手を振ると停まる電気列車。地方の車依存を減らすモビリティになるか

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「地方鉄道が存続の危機」「〇〇線が廃止された」といったニュースを見たことがある人は多いだろう。日本では2000年以降、45路線・約1,150キロメートルの鉄軌道が廃止されている(※1)

使われなくなった線路に、新しくトラムを走らせようとしているのが、ドイツのリー・ハーツ氏、エリック・マンツ・ハンセン氏、コンスタンチン・ウルフ氏の3人だ。

3人は、かつてドイツ北部の都市であるキールまで通じていた線路の一部に、小さな電動トラム「ABACUS」を走らせることを提案している。

Image via Erik Mantz-Hansen

Image via Erik Mantz-Hansen

一般的なトラムとは、外観が大きく異なるABACUS。乗り物に側面がなく、歩道との段差が小さいのは、乗り降りしやすくするための工夫だ。部品の多くを前面と後面に組み込むことで、段差を小さくしているという。また、トラムには出し入れできるスロープが付いているので、車椅子に乗っている人も利用できる。

歩道を通る人が、ABACUSを見かけたときに手を振ると、カメラが人の動きを検知して停車する。トラムはゆっくり動き、人が近くを歩いても安全なようにするという。決められたダイヤに従って動くのではなく、人々のニーズに柔軟に対応する点がユニークだ。

Image via Erik Mantz-Hansen

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ABACUSが走る距離は、片道約3キロメートルと比較的短い。この距離であれば、たまたまトラムを見かける機会が多く、決まったダイヤがなくても利用しやすいのではないだろうか。

乗り物に側面がないと、自然との一体感を楽しみながら移動できるというメリットもある。天井に取り付けられた2本の手すりに寄りかかったり、座ったりすることが可能だ。景色を眺め、風を感じながら移動してみたい。

公共交通が充実していない地域では、車への依存度が高まりやすい。大気汚染などの問題を考えると、車の利用を減らす工夫をすることが大切だ。使われなくなった線路を走るABACUSは、地域を支える持続可能なモビリティになるのではないだろうか。

※1 近年廃止された鉄軌道路線(国土交通省)
【参照サイト】Erik Mantz-Hansen – ABACUS
【参照サイト】ABACUS — konstantinwolf
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