毎年10月は、イギリスでの「黒人歴史月間(Black History Month)」。イギリスやアメリカにおける黒人系の人々の功績をたたえ、彼らの役割の重要性を再認識する月間だ。黒人住民の割合が13%ほどの(※1)である首都ロンドンでは、交通機関での一風変わった取り組みが行われている。
それが、ロンドン地下鉄の駅名を、イギリスにおける黒人史にちなんだ名前に変えた特別版の地下鉄路線図「ブラックヒストリーマップ」を発行することだ。この路線図では、過去から現在まで教育や文化、差別撤廃のための社会運動などさまざまな分野で活躍してきた272人の名前が、そのままロンドン地下鉄の駅名となっている。
たとえば、St.Pauls駅はセシル・ノブレガ。詩人であり劇作家、コミュニティ活動家で、イギリスで常設展示された初の黒人女性の記念碑がある。Warren Street駅は、レンフォード・アルフォンソ。学校教育の中で、イギリスにおける黒人アイデンティティとその歴史の発展を残すために奮闘し、アフリカ系・カリブ海系の人々の歴史を保存する団体Black Cultural Archivesを立ち上げた。
イギリスのオンライン紙 Independentは、この取り組みに際してロンドン市長のサディク・カーン氏が次のように述べたと報道している。
「黒人史は、すなわちロンドンの歴史です。私は、黒人系の人々が真に公正に扱われる都市づくりをしたいと願っています。そのためには、まず教育が欠かせません。今回のブラックヒストリーマップの作成は、私たちの国に重要な貢献をしてくれた先駆者たちの功績をたたえ、祝い、そして街の人々がそれを学ぶ機会となるでしょう」
偉人の名前が駅名となった特別版の路線図は、ロンドン交通局のウェブサイトからダウンロードできる。また、Black Cultural Archivesのオンラインショップでは路線図のA1サイズポスターを購入可能だ。
人種差別が完全になくなってはいない状況のなかで、この黒人歴史月間にはさまざまな取り組みが行われている。市や交通局が協力しあい、人々の重要な交通網である地下鉄の路線図を使って啓発するという思い切ったキャンペーンは、少しずつ、しかし確実に人々の意識を変えていくだろう。