新型コロナウイルスのまん延に伴い、世界各地で度々外出禁止令が発令された。それによって変化したのは、人々の生活だけではない。自然環境も、多大な影響を受けている。
イギリスでは外出の制限により、産業廃棄物や生活廃棄物の回収業者が休業した結果、不法投棄が急増した。2018~2019年の不法投棄件数は、前年同期比で8%増加していたが、新型コロナの影響でその量はさらに増え、コロナ禍前の3倍にも上った。近年問題視される海洋プラスチックごみは、その8割が陸上から雨などで河川に流れ、海に流出していると言われており、一見関係がなさそうに見える不法投棄が、実は深刻化する海洋汚染に拍車をかけている。
そんな海洋汚染を食い止めようと立ち上がったのが、イギリスの環境団体HUBBUBと、コカ・コーラ財団だ。ナッジ(行動経済学)で社会課題を解決することを得意とするHUBBUB社と大手飲料メーカーがタッグを組んで始めたのは、河川の清掃プロジェクト「TREASURE YOUR RIVER」である。
プロジェクトのユニークな点は、「海賊」をテーマに、リサイクルされた小舟でボランティアたちが河川の清掃を行うことだ。「海賊」となった一般市民のボランティアたちは、「プラスチック釣り」と銘打ったプラスチックの回収や、陸上での清掃活動を行う。
ロンドンのテムズ川をはじめ、ブリストル、カーディフ、エディンバラ、リバプール、マンチェスター、ノッティンガムといった主要都市に流れる河川で取り組まれる同プロジェクトの目標は、95トンの廃棄物を回収し、90トンの廃棄物の海洋流出を防ぐこと。各河川を「遺産」として後世に残すことを目指している。
さらに、このキャンペーンの影響を測るため、全国の廃棄物を追跡するためのマップが作成されるという。パートナー団体であるThe Rivers Trustが、ジオタグを含むテクノロジーを使用して作成する予定だ。マップ上の廃棄物追跡内容は各パートナーと共有され、役立てられる。
HUBBUB社によると、2019年以降、75%のイギリス国民が海洋汚染に対する関心を持っていた。そしてコロナ禍での約1年間にわたるロックダウンを経て、人々の自然に対する保護意識はさらに高くなっているそうだ。今回のキャンペーンは、人々が河川や海洋環境保護に対してアクションを起こすきっかけとなるべく始まったのだ。
「海賊」をテーマに、楽しみながら河川の清掃を行う英国のプロジェクト。日本でもビーチクリーンや街中でのごみ拾いが珍しくはなくなってきているものの、実践したことがある人はそう多くはないかもしれない。遊び心溢れる画期的なアイデアでごみ拾いのハードルを低くする。そんな活動が増えていくことで、より多くの人が参加し、地球をより良くしていけるのではないだろうか。
【参照サイト】TREASURE YOUR RIVER
【参照サイト】Hubbub
【参照サイト】Fly-tipping – the illegal dumping of waste
【参照サイト】イギリス 外出制限で家庭ごみ増 不法投棄が3倍に
【関連ページ】ナッジで”楽しく”問題解決。英HUBBUBに聞く、人を巻き込むデザインとは?
Edited by Tomoko Ito