幸せじゃなければ休んでOK。中国の企業が設けた年10日間の「不幸休暇」

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会社のために身を粉にして働くという考え方は、一昔前なら当たり前のように受け止められていたかもしれない。しかし近年は、「働くことで得られる成長は幸せにつながるのか」「会社の成長は個人の暮らしを豊かにするのか」「誰のための経済なのか」という疑問がクローズアップされている。

そんな中、従業員の幸福を考えて、中国の企業があるユニークな取り組みを始めた。中国河南省にあるスーパーマーケット・チェーン「Pangdonglai(パンドンライ)」の創設者ユ・ドンライ氏が、従業員のワークライフバランスを実現するために「不幸休暇」を導入したのだ。

同社の従業員はすでに、1日7時間労働、営業時間外および週末の仕事に関する電話の禁止、旧正月の5日間の追加休暇など仕組みがあるなか勤務している。「不幸休暇」は、既存の30日の有給休暇に追加される予定だ。ユ氏いわく「この休暇を管理職が拒否することは違反」だという(※)

マレーシアのメディア・Saysのインタビューで、ユ氏は次のように語っている。「誰にでも不満を抱える日はあります。私はすべての従業員に自由を与えたいので、仕事に不満を感じるなら出勤する必要はありません」

1995年にPangdonlaiを設立し、現在河南省に30以上の店舗を構えて小売業界で成功を収めているユ氏。彼は従業員の幸福と福祉を優先した福利厚生システムを次々に導入していることで知られている。

また、同社は合理性よりも思いやりを優先した「人々を大切にする」スーパーマーケットとして、地域の人々にも人気がある。彼らが提供するのは商品だけではなく、例えばペット用エリアには水ディスペンサーやうんち袋を設置。トイレにはヘアピンやクシが用意されており、買い物カートには休憩用のシートが付いている。さらに、フレンドリーな従業員がいることもこのスーパーマーケットの大きな魅力だ。

ユ氏の雇用戦略は、中国のSNS上で多くの称賛と支持を得た。彼は従業員に残業をさせてまで、会社を大きくすることなど望んでいない。同社は、従業員の幸福を維持するため、省外に進出する計画はしていないそうだ。従業員が健康であるために、リラックスした生活を送れるペースを重要視している。

暮らしに欠かせない商品を、地域の人々と従業員の健康が維持される形で販売し、地域経済を活性化する。それを実現するため、まずは一番身近なステークホルダーである社員を大切にするPangdonglaiの姿勢に、他の企業が学ぶことは多いのではないだろうか。

‘Overtime is unethical’: Chinese retail tycoon praised online for his attack on exploitative bosses in fiery ‘who gives you the right’ speech
【参照サイト】“Not Happy, Don’t Come To Work” — Boss In China Gives Employees 10 Days ‘Unhappy Leave’
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Edited by Megumi

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