私たちの生活の中で意外にも大きな環境負荷を生んでいる「洗濯」。学術誌『Sustainability』に掲載された論文によると、家庭用洗濯機によって約20兆リットルの水と電力100TWhが世界中で1年間に使われているという。また衣類の洗濯は、洗剤や柔軟剤による水質汚染、マイクロプラスチックによる有害な化学物質の拡散などの問題を生んでいる。
さらに欧米では、皮脂などが落としやすいよう「お湯」で洗濯するのが一般的で、水を使用する日本などの国に比べて、より多くの電力を消費することが問題になっている。
そうした洗濯の問題に目をつけ、いま国内外から注目されているイギリスのスタートアップ企業がある。それがOxwashだ。Oxwashはサステナブルな洗濯機や乾燥機、アイロンの技術のみならず、洗濯物の輸送の環境負荷までを考える新しいランドリーサービスを生み出した。
同社CEOであるKyle Grantさんは、オックスフォード大学在学中、頻繁に壊れる洗濯機に辟易としていたとき、洗濯のシステムが多大な環境負荷を生み出していることに気付いた。気候危機の問題を身近に感じながら、そうした持続可能ではないシステムを使い続けることは自分の価値観にフィットしていない。そう感じたKyleさんは、自らランドリーサービスの設立に踏み出した。
Oxwashが使う最新のシステムはどれも画期的だ。電力や水の使用量を抑えるだけではなく、洗濯する衣類がなるべく長持ちするよう、下記のポイントに留意しているという。
- 衣類を水で濡らす前に、シミを取る。
- 洋服を長持ちさせるために、衣類は水で洗濯し、強い圧力をかけずに上下からシャワーをかける形で洗浄する。
- マイクロプラスチックの流出を防ぐために、空気の循環を利用し、必要以上の熱をかけずに衣類を乾燥させる。
- アイロンには、絡まった繊維を正しい位置に戻すためにマネキン型のロボットを使用。内側から熱を加え、短時間で温める。
マイクロプラスチックは専用のフィルターでもキャッチされ、包装などに再利用されているという。
さらにOxwashのサービスで印象的なのが、洗濯物の輸送方法だ。「どうせなら、洗濯物が家を出るところから変革したい」と思ったKyleさんは、自動車やバイクではなく、ゼロエミッションで走る電動自転車で洗濯物を集めるというアイデアにたどり着いた。電動自転車には再生可能エネルギーが使われており、印象的な青いボックスは街ゆく人々がOxwashを認知する機会にもなっている。
Oxwashは個人だけではなく、企業に対してもサービスを展開し、すでにAirbnbなどとパートナーシップを組みながら、寝具やタオルなどの洗濯も手がけている。今後、衣類のレンタルサービスが加速することも考えられる中で、Oxwashのサービスとテクノロジーは重宝されていくに違いない。
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【参照サイト】Oxwash
【参照サイト】Investing with Purpose: Scaling sustainably with Oxwash