最寄りのスーパーマーケットまで、車で30分。買い物をして家に帰ると、これだけでも1時間半ほどかかってしまう──そんな生活は、少子高齢化が急速に進む地域で日常となりつつある。人口が減るにつれて近所にあった商店は店じまいに至っているのだ。
一方で、コンビニ大手のローソンは、都市部での出店数が頭打ちとなっている状況も背景に、過疎地域での出店を強化している。2024年10月、地区内唯一のスーパーマーケットが閉店してしまった和歌山県田辺市の龍神村地区では、その跡地にローソンが店舗を開設。同地区で初めてのコンビニ出店となった。
つまりコンビニは地域の暮らしを支える新たな役割を担いつつあるのだろう。その広い物流網を活かし、災害時にも地域を支える存在としても重要視されている。しかし、著しく高齢化の進む地域で、長く事業を継続することはできるのだろうか。特に、働き手の不足は大きな課題の一つとなりそうだ。
このように役割が多様化するコンビニで、新たな働き手として注目されているのが「アバター」である。ローソンでは2025年1月から、海外在住の日本人をパートタイム勤務で採用し、深夜や早朝の接客担当とする取り組みが始まった。初の試みでは時差を活かし、スウェーデン在住の日本人が採用され、スクリーン上のアバターとしてレジ横に立ち、無人レジの使い方などを説明してくれるという。
同社によるアバターによるリモート勤務は、国内在住者を対象に、2022年11月から導入が進められてきた。今後さらに時差が大きい北米・南米での採用も検討しているとのことだ。

2024年9月6日に大阪・梅田のローソンJAM BASE店で採用されたアバター店員|Image via プレスリリース
こうしてリモートで接客をする人は「アバターワーカー/アバターオペレーター」と呼ばれ、場所や年齢、障害、ジェンダーを問わない働き方として注目されている。例えば、障害により外出が難しい状況にある人も、飲食店や書店、テーマパークなどで勤務することが可能になるという。
今回ローソンのアバターオペレーターは、深夜や早朝の営業を助ける存在として採用された。脱24時間営業の動きもある中で、アバター活用の可能性を模索するならば、彼らが過疎地域のコンビニの働き手となって社会インフラを支える未来も考えられるだろう。
地域の商店街の役割を奪って画一的なマーケットが台頭することには批判もあるが、記事冒頭で紹介したように地元のスーパーが閉店しつつある今、全国に物流網を持つコンビニがアバター店員と共に高齢者の生活を支えるシナリオも見えてくるだろう。
その未来を生きるのは、私たち自身だ。自分自身が高齢者となったとき、どんな場所で、どのように暮らしていたいか──そんな視点で、地域の社会インフラとテクノロジーのバランスとも向き合っていきたい。
【参照サイト】Short on workers, Japan retailer hires remote cashiers living overseas | South China Morning Post
【参照サイト】ローソン、海外からアバター接客 深夜の店舗業務軽減|日本経済新聞
【参照サイト】スウェーデン在住の日本人採用 8時間時差活用深夜担当 首都圏·関西地域で勤務|Maeil Business News
【参照サイト】AVITAとローソン、アバターと生成AIを活用した初の「体験型フラッグシップ店舗」を大阪にオープン|AVITA株式会社
【参照サイト】アバターワーカー220人突破!アバター事業を推進するAVITAがアバターワーカーの一般公募を開始|AVITA株式会社
【参照サイト】震災でコンビニが増えた?|NHK
【参照サイト】「必要な存在であり続ける」ローソンが取り組む災害対策 震災を経て『店舗向けの災害対応マニュアル』『厨房設備を導入』『物流網を生かした被災地支援』|毎日放送
【参照サイト】被災時「コンビニ店主の奮闘」どこまで インフラの使命|朝日新聞
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