森の恩恵をすべての人に。14都市を囲む、ポーランドの「ソーシャル・フォレスト」とは

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ある研究は、人が自然の中にいると「時間をゆっくりと感じる」ことを示した。また別の研究は、海、川、湖など水を2分間眺めることにより、血圧や心拍数が低下するという結果を導いた。さらに別の研究は、人は自然の中で過ごすと、健康的な食事を選ぶようになるということを明らかにした。

私たちが緑や水の中に身を置くことで受ける恩恵は、想像以上に大きいのかもしれない。

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人が自然の中に身を置ける機会を増やそうと、2024年8月にポーランド気候省が、新たな計画を発表した。それは、同国内の14の都市周辺に「ソーシャル・フォレスト(社会の森)」設立するというものだ。

対象となる都市は、ワルシャワ、クラクフ、グダニスク、ソポト、グディニャ、ヴロツワフ、ウッチ、ポズナン、カトヴィツェ、ビドゴシチ、トルン、シュチェチン、キェルツェ、ビェルスコ=ビャワ。これらの都市には約1,300万人、つまりポーランドの人口の36%が住んでいる。これらの都市周辺に「緑の輪」を形成し、都市住民が簡単にアクセスできる自然環境を提供することが目指されている。

「社会の森」は、通常の森と何が異なるのか。同国政府によると、「社会の森」は「コミュニティの森」でもあり、住民がリクリエーションや社会活動を行いやすい場所にすることを目指すのだと言う。社会の森は住民たちが都市部から簡単にアクセスでき、人々とキノコ狩りやサイクリングを楽しめる場所としても機能する。ポーランド気候省は、地方自治体やNGOとも協力しながら、森の整備を進めている。

もちろん、社会の森は単なる「人工的な」空間ではなく、生態系の一部としての役割を果たすことも期待されている。新しい形の森林保護に関する作業は、2024年10月末までに完了する予定だ。ポーランド政府は2024年1月に、「最も古い10の森林での伐採禁止」を決めており(※)、さまざまな形で森林の保全に取り組んでいる。「社会の森」計画もその一環であると言えるだろう。

都市の近くにある木を切り倒し、森を切り開いて、施設をつくれば、短期的な経済利益は得られるかもしれない。しかし、それは住民にとっての豊かな暮らしを長期的に保障してくれるものだろうか。ポーランドの「社会のために森を残す(増やす)」決断は、きっと将来の住民にとっても喜ばしいものとなるだろう。

Poland protects 10 of its most ancient forests by proclaiming ban on logging
【参照サイト】Social forests will surround 14 largest Polish cities
【参照サイト】Poland to create “community forests” around large cities to protect nature and serve residents
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