アップサイクル──必要なくなったものや、捨てられるものを使い、元の製品よりも価値の高いものを作り出すこと。世界には、そんなアップサイクルの事例がたくさんある。
本記事では、日頃から世界のソーシャルグッドな情報を追っているIDEAS FOR GOOD編集部が、2021後半に注目したアップサイクル事例7つをまとめてご紹介する。
世界の最新アップサイクル事例7選
01. 海洋に流れ出す前のプラスチックごみがおもちゃに
古くからファッションドールの「バービー人形」で知られる米マテル社が、同社初となるオーシャン・バウンド・プラスチック(水路や海岸域の近くの地面に落ちていたプラスチックごみ)でできた新シリーズ「バービー・ラブズ・ザ・オーシャン・コレクション」を発表した。本来であれば海洋に流出するはずだったプラスチックを拾いあげて、子供やその親の啓発に活用しているのだ。
02. コーヒーかすがビールに
アサヒグループと、サステナブルファッションブランドのEcoalfの共同展開「UPCYCLE B」。次世代に向けたライフスタイルを提案する企画の第一弾として、抽出後のコーヒー豆かすからビールを作っている。テスト焙煎や店頭での販売期間管理のため飲まれずに大量に廃棄されていたコーヒー豆を回収し、世にも珍しい「コーヒークラフト」を作り上げたのだ。
03. 宅配用のバッグが子供たちのスクールバッグに
東南アジアで展開するデリバリーサービス『GrabFood』では、配達用バッグを数か月ごとに交換することが義務。そこで生まれる大量の廃棄をなくすべく、マレーシアのブランドが立ち上がった。彼らはGrabFoodと連携し、使用済み配達用バッグをランドセルや筆箱、マスクなどを入れられる小さなバッグなどにアップサイクルし、孤児院に寄贈している。
04. 建築廃材が一点もののアクセサリーに
アクセサリーブランド「KiNaKo」では、建築物を作るときに出る建材(建築資材)の端材や、取り壊すときに出る廃材を、ピアスやリングに生まれ変わらせている。作者自身が設計事務所で働いていたときに、大量の端材が毎日のように捨てられる様子を目にしてきた経験から、それらを無駄にしないものづくりをしているのだ。
05. 捨てられたガムがスケボーの車輪に
フランスの学生が、街で回収したガムのかみかす(噛んで捨てられたガムのごみ)からスケートボードの車輪を作成。「ストリートからストリートへ」という合言葉を掲げ、スケートボードを最大限楽しむためのガムの落ちていない綺麗な道を作ることを目的としている。
06. 廃棄寸前の自転車が子供たちのための移動図書館に
中国で課題となっている「シェアサイクル墓地」。廃棄自転車をアップサイクルして作られたのは、てんとう虫の形をした「てんとう虫図書館」だ。都市空間に置き、誰もが自由に本を読むことができる。その場で本を読むだけではなく、気に入った本があれば、自分の本と取り替えて持ち帰れるようなシステム。愛らしいデザインと、本のシェアというコンセプトが地域の住民に受け入れられた。
07. 医療プラスチックごみが公園の遊具に
デンマークのラナースで、病院から出るプラスチックの約300キロを使って作られた公園「The Circular Playground」が誕生。公園の一部には海洋プラスチックや靴を再利用した素材も使われている。子供たちの遊び場になると同時に、大人に対してごみを正しく仕分けすることや、すでにある素材を他のものに活かすことの大切さを伝えているプロジェクトだ。
まとめ
2021年も、画期的なアップサイクルの事例が多く見受けられた。もちろん、アップサイクルは万能の解決策ではない。本当に地球環境のことを考えるなら、廃棄物のセクシーでクリエイティブな活用法を考えるよりも、まず「ごみを大量に出さなくていい」ように設計していくことが大切だ。
しかし、世の中にはすでに大量の手つかずの廃棄物がすでにある。埋立地に送られ、焼却されていくか、風や雨などに乗って海に流れ込んでいくか。そんなごみを救う一つの方法として、アップサイクルの動向を引き続き追っていきたい。