自宅でのアート鑑賞が、孤独を和らげる?高齢者×バーチャルミュージアムの可能性

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2021年時点で、高齢化率が28.9%になった日本(※1)。そんななか、家から出ない、出たとしても最低限の会話しかしない、話し相手がいない、など社会から孤立した状況が続く高齢者も多い。

イギリスの助成団体であるベアリング財団によると、高齢者の6~13%は「しばしば、あるいは常に孤独を感じている」という(※2)。新型コロナウイルス感染症の流行により外出を控える人もいるなか、自宅にいながら孤独感を和らげる方法はないだろうか。

2022年8月、カナダのモントリオール大学の研究者は、オンラインで美術館の展示を鑑賞する「バーチャルミュージアム」に高齢者を参加させる実験を行い、そこでのメンタルヘルスの改善を発表した。

研究者らは、2022年1月から4月までの3か月間、モントリオール市に暮らす106人の高齢者を対象に調査を行った。106人のうち53人は8つのグループに分かれ、モントリオール美術館のバーチャルツアーに週1回参加。残りの53人はツアーに参加せず、調査期間中は他のアート活動に参加することも避けるよう求められた。

そして3か月後、調査参加者の社会的孤立、ウェルビーイングQOL(生活の質)、フレイル(虚弱状態)を評価したところ、ツアーに参加した人は参加していない人と比べて、各項目のスコアが大きく改善したそうだ。かなり極端に区分けされた実験ではあるが、アート体験が、健康的に歳を重ねるための大きな力になる可能性はある。

45分間のバーチャルツアーはガイド付きで、参加者は絵画、彫刻、装飾品などの作品を鑑賞したという。ツアー後には、15分間の気軽な意見交換の場を設け、参加者同士が打ち解け合えるようにした。ツアーの情報量は毎月増え、難易度も上がっていくことや、他の人との交流があったことが、スコアに寄与したものとみられる。

コロナ禍で、多くの人が美術館や博物館に行けない状況が続く中、注目を集めるようになったバーチャルミュージアム。スマートフォンやタブレット、PCを持っていない人もいるという課題はあるものの、なんらかの理由で家から出られない人がオンラインでも自分のQOLを改善でき、この取り組みが高齢化社会への対応という観点から見ても良い効果を発揮するのは、思いがけない発見ではないだろうか。

※1 令和4年版高齢社会白書(全体版)(PDF版) – 内閣府
※2 Tackling Loneliness in Older Age – The Role of the Arts
【参照サイト】Frontiers | Benefits of a 3-month cycle of weekly virtual museum tours in community dwelling older adults: Results of a randomized controlled trial
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