アメリカの大都市、ニューヨーク──タイムズスクエアや自由の女神像といった有名な観光名所も多く、一度は訪れてみたいと思う人が多い街だろう。だが同時に、ニューヨークは殺人などの凶悪犯罪が多く発生している場所でもある(※1)。
特にブルックリン区では、銃による犯罪が度々起こっており、2022年4月には地下鉄で銃撃事件が発生。治安が良いとは言い難い場所だ。そんななか、ブルックリンを拠点とするスタートアップ「BlocPower」は、街の治安を改善しながら、地球環境の保全に貢献しているという。
その方法とは、CO2排出量の削減や地球温暖化対策のための技術を意味する「気候テック」に関連する雇用を促進することだ。
同社は、ニューヨーク市と連携し、銃による暴力のリスクが高い地域に「Civilian Climate Corps(市民気候対策隊)」という研修プログラムを導入した。このプログラムの研修生は、1時間あたり20ドルの報酬で、ヒートポンプやソーラーパネル、無線LANシステム、電気充電ステーションなどの設置方法を学ぶことができる。研修を通して専門的なトレーニングを積むことで、急速に成長する気候テック分野の企業とのコネクションが得られ、仕事を得やすくなる仕組みだ。
「市民気候対策隊」は、これまでに1,500人以上のニューヨーカーを訓練し、地球環境の保全に取り組む仕事を生み出している。プログラムによって気候変動関連の労働力が拡大、多様化、そして強化したほか、プログラムの実施地域では就職率が50%を超え、銃による犯罪の件数も減少。また、安心だと感じることができるようになったり、夢を持てるようになったりした人もいるという。
今後ますますニーズが高まる気候テックに関する雇用を生むことで、「街の治安」と「地球環境」の二つの問題にアプローチするプログラム。この取り組みが人か環境のどちらかでなく、どちらにも意義あるものであるように、想像力を働かせることで、身の回りにある複数の課題を解決する方法はきっとあるに違いない。
※1 NY 市犯罪マップより
【参照サイト】BlocPower-BlocPower’s Civilian Climate Corps
【参照サイト】Inside BlocPower’s mission to upskill workers and green New York City buildings (photo story)
Edited by Tomoko Ito