気づけず、子どものやる気不足と決めつけてしまう可能性もあるだろう。さらに、学習障害児の40%が精神障害を経験しているというのも悲しい事実だ。障害の大変さを周囲から理解されず、他の人と比較して自信を失っていくことで、うつ病などを発症する可能性もある。
これまでディスレクシアの大変さに焦点を当ててきたが、早期に症状を発見することの重要性や早期に症状を発見するためのヒント(例えばbやdなどの似たような文字を混同する)、ディスレクシアを抱えながらも素晴らしい功績を残した人たち(実業家のリチャード・ブランソン、女優のキーラ・ナイトレイ、俳優のキアヌ・リーブス)を紹介するなど、希望が持てる事実についても語られている。
今回紹介したように一部ではディスレクシアについて認知度を上げる活動が行われているが、まだまだ世間一般的にはそういった活動が見られないほどディスレクシアについて情報も少なく、認知度が低い。ただ、困難に直面し続けるディスレクシアの人たちがより生きやすい社会にするために、私達ができることはまず知ることだ。興味がある方は、ぜひこの公式サイトを見ていただきたい。
【参照サイト】Dyslexia Canada
Edited by Kimika