収監されている人たちの95%以上は、いずれ私たちの社会に戻ってくる。たとえばアメリカでは、1990年以降の平均で、毎年約59万人の受刑者が釈放されている(※1)。
そんな彼らが社会生活に馴染み、再犯を防ぐための取り組みが世界中で行われている。
ビジネス対話アプリを手掛けるSlackは2018年、食品大手ケロッグの主要株主であるケロッグ財団などと共に、元受刑者がテクノロジー分野で仕事を得るための訓練プログラム「Next Chapter(ネクスト・チャプター)」を立ち上げた。
同プログラムは、「元受刑者が社会復帰するためには、仕事を得ることが重要」という考えに基づいた取り組みだ。最初のパイロットプログラムでは、3人の元受刑者が8か月の訓練プログラムに参加。そして、3人ともフルタイム勤務のエンジニアとしてSlackに採用されるという成果を出した。
その後Next Chapterは、趣旨に賛同するパートナー企業を増やしていく。2022年7月現在は14の企業が、元受刑者をエンジニアとして採用する姿勢を示している。Zoom、Square、Dropboxといった企業も、その一員だ。これまで30人以上が訓練プログラムを終え、企業からフルタイムの仕事のオファーをもらったという。
このプログラムのミッションは、元受刑者がテクノロジー分野で活躍するための道筋を作ることと、企業がよりインクルーシブで公平な職場を作る力になることだ。
Next Chapterに参加する企業には、自社で5か月の現場実習を行ったり、元受刑者を受け入れるための企業文化を醸成したりするといったコミットメントが求められる。
こうして多くの従業員が、心の壁を感じていた相手に対する認識が変わる体験をすると、元受刑者に限らず、多様な人材を受け入れやすい企業になるのではないだろうか。
同プログラムでは、複数回に及ぶ面接を通して、エンジニアとしての素質がある元受刑者を見つけることに力を入れている。「素質がある人は、どこにでもいるはず。だが、機会は平等に与えられていない」というのが、Next Chapterの考えだ。
自らの偏見が邪魔をして、ポテンシャルを持った人材を見逃していないか、改めて考えてみてもいいかもしれない。
※1 Offender Reentry: Correctional Statistics, Reintegration into the Community, and Recidivism
【参照サイト】Next Chapter
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