キャッシュレス決済の普及は私たちの生活を便利にしている。お財布からコインを出さずとも、スマホやスマートウォッチを軽くタップするだけで簡単に会計が完了できる。コロナ禍で非接触が推進される中、現金決済からキャッシュレス決済へ移行した人も多いのではないだろうか。
一方で、キャッシュレスが普及すると同時に、会計時のちょっとしたお釣りを募金箱へ入れる機会も減っている。調査によると、約47%の回答者がキャッシュレス化により店頭募金をする回数が減ったと感じているという。(※1)
助けを必要とする人の中には、お店の近くで直接募金を募り、生計を立てているホームレスの人もいる。コロナの影響で、ただでさえ人との接触が避けられている昨今、ホームレスの人にとってキャッシュレス化はネガティブな追い風となっている。
そんな中、そうしたキャッシュレス化の負の側面を解決するサービスを、イギリスのスタートアップ「Unify」が提供している。Unifyでは、ホームレスの人々にRFID技術(※2)を使用した読み込み用リストバンドを配る。募金をしたい人は、スマホアプリでリストバンドのタグを読み込み、募金金額を打ち込むだけで電子決済時のように寄付が完了するという仕組みだ。
この方法であれば、現金の受け渡しによる接触への心配もなく、かつ募金したいけれど現金の持ち合わせがないという募金者のストレスも同時に解決できるというわけだ。
Unifyでは、支援されるホームレスの人だけでなく、募金した人にもサービスが還元される点が、募金という概念では新しい試みだ。募金した人は募金額1ポンドにつき、アプリ内のマーケットプレイスで使用可能なバウチャーと交換できる。これにより、募金を促進させる効果が期待できる。募金がホームレスの人への一方通行の支援ではなく、クラウドファンディングのような、相互的な関係を作るきっかけになるかもしれない。
目の前の人への募金だけではなく、タグを読み込んだ相手や、対象の地域にいるホームレスの人へリモートで募金ができる「Unify Sofa Giving」という機能もある。帰宅後でも、思い立ったタイミングで募金を行えるのも嬉しい点だ。Unifyでは個人情報は固く守られているので、支援する人・支援される人の個人が特定されることはなく、匿名性を保ったまま支援が行えることも安心だろう。
さらに、Unifyが募金への透過性を高めている点にも着目したい。従来の現金を渡す募金方法では、そのお金が渡した相手の為になっているか不透明であった。しかし、Unifyで受け取った支援金は、お金が何に使われたかを確認することが可能だ。現金として引き出すことができないようになっているうえに、アルコールや、ホームレスの人々の生活状況を悪化させるような自虐的な商品は買えないよう制限されている。
そしてUnifyは募金サービスとしての透過性も高い。Unifyでは約92%が支援者の元へ届き、5%がサービスの透過性を高める費用に、2.4%が取引手数料として使われると公開されており、支援先への還元率の高さと共にサービスへの信頼感につながっている。
キャッシュレスによる非接触で、支援者が募金へ参加しやすくなる工夫を盛り込んだサービスを展開するUnify。そのホームレスの人への還元率の高さや、サービスの透過性を高める働きからは、企業活動を通して社会をより良くしていきたいという強い姿勢が受け取れる。日本では、路上のホームレスの人に直接募金する文化はあまり多く見かけられないが、このサービスを使えばホームレスという観点だけでなく、災害時のチャリティーなど必要な人に支援が届く仕組みがより広がるだろう。今後の活動に期待したい。
※1 募金に関する調査(日本マクドナルド)
※2 ID情報を埋め込んだRFタグから、電磁界や電波などを用いた近距離の無線通信によって情報をやりとりする技術のこと。
【参照サイト】 Unify
【参照サイト】 The Week
Edited by Erika Tomiyama