街を汚す落書きを、アーティストが上書き。南米ペルーの「芸術的」なPR施策

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海外の街を歩くとよく見かける、壁の落書き(グラフィティ)。1970年代にニューヨークで始まり、1983年に公開された映画『ワイルド・スタイル』で世界的に存在が知られるようになったことから、街の線路沿いや、電車、学生地区などさまざまな場所で落書きが見られるようになった。

アートには、情熱や自己表現、また抗議の意味なども含まれ、多くの人に愛されている。しかし雑に描かれた落書きは街を汚し、割れ窓理論(※1)に見られるように、治安の悪さのバロメーターにもなる。実際、ペルーの首都リマの落書きが多い地域では、強盗や窃盗などの犯罪が多発していた。

※1 建物の窓が壊れている状態を放置すると、それが「誰も当該地域に対し関心を払っていない」というサインとなる。そして住民のモラルが下がった結果、犯罪を起こしやすい環境を作り出すこと(参考:Broken Windows Theory

そこで立ち上がったのが、アルコールブランドMike’s Hard Lemonadeだ。世界的なクリエイティブエージェンシーOgilvyのペルー支部と協業し、地元アーティストたちの手を借りながら、街の落書きを立派な「ストリートアート」へと昇華させていったのだ。地域のためになるよう、事前にリマの該当地区の住民たちが「下品」だと思った落書きを報告できる機会も設けた。

Image via Ogilvy

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The Sweetest Graffitis

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今回の取り組みは、Mike’s Hard Lemonadeの発売した新作カクテル「The Sweetest Graffitis」のキャンペーンの一環である。どちらの写真でも、右のキャラクターが持っているスプレーには、同社のロゴがはっきりと描かれている。ドミノピザが道路の舗装をしながら自社の宣伝をしていたように、今回のキャンペーンも、街の景観を良くすると共に、自社ブランドを宣伝するという巧みな作戦だ。

Mike’s Hard Lemonadeはこのキャンペーンを通して、街に落書きをする若者たちに、人生においてより前向きな視点を持ってほしいと呼びかけている。

壁の落書きをカラフルなアートに変えることに、どれほどの効果があるかはまだわからない。どちらにせよ落書きだ、と思う人もいるかもしれない。しかし、放っておいたらただ街の景観を汚して地元民を困らせるだけだった落書きが、いつのまにかポジティブとも言える存在に変わっていることは、ペルー以外に住む人にとっても確かな希望となるだろう。

【参照サイト】The Sweetest Graffitis Mike’s Hard Lemonade
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