デンマーク発、本の代わりに「人」を貸し出す図書館

Browse By

多様性と調和」をコンセプトのひとつに掲げた、東京2020オリンピック・パラリンピックが終わってから約半年が経った。あなたは最近、社会的マイノリティに対する意識が変わったことはあっただろうか。

日本財団は2021年9月、「ダイバーシティ&インクルージョンに関する意識調査」を実施し、東京2020オリンピック・パラリンピック開催前後における、人々の社会的マイノリティに対する意識の変化などを明らかにした。

同調査によると、「日本社会には、ダイバーシティ&インクルージョンを前向きに捉えようとする流れを感じる」と回答した人は45.5%(※1)。2019年の調査結果である40.2%よりは増加したものの、まだまだ意識改革の余地がありそうだ。

では、私たちは具体的に何をすれば、自分の偏ったモノの見方を変え、一人一人を等しく尊重できるようになるのだろうか。

その答えのひとつが、社会のなかで誤解や偏見を受けやすい人々を、図書館の本のように”借りる”ことができる「ヒューマンライブラリー」を利用することかもしれない。

ヒューマンライブラリーでは本の役を担う人に、その人の経験や属性などに応じて、「ホームレス」「視聴覚障害者」「若い母親」「イスラム教徒」といったタイトルが付く。読者の役を担う人はそれを見て、自分が話をしたい相手を選ぶ。

その後は30分ほど、本役の人と読者役の人が話をする。読者役の人は、本役の人に対して様々な質問をすることができるが、もちろん内容によっては答えてもらえないこともある。それでも、「聞きづらい質問を遠慮なく聞けて、本役の人はできる限りそれに答える」というのが、ヒューマンライブラリーの基本的なあり方だ。

ヒューマンライブラリーは、2000年にデンマークで始まった活動で、今では世界85か国で開催されている。日本にも日本ヒューマンライブラリー学会があり、定期的にイベントを開催している。

ヒューマンライブラリーを最初に始めたデンマークのNPOであるHuman Library Organizationは、企業向けの研修プログラムの提供や、企業イベントのプロデュースなども行っている。これまで、マイクロソフト、イケア、ハイネケン、ダイムラーといった企業にサービスを提供してきたという。

同団体によると、本役の人の使命は、「質問に答えながら、一般的に思われていることとは別の事実を紹介すること」だという。

先述した日本財団の調査では、社会的マイノリティと親しく接したことのある人ほど、ダイバーシティ&インクルージョンへの理解や支持が高い傾向にあることが、明らかにされている。生身の人間と関わると、それだけ自分の考えを揺さぶられるのではないだろうか。

ヒューマンライブラリーを通して、多くの人が、自分とは異なる人生を歩んできた人の「具体的な事実」に耳を傾けるようになってほしい。

※1 「ダイバーシティ&インクルージョンに関する意識調査」詳細資料

【参照サイト】 Unjudge someone – The Human Library Organization
【参照サイト】日本ヒューマンライブラリー学会
【関連記事】多様性ってそもそも何?その必要性を考える【ウェルビーイング特集 #21 多様性】 | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD
【関連ページ】ダイバーシティ(多様性)とは・意味 | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD

FacebookTwitter