「脱化石燃料」を議論する初の国際会議。フランスが2050年全廃計画を提示

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「全会一致」であるがゆえに、何も決まらない──国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP)に対し、世界的な不満が募っていた。化石燃料に依存する国々の反対によって、「いつやめるのか」という重要な議論が、長年先送りされ続けてきたからだ。

この停滞を打ち破ろうと、2026年4月、南米コロンビアのサンタマルタに約60カ国が集まった。国連の枠組みとは別に開かれたこの「サンタマルタ会議」は、石炭・石油・ガスからの脱却を目指す国々による、初めての本格的な協議の場となった。

会議を主催したコロンビアのグスタボ・ペトロ大統領は、現在の化石燃料に依存した資本主義のモデルを「自殺的(Suicidal)」と表現し、それが戦争やファシズム、そして人類の絶滅へとつながっていると警告。同会議でこう語ったという。

「死を招く古いエネルギー形態の背後には、強大な慣性が働いている。この資本のあり方は、人類や他の生命を道連れに自殺を図る可能性がある」

こうした緊迫感を持って開催された中、注目を集めたのがフランスが発表した「2050年までの化石燃料完全廃止」に向けたロードマップである。主要な先進国の中で初めて、国の経済全体における化石燃料の使用を「終わらせる」と明確に示したのだ。

  • 2030年まで:石炭の廃止
  • 2045年まで:石油(原油)の廃止
  • 2050年まで:天然ガスの廃止(エネルギー用途)

これらは、フランスがこれまで掲げてきた「2050年カーボンニュートラル」や「年5%の排出削減」といった目標を、国家レベルで具体的な期限と行動に落とし込んだことに特徴がある。

サンタマルタ会議に参加したフランス政府代表のブノワ・ファラコ氏は、フランスが公表したロードマップについて、「これは非常に独創的だ。なぜなら、あらゆる化石燃料エネルギーに明確な期限を設けている国は、世界でもほとんどないからだ」と、サンタマルタで記者団に語ったとLe Mondeが報じている。

政策はすでに各分野に落とし込まれている。運輸部門では、2030年までに新車の3分の2を電気自動車(EV)とする目標を掲げるだけでなく、国内で年間100万台のEVを生産する体制を整備。石油依存の脱却が「輸入依存」に置き換わることを防ぐ狙いがある。

住宅分野でも踏み込んだ施策が進む。新築建物へのガスボイラー設置は今年末までに禁止され、2030年までに年間100万台のヒートポンプ導入を目指す。さらに、住宅における石油ボイラーは2030年までに60%削減、2035年には暖房用途での石油利用を段階的に廃止する計画だ。そしてこうした技術を途上国へも展開して世界全体を導くという。

Image via shutterstock

フランスがこうした野心的な計画を打ち出せた背景には、原子力発電が電力の大部分を占めているという事情がある。2025年時点での電力供給の3分の2は原子力、約4分の1が再エネで賄われている。この特異な構造を活かし、次世代型原子炉(EPR2)の建設や既存炉の寿命延長を進める一方で、太陽光発電容量を2035年までに3倍に増強する計画だ。

英ガーディアン紙が報じた会議のレポートによれば、フランスの特使ベノワ・ファラコは、フランスが今回のロードマップを通じて「電力の超大国(Electro-superpower)」を目指していると強調した。原子力を基盤としつつ再エネを増強し、英国やドイツなどに「グリーンの電子」を売り歩く「欧州の(電気版)サウジアラビア」になるという野心的なビジョンである。

一方で、専門家であるデヴィッド・ホーン氏はこの計画の死角を指摘する。原子力で電気をクリーンにできても、大型トラックや飛行機、プラスチックの原料など、電気への置き換えが難しい分野はまだ多いからだ。こうした難問への具体策が乏しい点に、現場を知るエンジニアからは厳しい声も上がっている。

また、エネルギーの依存先を石油大国から技術大国へ移し替えるだけの“商売”が、果たして地球環境にとっての本質的な変化といえるのか。それは新たな格差や対立を生むだけの筋書きではないかという疑問も残る。

今回の会議には、カナダやノルウェー、豪州といった産油・産鉱国も参加した。彼ら自身が、化石燃料に依存し続けることのリスクを認識し始めている。一方で、日本や米国、中国、インドといった大排出国はこの会議に今回参加していない。特に日本は「招待状を受け取っていない」とし、エネルギー自給率の低さを背景に、各国の事情に配慮した多様な道筋を尊重すべきだという立場に留まっていると朝日新聞が報じている(※2)

しかし、会議に出席した「有志連合」は、すでに世界のGDPの半分以上、生産量の5分の1を占めている。補助金の廃止や広告規制といった具体策が議論される中で、将来的には、化石燃料に依存し続ける国が市場や投資から取り残される可能性も否定できない。

米国とイスラエルによるイラン攻撃は、世界のエネルギー市場を大きく揺るがし、燃料価格の高騰と深刻な供給不足を引き起こした。化石燃料への依存から脱却することは、もはや地球環境を守るためだけの倫理的な選択だけにとどまらない。不安定な国際情勢やエネルギー価格の乱高下から国家と市民の生活を守るための、現実的な「安全保障戦略」へと意味を変えつつあるのだ。

【参照サイト】‘Suicidal’ model of capitalism leading to war and fascism, climate summit told
【参照サイト】International Conference on the Transition Away from Fossil Fuels
【参照サイト】La France dévoile sa feuille de route pour sortir des énergies fossiles
【参照サイト】France’s ‘roadmap’ to exit fossil fuels by 2050
【参照サイト】France unveils plan to ditch all fossil fuels by 2050
【参照サイト】‘Historic breakthrough’: Colombia climate talks end with hopes raised for fossil fuel phaseout
【参照サイト】Électrification : les mesures annoncées par le Gouvernement

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