今月、どの種類のごみを、どれくらい出しただろうか。一か月の買い物とごみ出しを思い返してみても、正確な量を答えられる人はほとんどいないだろう。
日本の一般廃棄物において、1か月を30日として計算すると、1人あたり1か月に約26.7キロのごみを排出しており、最終処分場はあと23.5年分のスペースしか残っていない(※1)。今後は、部分的なリサイクルだけでなく、そもそもごみを出さない努力が欠かせないだろう。
世界でも共通するごみの削減という課題に対し、個人のごみ排出量を厳しく取り締まる試みが欧州で広がっている。
フランスでは、自分が出すごみの量に応じて料金を支払う、pay-as-you-throw(捨てた分だけ払う:以下、PAYT)という仕組みが地方自治体を主体として広がっている。各家庭のごみ箱にマイクロチップを貼り付け、ごみ収集の際にチップがごみの重量を伝達することで料金が決まる仕組みだ。一定量を超えると料金が生じ、ごみが多いほど料金は高くなる。
マイクロチップはスマートフォンのアプリとの連動が可能。どのごみを、どれだけ出したかを知らせてくれるため、収集業者だけでなく市民も自分自身が出しているごみの量を簡単に把握することができる。各家庭から集められたごみの排出量データは、地方自治体がごみの発生量の予測やごみの削減に向けて活用できる。
実際に、ごみの削減効果が見られるという。フランスの環境・エネルギー管理庁(ADEME)によるとPAYTシステムを導入した地方自治体のうちおよそ半分において、一般廃棄物を30~50%削減できた(※2)。
フランス国内では2022年時点で既に640万人がPAYTシステムの対象下にあり、今後も拡大していく見込みだという。2023年のうちに、フランス南西部のモントーバンでも実装予定で、8万人の市民が新たにシステムの対象となるようだ。
PAYTの導入は、2018年頃にはすでに議論されており、今では欧州各地に広がった。EU内ではイタリア、スペイン、デンマークなど20か国で一般廃棄物に対するPAYTシステムが採用され、埋め立てに対する課税が導入されている22か国に次いで多くの地域で採用されている(※3)。
日本でも、ごみの量に応じた課金制度は存在する。全国でごみ収集手数料が有料の自治体は1,154市町村、全体の66.3%にあたる(※4)。その多くは、ごみ袋を有料化することで手数料を徴収しており、ごみ袋は1枚あたり45円が平均的だ(※5)。ただしこの金額は、ごみの量を減らすインセンティブとしては弱いかもしれない。
マイクロチップの事例のように従量制となれば、ごみ出しの額を下げようとして、自分が買う商品やパッケージに対して、それらの処分コストを考えて購入するようになるはず。ごみを減らすという観点では効果的ではないだろうか。
一方、各家庭のごみの量が公に利用可能なデータとして蓄積されることは、プライバシーの侵害だと感じる人もいるだろう。市民が「暮らしを監視されている」と感じないよう、自治体が導入前に丁寧なコミュニケーションをとり、個人情報が保護される仕組みを整えることも欠かせない。
※1 一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和3年度)について|環境省
※2 Observatoire du développement de la tarification incitative au sein des grandes agglomérations – 2ème édition
※3 Economic instruments and separate collection systems — key strategies to increase recycling — European Environment Agency
※4 令和4年度一般廃棄物処理事業実態調査結果(令和3年度実績)|環境省
※5 袋が高いほどごみは減る? 進む自治体指定袋の有料化、成功のカギは:朝日新聞デジタル
【参照サイト】‘Pay-as-you-throw’: The microchips conquering Europe’s waste bins|EURACTIV.com
【参照サイト】1枚120円! 北海道のごみ袋が高いんです|NHK
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