壊れたら買い替える、新しいモデルが出たら乗り換える──そんな「大量生産・大量廃棄」を前提とした家電との付き合い方が、少しずつ変わり始めている。
製品を長く使い続け、使い終わったものを再び資源として循環させるサーキュラーエコノミーの重要性が叫ばれる中、利用者の視点では「環境に良い選択」をすることが、時に価格や品質への不安というハードルを伴うこともある。「中古品はすぐに壊れるのではないか」「衛生面は大丈夫なのか」という懸念を払拭し、安心して選べる循環の選択肢を、日本の老舗メーカーが提示した。
タイガー魔法瓶株式会社が、2025年11月10日より公式オンラインストアにて整備済み再生品「タイガー リファービッシュ」の販売を開始したのだ。さまざまな理由でメーカーに戻ってきた製品を、同社の専門技術者がクリーニング・部品交換と修理・動作確認を行い、品質基準を満たす状態に再生して販売する取り組みだ。まずは、ジャー炊飯器「ご泡火(ほうび)炊き」シリーズからスタートしている。
「タイガー リファービッシュ」の最大の特徴は、メーカー自身が責任を持って再生プロセスを手掛ける点にある。回収された製品は、徹底的なクリーニングによって汚れが取り除かれ、機能面・衛生面で基準を満たさない部品はすべて純正の新品部品と交換される。その後、専門技術者による動作確認と品質保証テストをクリアしたものだけが、付属品と共に専用の箱に梱包され、新たな持ち主のもとへ届けられる。

Image via プレスリリース

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タイガー魔法瓶はこれまでも、サーキュラーエコノミーの実現に向けたアクションを積み重ねてきた。2021年からは自社・他社を問わず使用済みのステンレス製ボトルを回収・再資源化する活動を展開。また、製品の製造終了後も補修用性能部品を10年間保有し、修理に対応できるようにすることでリユースを促進している。さらに、廃棄予定の内なべを活用して電気・ガスを使わない野外炊飯器「魔法のかまどごはん」を開発するなど、リデュースやアップサイクルにも着手している。
今回の新たに加わったリファービッシュ事業は、メーカーにとって、製品のライフサイクル全体に責任を持つことにつながる。消費者にとっては、新品か中古かという二択ではなく、「メーカー整備済み」という、環境にも財布にも優しく、かつ信頼できる新たな選択肢が生まれることになるだろう。
国内では、Panasonicの宇都宮工場リファービッシュ工程の拡張をはじめ、ものづくりの現場からリファービッシュの取り組みが強化されつつある。暮らしの中でも循環を体感できる機会が、今後さらに広がっていくことに期待したい。
【参照サイト】タイガー魔法瓶整備済み再生品「タイガー リファービッシュ」の販売を2025年11月10日より開始|タイガー魔法瓶株式会社
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