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少子高齢化

少子高齢化の問題とは

日本において、少子化と高齢化が同時進行することによって、既存の社会システムが機能しなくなる可能性が高いという問題です。

少子高齢化により、高齢者を支える現役世代の比率が低下し、社会保障制度の維持が困難になるほか、特に地方では若者人口の減少により、地方自治体の行政機能が衰退し、公共交通機関や医療、行政サービスの質の低下を招く恐れがあります。また、高齢者がコミュニティから孤立することで、孤独死などの社会問題が深刻化する可能性もあります。

少子高齢化は避けられない人口構造の変化であり、したがって、日本の既存社会システムがこの変化にどのように適応していくかを考える必要があります。短期的な解決策だけでなく、根本的な見直しが求められています。

数字で見る少子高齢化(Facts & Figures)

  • 2023年の日本の総人口は1億2,435万人で、そのうち65歳以上の人口は3,623万人であり、高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)は29.1%に達した(2024 / 内閣府
  • 2023年時点で、65〜74歳の人口は1,615万人、総人口に対する割合は13.0%だった。また、75歳以上の人口は2,008万人、総人口の16.1%を占めた(2024 / 内閣府
  • 65歳以上の人口は継続的に増加しており、1950年には総人口の5%未満、1970年には7%、1994年には14%を超え、2023年には29.1%に到達した(2024 / 内閣府
  • 15〜64歳の人口は1995年に8,716万人でピークを迎え、その後減少を続け、2023年には7,395万人(総人口の59.5%)に減少した(2024 / 内閣府
  • 日本の総人口は、2056年には1億人を下回り、9,965万人に減少すると予測され、2070年には8,700万人にまで減少する見込みである(2024 / 内閣府
  • 総人口が減少する一方で、65歳以上の人口が増加し続けることにより、高齢化率は上昇を続け、2037年には33.3%に達し、日本人の3人に1人が65歳以上になると予測されている(2024 / 内閣府
  • 2043年以降、65歳以上の人口は減少すると予測されているが、高齢化率は引き続き上昇し、2070年には38.7%に達し、国民の2.6人に1人が65歳以上になると見込まれている(2024 / 内閣府
  • 2070年には、75歳以上の人口が25.1%となり、約4人に1人が75歳以上になると予測されている(2024 / 内閣府
  • 1950年には、65歳以上の1人に対して15〜64歳の現役世代が12.1人だったが、2023年にはその比率は2.0人にまで減少した。2070年には、65歳以上の1人に対して現役世代が1.3人になると予想されている(2024 / 内閣府
  • 2022年の平均寿命は、男性が81.05歳、女性が87.09歳だったが、2070年には男性85.89歳、女性91.94歳になると予測されている(2024 / 内閣府

少子高齢化の現状(Current Situation)

高齢化の進行

日本において、65歳以上の人口は上昇を続け、1950年には総人口の5%未満、1970年には7%に達し、1994年には14%を超え、2023年には29.1%に達しました。(内閣府

日本の高齢化は、他国に比べて非常に急速に進行している点が特徴的です。高齢人口の割合が7%から14%に到達するまでの期間を比較すると、フランスは115年、スウェーデンは85年、ドイツは40年、英国は47年かかっています。一方、日本は1970年に7%に達し、14%に到達したのは1994年で、わずか24年でこの変化が起こりました。(内閣府

少子化の進行

2023年の日本の出生数は72万7,277人で、前年の77万759人と比べて4万3,482人減少しました。出生率については人口1,000人あたり6.0となり、前年の6.3から低下しました。

45歳以上の女性の出生数は前年より増加しましたが、他の全ての年齢層では減少しました。また、15〜49歳の女性の出生率を合計した、合計特殊出生率は1.20となり、前年の1.26から減少し、過去最低となりました。この結果、子どもの出生数は着実に減り続けています。

高齢者1人を支える現役世代人数の減少

1950年には、65歳以上の高齢者1人に対して現役世代(15~64歳)が12.1人いましたが、2023年にはその比率が2.0人に減少しました。さらに、2070年には、65歳以上の高齢者1人に対して現役世代が1.3人になると予想されています。(内閣府

少子高齢化の影響(Impacts)

労働力不足と経済規模の縮小

生産年齢人口が減少することで、既存の社会生活を維持するために必要な労働力が不足し、問題が深刻化します。技術革新や高齢者、女性、外国人労働者を「活用」するための取り組みが進められているものの、これらの対応策だけでは根本的な解決には至っていません。

経済活動は労働力人口に依存しているため、労働力が減少することにより経済活動の停滞が予測されています。もし少子高齢化がこのまま進行すると、働き手の数よりも支えられる人々の数が増え、経済活動に支障をきたす恐れがあります。

さらに、急速な人口減少によって国内市場が縮小すると、経済規模も縮小し、イノベーションが生まれにくくなり、成長力が低下します。こうした状況では、労働力不足を解消するために長時間労働が強化され、結果として少子化がさらに進むという悪循環が生じる恐れがあります。

社会保障の維持が困難に

高齢者を支える現役世代の比率が低下することにより、年金や医療、介護にかかる費用が増大することが予測されます。これにより、現役世代が負担する社会保険料や税金が増加し、給付を受ける高齢者との間で「給付と負担のアンバランス」が拡大する恐れがあります。特に、現役世代の負担が過重になることで、将来的な社会保障制度の持続可能性が危ぶまれ、生活の質を維持するための財源確保が難しくなる可能性があります。

地方の過疎化

若者の都市部への流出が続くことで、地方の人口減少と高齢化が一層進行すると予測されています。特に、働き手が減少する地方では、公共交通機関や医療施設、行政サービスの縮小が進み、地域住民が必要とするサービスが十分に提供されなくなります。その結果、生活の質が低下し、地域全体が住みにくくなることが懸念されています。

さらに、地方自治体においては、人口減少と財政難が影響し、行政機能を従来通りに継続することが困難になる自治体が増加する恐れがあります。実際、地方圏を中心に、4分の1以上の自治体が、必要な行政サービスを提供し続けるために十分な職員や資源を確保できなくなり、地域の行政機能が縮小、統合される事態が予想されています。

高齢者の孤独・社会的孤立

核家族化や単身世帯の増加が進む中で、高齢者の孤独死の増加やメンタルヘルスの悪化が深刻な問題となっています。特に、介護を担う現役世代が減少する中で、高齢者自身がパートナーなどの介護を行う「老老介護」が問題視されています。

「老老介護」とは、65歳以上の高齢者が同じく高齢の家族を介護する状況を指し、これによる介護ストレスや負担が深刻な問題となっています。介護者本人が加齢に伴い身体的に衰える中で介護を行う必要があるため、精神的・身体的負担が一層増大してしまいます。さらに、高齢者世帯の夫婦がともに認知症を患うと、判断力の低下により周囲に助けを求めることや、公的サービスを利用することが困難になります。

シニアカップルがベンチに腰掛けている

Photo by Sven Mieke on Unsplash

家族や地域とのつながりが希薄になり、高齢者のメンタルヘルスが悪化すると、外出を避けるようになる傾向があり、その結果、社会との孤立が一層深まることになります。現在、高齢者の孤独死が増加しており、万が一の事態が発生しても誰にも気づいてもらえないという状況が広がっています。

2024年前半には、全国の警察が遺体の検視や調査を行った10万人以上のうち、3万7,227人が自宅で発見された一人暮らしの高齢者でした。この中で最も多かったのは85歳以上で7,498人、次いで75歳から79歳が5,920人、70歳から74歳が5,635人と、65歳以上の高齢者が全体の7割以上を占めています。

これらの問題に対処するためには、高齢者が社会や地域コミュニティとのつながりを維持するための仕組みを構築することが急務です。

少子高齢化の背景(Background)

戦後の人口転換と出生率の推移

第二次世界大戦後、日本は急速な経済成長を遂げ、国民の所得水準が向上しました。また、国民皆保険や皆年金などの社会保障制度が整備され、医療技術も飛躍的に進歩しました。これにより、生活環境が大きく改善され、平均寿命が延び、死亡率が低下しました。一方で、出生率は徐々に低下し、人口構造は「多産少死」から「少産少死」へと変わり、1975年頃までは合計特殊出生率が人口維持に必要な水準である2.1前後を維持していました。

しかし、1971〜74年に発生した「第二次ベビーブーム」の後、第一次オイルショックが起こり、経済が混乱しました。また、人口増加に対する懸念から、「静止人口(人口の安定化)」が推進されるようになりました。これらの影響を受けてか、出生数は減少し始め、1975年には合計特殊出生率が1.91に低下しました。1980年代初めには、一時的に時的に増加傾向になりましたが、その後は再び出生率が減少し続け、1980年代半ば以降は2.1を大きく下回るようになりました。

結婚・出産に関わる年齢や意識の変遷

少子化の進行には、結婚・出産に関する年齢や意識の変化が影響していると考えられます。1970年代から、男女ともに結婚が多い年齢層で未婚率が上昇し、この傾向は幅広い年齢層に広がっています。この変化に伴い、出生率の低下が進行していると見られています。

1985年の平均初婚年齢は、女性が25.5歳、男性が28.2歳でしたが、2022年にはそれぞれ29.7歳、31.1歳に上昇しました。また、1950年および1970年には、20代半ばで出産率のピークを迎えていましたが、時代が進むにつれ、そのピークが後ろにずれ、30代での出産が増加しました。この変化により、出生率の「山」の高さが低くなり、全体的な出生率の低下と出産年齢の上昇が見られます。

そして、第1子を出産する際の母親の平均年齢は、1985年には26.7歳だったのが、2011年に30歳を超え、2022年には30.9歳となっています。(こども家庭庁

1992年の調査以降、「いずれ結婚するつもり」と考えている未婚者(18歳〜34歳)の割合は、9割程度で安定して推移していましたが、2021年の調査では未婚男性が81.4%、未婚女性が84.3%となりました。25〜34歳の未婚理由は、男女ともに「適当な相手にめぐりあわない」が最多で、次いで「自由さや気楽さを失いたくない」や「まだ結婚の必要性を感じない」といった理由が挙げられました。また、「今は趣味や娯楽を楽しみたいから」という理由が男女ともに増加しています。相手を探すための行動としては、男女ともに「特に何も行動を起こしていない」が最も高くなっています。

経済的要因と子育てコストの上昇

結婚しない人が増えている最大の理由の一つは、経済的な問題です。特に、収入の低さや雇用の不安定さが、結婚をためらわせる主な要因となっています。調査によると、20〜30代の男女の約4割が「結婚生活を送るための経済力がない・仕事が不安定だから」と回答しています。また、子育てにかかるコストの増大も、大きな障壁となっています。
NHK

妻の年齢が35歳未満の夫婦を対象にした調査では、約77%が「子育てや教育にかかる費用が高すぎる」と回答しており、理想の子どもの数を持たない理由として挙げています。日本では家庭が教育費の多くを負担しており、文部科学省の調査によれば、2023年に公立小学校の学習費は33万6,265円、公立中学校は54万2,475円です。義務教育でも、給食費や通学費、学用品費などの支出が多いため、経済的な理由で子どもを持つことを諦める人が増えています。

固定的な性別役割

仕事と子育ての両立の難しさや、出産・育児によるキャリア中断による「機会費用(失うと予想される収入額)」の高さが、子どもを持つことへの躊躇を生んでいます。

日本では依然として「男は仕事、女は家事・育児」という固定的な性別役割分担の意識が根強く、女性に育児や家事の負担が集中しています。調査によると、20~30代の女性の約39%が「仕事・家事・育児・介護を背負うことになるから」という理由で結婚をためらっており、男性(23%)と比べて高い割合となっています。(NHK

そもそも、家事や育児が女性の役割であるという前提に基づいた社会システムが存在しています。この前提のもと、保育所や企業のサポートが『女性が家事・育児と仕事を両立させるために』提供されること自体が、逆説的に『女性が家事や育児を担うべきだ』という規範を強化している現状があります。

死亡率の低下と平均寿命の伸長

日本の高齢化が進む背景には、死亡率の低下と平均寿命の延びがあります。戦後の生活環境や栄養状態の改善、さらには医療技術の向上が要因となり、死亡率は大きく減少しました。1947年の若年層死亡率は14.6%でしたが、1979年には6.0%にまで減少しました。

これらの変化により、平均寿命は大幅に延び、1947年には男性50.06歳、女性53.96歳だったのが、2002年には男性78.32歳、女性85.23歳となりました。今後も平均寿命は引き続き延びると予測されており、高齢化がさらに進むことが予想されています。

少子高齢化時代に求められる社会の取り組み(Action)

一般的に、少子高齢化は労働人口の減少や社会保障負担の増大を引き起こすため、性急に解決しなければならない深刻な「問題」とされています。しかし、「人口減少=絶対的な悪」という前提自体を改めて考え直す余地はあります。

日本は長い間、資本主義のもと、経済成長を前提とした社会システムを構築してきました。しかし、そもそも成長主義がこの人口構造の変化に適応できないことが、さまざまな課題の要因となっています。

そのため、ほぼ確実に訪れる人口減少をただの悪として捉えるだけではなく、それに伴う変化を社会構造の見直しの機会と捉え、社会全体で人々が支え合う仕組みを根本的に見直し、再構築することが求められます。

例えば、「脱成長(デ・グロース)」の視点から見ると、経済成長を前提としない社会のあり方を模索することが可能です。脱成長とは、単なる経済縮小ではなく、持続可能な社会の実現を目指す考え方です。

少子高齢化に伴う社会システムの見直しは、過密問題の解消や資源・エネルギーの消費減少といった、環境負荷の低減や循環型経済の促進につながる可能性もあります。高齢化を単なる「負担」と捉えるのではなく、地域コミュニティの強化や自治体間での連携を深めることで、高齢者の身体的・精神的健康を支え合う仕組みを構築し、高齢者が多様な形で社会と関わり続けられる環境を整えることが可能となります。

また、労働力不足の議論において、外国人労働者の受け入れがよく取り上げられています。重要なのは、彼らを日本の問題を埋めるための安価な労働力として捉えるのではなく、彼らが日本で心身ともに健やかに生活し、地域やコミュニティと積極的に関わることができる環境づくりでしょう。これにより、日本の労働力不足の解決にとどまらず、外国人労働者が人間としての権利を尊重され、双方にとって利益のある長期的な関係を築くことが可能となるのではないでしょうか。

さらに、少子化の要因として、仕事と育児の両立の困難さが指摘されています。これに対応するためには、企業による男女双方への育児支援の強化や、ジェンダーのダブルスタンダード(同じ行動をとった時に男性は許されるのに女性は批判される、またはその逆)などを根本的に見直す必要があります。こうした取り組みを通じて、誰もが育児中でも安心して働き続けられる社会を実現することが求められます。

したがって、不可避な少子高齢化を単なる「解決すべき問題」と捉えるだけではなく、それに伴う変化を社会の再構築の契機として、より豊かで持続可能な社会を目指すことも重要です。

少子高齢化に関するアイデア(IDEAS FOR GOOD)

IDEAS FOR GOODでは、最先端のテクノロジーやユニークなアイデアで少子高齢化の課題に取り組む企業やプロジェクトを紹介しています。

少子高齢化に関連する記事の一覧

【参照サイト】文部科学省「令和5年度子供の学習費調査の結果を公表します 」
【参照サイト】内閣府「孤独・孤立対策について」
【参照サイト】内閣府「第2章 人口・経済・地域社会の将来像」
【参照サイト】厚生労働省「我が国の人口について」
【参照サイト】内閣府「第3章 人口・経済・地域社会をめぐる現状と課題」
【参照サイト】NHK「1からわかる!少子化問題(1)このままだと日本はどうなるの?」
【参照サイト】令和6年版 高齢社会白書(全文)
【参照サイト】内閣府「第1節 高齢化・人口減少の意味」
【参照サイト】厚生労働省「1 令和5年の結果の要約 (1) 出生数は減少」
【参照サイト】厚生労働省「平成23年人口動態統計月報年計(概数)の概況」
【参照サイト】政府統計「年次別にみた出生数・出生率(人口千対)・出生性比及び合計特殊出生率 」
【参照サイト】東京経済新聞「高齢者『孤独死』年6.8万人 警察庁データで初めて推計」
【参照サイト】NHK「自宅で死後1か月以上たって発見 半年で4000人近くに 警察庁」
【参照サイト】堀田和司 et al.「老老介護の現状と主介護者の介護負担感に関連する要因」『日本プライマリ・ケア連合学会誌』33, no 3 (2010): 256-265.
【参照サイト】阿藤誠「未婚化・晩婚化の進展」『家族社会学研究』No. 6 (1994): 5-7.
【参照サイト】こども家庭庁「結婚に関する現状と課題について」

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