2022年8月15日、すべての人を対象に生理用品を無償提供する権利を得るための法律が施行された。学校や自治体を配布することを「法制化」するのは、世界で初めての事例となる。以下が、その経緯だ。
(※本記事は、2020年に書かれた記事の内容を再構成・再編集したものです)
イギリスのスコットランド議会は2020年2月25日、すべての人に生理用品を無償で提供する初めての法案の大筋を承認した。今後、法案の実施に向け最終調整に入る。スコットランドは「生理の貧困(Period Poverty)」と「女性の教育機会損失」の解消に向けて、国際社会に大きな道筋を示す形となる。
法案は賛成112票と棄権1票で議会を通過。反対は0票だった。今回の完全無償化にあたり年間約35億円の予算があてられる。女性だけでなくトランスジェンダーの人など生理用品を必要とするすべての人を対象にする方針だ。
生理用品無償化に向けた一連の動きのきっかけになったのは、2017年にこどもの権利を守る国政NGOプラン・インターナショナルUKが実施した調査により生理の貧困の実態が明らかになったことだ。生理の貧困とは、生理用品を買うお金がない、または利用できない環境にあることを指す。
イギリスでは10人に1人の女性が生理用品を金銭的理由で購入できず、ティッシュやキッチンペーパー、靴下などで代用していた。さらに2人に1人は生理を理由に学校を休むなど、生理の貧困は女性の教育機会損失に直結することが浮き彫りになっていた。
近年、途上国だけでなく格差が広がる先進国でも課題視されてきた。しかしEUの税制上、生理用品は「贅沢品」と位置づけられており、このことがイギリスで生理用品を非課税化できない一要因となっていたのだ。
スコットランドは2018年9月に中学校・高校・大学に通う女子生徒に対し生理用品を無償で提供していたが、EU離脱が2020年1月に正式成立したことで、すべての人を対象にした法案成立へ向け大きく前進した。
昨年、当法案を提出した野党女性議員モニカ・レノン氏はスコットランド議会討論の中で「女性は政治の意思決定の中で置き去りにされてきました。(今回の法案成立は)性差解消に向けた大きな一歩となるでしょう」と述べた。
世界では、2004年にはケニアが、続いてカナダ、オーストラリアなどが生理用品の消費税を撤廃した。これらの国の女性国会議員比率は20%を超える中、日本は5.6%に留まっている。日本では2019年10月より生活必需品に対して軽減税率が導入されたが、生理用品については現在まで軽減税率の対象となっていない。こうした議論を前進させることこそが、性別に関係なくみんなが活躍できる社会への一歩となるのではないだろうか。
【参照記事】スコットランド生理用品無償化についての法案
【参照記事】スコットランド政府2018年学生向け生理用品無償化
【参照記事】プラン・インターナショナルUKの調査結果
【参照記事】スコットランド議会討論
【参照記事】世界経済フォーラムグローバル・ジェンダー・ギャップレポート