気候変動による干ばつや海面上昇、嵐や洪水といった自然災害などで、住んでいる場所から避難してなくてはならない人々を「環境難民」と呼ぶ。災害からの避難生活を送る人は、2020年末の時点で、104の国と地域にいる約700万人にものぼった。環境難民が一番多くいる国は、南アジアのアフガニスタン(110万人)。そしてインド、パキスタン、エチオピア、スーダンと続く(※1)。
避難が必要な状況にも関わらず、コロナ禍のため感染を恐れて移動していない人々も数多く存在する。シェルターや難民キャンプの生活は多くの人が密集していることが多く、風になびくテントや有り合わせの材料で作られた、あばら家が所狭しと連なっているという光景を想像する人もいるかもしれない。
そんな人々が移住に不安を覚えたり、移動先で住宅に困ったりすることが無いように、自らも家を失った経験のあるイラン出身のGisueとMojganのHariri姉妹が考案した簡素な「家」がある。運びやすく、ワンプッシュで展開するこの家は、日本の折り紙をモデルにしているという。
現場で瞬時に設置できるプレハブのモジュラー構造で、コンパクトなため輸送も容易だ。移動が必要になったら、またすぐに折りたためる。
この折り紙のような緊急シェルターポッドは、森にある小屋や、海の近くの家としても機能する。また、コロナ禍が落ち着いたあとは大規模な音楽フェスティバルや、スポーツイベントでの活用も期待される。
人の生活の根幹を支える衣食住のうち、住居については最も多くのリソース(資金、資材、労働力など)が集中的に必要になる。そのため、貧しい人ほど苦労するというのが実情だ。以前IDEAS FOR GOODで取り上げたことのある「Skyshelter.zip」も、折り紙のように折り畳める高層ビルが、災害地域のシェルターや災害ボランティアの多目的ハブとなる、というものだった。
平時でも有事でも、居心地の良い家屋が手軽につくれる折り紙式シェルターというのは、誰にとっても、ありがたいものではないだろうか。
※1 Environmental Migration
【参照サイト】Prefab Folding Pod
Edited by Kimika