トルコの山火事、ドイツの大洪水、「1,000年に一度」と言われる中国の大雨など、世界各地で異常気象が多発している。こうした報道を見聞きするたびに、地球環境のために行動したい、気候変動緩和に何か貢献できないだろうか、と思いを募らせている人もいるのではないだろうか。
そんな思いを「列車の旅」を通して実現するサービスがイギリスで始まった。手掛けたのは、イギリスの列車チケット予約会社であるTrainhugger(トレインハガー)。
同社は、予約サイト「Trainhugger」を通じてチケットが予約される度に50ペンス(約70円)を Royal Forestry Society (RFS) と Royal Scottish Forestry Societyという二つの森林保全団体と設立した植樹基金にあて、イギリス全土に植樹を行っていく事業を立ち上げた。この仕組みを通じて、2025年までにイギリス全土に1,000万本の木を植えることを目標としている。
ちなみに50ペンスは収益の一部から拠出されるため、利用者が新たに負担するわけではない。他社と同様の金額で列車の旅を楽しみ、さらには植樹に協力することもできるわけだ。
Trainhuggerによると、イギリスのCO2削減目標を達成するには3万ヘクタールの森林が必要で、そのためには毎年5,000万から9,000万本の木を植える必要があると試算している。無理難題な数にも思えるが、同社によると2019年にイギリスでは18億の列車の旅があり、仮にそのうちの1%が「Trainhugger」を通じて予約されれば1,000万本の木を植えることができる、という。年間5,000万から9,000万本の植樹も、あながち夢ではないというわけだ。
Trainhuggerが森林に着目したのは、気候変動の緩和目的だけではない。森林は多くの生物のすみかとなるため、生物多様性保全の側面からも重要だ。また、ヒートアイランド現象を緩和したり、洪水や火事を防いだりする効果もある。さらには、汚染物質の吸収、人の精神的、肉体的健康の増進にもつながるなど、さまざまな好影響を持つ。
まもなく最初の2,500本が、ロンドンから列車で1時間ほどのホッカーリッジ・アンド・パンケーキ・ウッズという森に植えられる。一般にも公開されているため、興味のある人は訪れることもできる。また、自分の列車の旅の利用を通じて植えられた木の場所や成長の様子などは、近々公開予定の予約アプリで確認できるようになるという。植えられた木に、列車に乗って会いにいくのも楽しそうだ。
気候変動の緩和や生物多様性の保全などに気軽に貢献できる、列車チケット販売サービス。サステナビリティへの関心が高まる昨今、列車の旅の新たな魅力を広げるサービスとして進展に注目したい。
【参照サイト】Trainhugger
Edited by Kimika