社会をもっとよくする世界のアイデアマガジン、IDEAS FOR GOODの編集部が選ぶ、今月の「ちょっと心が明るくなる世界のグッドニュース」。前回の記事では、ピカチュウとカビゴンの「睡眠応援大使」就任や赤ちゃんの車内置き去りを防ぐ「スマートカーシート」などのトピックを紹介した。
日々飛び交う悲しいニュースや、不安になる情報、ネガティブな感情ばかりを生む議論に疲れたあなたに。世界では同じくらい良いこともたくさん起こっているという事実に少しのあいだ心を癒し、また明日から動き出そうと思える活力になれば幸いだ。
愛に溢れた世界のグッドニュース5選
01.耳で旅する世界遺産。その土地だけの音の風景を守るプロジェクト
旅先で有名なスポットを訪ねたとき、どんな音を耳にしたか覚えているだろうか。観光客の楽しそうなおしゃべり、スマートフォンやカメラのシャッター音……意外にも日常とそんなに変わらない音を聞いていたな、と感じた人もいるかもしれない。だが本来、その土地には「固有の音」があるものだ。
デジタルオーディオライブラリー「Sonic Heritage」は、そんな「固有の音」に着目したプロジェクトである。これは、世界270ヶ所のユネスコ世界遺産で録音された音を集め、無料で公開するというもの。メキシコの海でクジラが潮を吹く音、チリの街に響くガス販売のドラム、カトマンズの谷に流れる祈りの声。そこには、観光地の喧騒だけではない、場所そのものが持つ特有の響きが保存されている。
イヤホンを耳にいれれば、空間を超えて、その土地の息づかいを感じる旅が始まる。視覚的な美しさだけでなく、音の多様性もまた守るべき遺産であると教えてくれるプロジェクトだ。
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【参照サイト】Hearing the world’s wonders: project shares hundreds of audible gems|Positive News
02.ウィンブルドンの使用済みテニスボールが小さな命を守る
役目を終えたものが、思わぬ場所で新しい物語を紡ぐことがある。例えば、テニスのウィンブルドン大会で使われた約5万住処へと生まれ変わっている。
カヤネズミは農地の開発で住処を失い、絶滅が危惧される小さな哺乳類の生物だ。野生生物保護団体は、古いテニスボールに小さな穴を開けて彼らのために巣を作っている。
というのも、カヤネズミが草を編んで作る巣は、小さな球状でテニスボールにそっくり。新たなマイホームにうってつけというわけだ。コートで選手とともに激しい戦いを切り抜けてきたボールは、そのタフさで雨風や天敵から小さな命を守ってくれるのだろう。
The unusual way Wimbledon tennis balls are helping vulnerable UK harvest mice https://t.co/tauWGPNJI9
— Country Living UK (@countrylivinguk) July 2, 2025
【参照サイト】How Wimbledon Tennis Balls Are Helping Vulnerable UK Harvest Mice|Country Living
03.炎に立ち向かう英雄に、もふもふの相棒を
過酷な状況下で人々の安全を守る消防士たち。ある街では、そんなヒーローたちの職場に、「もふもふの相棒」がいる。
ロンドン消防隊の「ウェルビーイング・ドッグ」チームだ。チームに属する犬たちの任務は、火災や痛ましい事故の現場を経験した消防士たちの心に寄り添うこと。犬たちの穏やかな気質は、隊員たちの緊張を和らげ、トラウマやストレスについて話すきっかけを与えてくれるという。実際に犬たちと触れ合った隊員は、心が落ち着き、ストレスが解消されたと語る。
街のヒーローを支える犬たちは、もふもふの「小さなヒーロー」なのだ。
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【参照サイト】Brigade welcomes six newly trained wellbeing dogs with open paws|London Fire Brigade
04.子どもたちのために、今あえて「固定電話」を
固定電話が家にない、という人も少なくないであろう現代。スマートフォンの普及に逆行するように、オランダでは新しい「固定電話」が生まれている。
「Tin Can」は、電話線ではなくWi-Fiで通話できる子ども向けの固定電話だ。メールやアプリのインストール、ゲームといった機能は一切なく、保護者が登録した相手とだけ話すことができる。電話をブロックする時間帯も設定可能だ。
Tin Canの目的は、純粋な会話の楽しさを体験してもらうこと。スマホの画面をスワイプしてウェブをブラウジングしながら、ゲームをしながら友達と話すのではなく、「ただ」電話し言葉を交わすというレトロな体験は、子どもたちにとって新鮮で尊い時間になるだろう。
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【参照サイト】Tin Can
05.「相手を許すこと」は自分のためになる
なぜ私があの人を許さなければならないのか、なぜ私があの人に心を割かなければいけないのか。許す行為は、自分にひどいことをした「あの人のため」にするものだと感じられるのではないだろうか。
しかし、近年の脳科学研究で「許し」が相手のためでなく自分自身を癒やすための行為だということがわかってきた。研究によれば、人を許そうとすることで、脳の共感や他者への理解を司る部分が活性化し、その出来事がもたらした苦痛や怒りからの回復を早めるという。
ここでの「許し」とは相手の非を帳消しにすることでも、加害行為を容認することでも、相手と社会的なつながりを取り戻そうとすることでもない。むしろ、加害者の視点を想像し、加害者と自分の間にある痛みを伴う結びつきを積極的に手放すことだ。相手のためではなく、「自分のために」許すことで、自分を重く縛る鎖から解き放たれることができるのかもしれない。
【参照サイト】How Forgiveness Changes You and Your Brain, by Emiliana R. Simon-Thomas|DailyGood