広々とした海に浮かぶ、コンパクトな都市。ゲームの世界ではない。日本の海上建築スタートアップN-ARK(ナーク)社が、2023年6月に事業構想を発表した「Dogen City(同源都市)」だ。
ますます加速していく気候変動に適応できる機能を持つ、自立分散型の海上都市である。
直径1.58km、周囲約4kmの大きさの都市。徒歩1時間ほどでまわれる大きさだ。その規模のまちに、1万人ほどの住民がいる想定だそう。生活圏データを基にした遠隔医療など、高度な医療システムを持っていることから、平時には「海上未病都市」として機能するよう設計された。
住民は、都市レベルのヘルスケアを受けられるだけでなく、海水農業と複合養殖で生まれる食材や独自の料理を楽しめたり、海水温泉を組み合わせたメディカルツーリズムが楽しめたりする。また高度教育も提供し、自然災害発生時には、被災者や気候難民の受け入れもするという。
「機能は都市レベルですが、住みやすさは小さな村のような雰囲気です」
とプレスリリースにもある。
この海上のまちづくりの目的は、気候変動に対してレジリエンスな(困難をしなやかに乗り越え回復できる)海洋経済圏を作ること。プレスリリースにて、N-ARK社はこのように語る。
海洋でのビジネスを持続させ、問題を解決するには、政策、事業、技術の各戦略を一つにまとめ、新しい海洋経済圏を創り出す必要があります。この一体化した戦略がまさに「Dogen City」の事業構想です。私たちはこの計画を、自社だけでなく多様な企業、政府、大学と共に推進し、新たな海洋経済圏、すなわち「NEW OCEAN」を実現していきます。
理想的な都市のあり方を描くだけでなく、実際の経済的インパクト(従来の海運・資源・国防に加え、新技術・ビジネスを活用した発展)を与えることも想定された建築。この都市が現実のものとなる日が、今から楽しみだ。
N-ARK_DogenCity from 田崎有城 on Vimeo.
【参照サイト】Dogen City | N-ARK
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