紛争や自然災害などにより、数十万人が安全を求めてあなたが暮らす街に避難してきたら、街にどのような変化が起きるだろうか。
2022年2月にロシアの軍事行動が始まって以来、ウクライナ西部の都市リヴィウに、20万人以上が避難しに来ている。ポーランドとの国境からわずか70キロメートルという場所に位置するリヴィウは、ウクライナ東部より安全だと思われているのだ。
これにともないリヴィウでは、人が増えすぎて移動手段が確保しにくいという課題が生じている。リヴィウの人口は、約70万人から約90万人にまで増加。多くの人が車で避難してきたため、街中が大渋滞になり、バスなどの公共交通機関も対応しきれないほど混雑しているという。避難しても移動の自由がなく、生活範囲が限られてしまっている人々がいるのが現状だ。
また、ウクライナ危機が長期化すると、避難している人が貧困に陥るリスクが高くなる。ガソリン価格が高騰するなか、「なるべく車の利用を控えたい」と考える人も多いだろう。
そこで、「Bikes 4 Ukraine(ウクライナに自転車を)」というプロジェクトでは、自転車都市として知られるデンマークの首都コペンハーゲンから、リヴィウに自転車を贈る取り組みを進めている。リヴィウ市の依頼を受けて行われており、人々に自転車で街中をスムーズに移動してもらうことを目指している。
2022年6月現在は、2千台の自転車を寄付することを目標にしており、ウェブサイトで譲ってくれる人を募集している。
プロジェクトチームは2022年7月上旬に、コペンハーゲンのフレゼレクスベア地区で自転車を集め、まとめてリヴィウに送る計画だ。子ども用の自転車、大きな荷物を運べるカーゴバイク、頑丈なロックなどを、幅広く集めるという。
Bikes 4 Ukraineはさらに、リヴィウで自転車に乗る人の安全を確保できるよう、20キロメートルに及ぶ臨時的な自転車道を作る計画を立てている。道を作るのに200万デンマーク・クローネ(約3,900万円)かかる予定で、クラウドファンディングプラットフォームのGoFundMeで資金を募っている。
紛争により避難を強いられている人も、スーパーに買い物に行ったり、医療機関にかかったりと、日々の生活を送っている。Bikes 4 Ukraineは、そういった現地の人々の支援ニーズを汲み取ったプロジェクトではないだろうか。
【参照サイト】Bikes 4 Ukraine | Cykler til Ukraine
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