マーケティングの役割は、ブランドや商品に対してより良いイメージを作り上げ、ブランドや商品の魅力を人々に届けることだ。しかし、作り上げたイメージが実態とかけ離れてしまったらどうだろうか。たとえば、環境に配慮していると印象づけながら、実態が伴っていないことは「グリーンウォッシング(ウォッシュ)」と呼ばれ、近年では厳しい非難の対象になっている。
こうした、企業が環境活動について誤解を招く主張をするグリーンウォッシングの増加は、持続可能なマーケティングにおける大きな課題となっている。これらを健全に防いでいくために、各国で法規制が強化されており、欧州では2024年1月に採択された「グリーン転換のための消費者強化指令」により、サステナビリティへの主張に関する既存の枠組みが強化された。これには「エコフレンドリー(eco-friendly)」や「生分解性(biodegradable)」といった主張をする際にエビデンスの記載が求められることなどが含まれ、2026年9月27日から適用される。
こうした背景から、企業は最新の法制度やその運用方法などを含めた「グリーンウォッシングを防ぐ方法」を知っておく必要があるだろう。そんななか、気候変動への意識向上、企業や広告業界による責任あるコミュニケーションを支援する国際的なNGO、Creative for Climateが「エージェンシー・リーダーのためのアンチ・グリーンウオッシュガイド」を公表した。
このガイドは、主に企業のマーケティング担当者や広告代理店が誤解を招くマーケティングを避け、正確で透明性のある情報を発信するために作られたものだ。Creative for Climate公式ホームページで閲覧、無料ダウンロードできる。
それでは「グリーンウォッシングを防ぐ方法」とは一体どのようなものだろうか。ガイドの中身を少しのぞいてみよう。
ガイドの中では、グリーンウォッシングの定義(「省略」「歪み」「否定」の3分類)、各国の最新法制度・枠組みを網羅。さらに「グリーンウォッシングを防ぐ方法」チェックリストや、具体的な企業の訴訟ケーススタディなども参照可能だ。
グリーンウォッシングは「曖昧な説明」を使うことで起きやすい。例えば「当社のグリーン電力の“大部分”はオランダで生産されています」という表現は誤解を生みやすい。「当社のグリーン電力の“20パーセント”はオランダで生産されています」といったように、具体的な割合を明記する必要があるだろう。
自然の風景や動物の写真などをむやみに使い、「視覚的イメージ」で消費者を混乱させるのもご法度だ。そうした曖昧なイメージで訴えるのではなく、「この椅子は、100パーセントリサイクルウッドを使用しています」といった具体的な表現に置き換えなければならない。
そのほかにもガイドは「サステナビリティを損なう情報の隠蔽や省略」「カーボンオフセットをカーボンニュートラルと表現すること」など、企業広告のNG例を訴訟事例もまじえて説明している。
重要なのは、このガイドは「法律のがれ」のためにあるのではない、という点だ。消費者の意識の高まりや規制強化をネガティブに捉えるのではなく、企業の説明責任への意識を高め、サステナビリティへの移行を実現できるチャンスとポジティブに捉えることだ。このガイドは、そうした新たな地平を切り開く企業の行動を後押ししてくれるにちがいない。
【参照サイト】Creative for Climate 公式ホームページ
【参照サイト】Free Guide Aims to Help Agencies Eliminate Greenwashing
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Edited by Erika Tomiyama