カード決済するたびに、その消費のエシカル度が分かるモバイルアプリ

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ソーシャルメディアの普及により個人の発信力が高まる中、私たち消費者は企業に対してかつてないほどの力を持ちつつある。4月上旬に起こったユナイテッド航空による乗客引き降ろし事件では、ショッキングな動画が瞬く間に世界中に広がり、同社は一瞬にして消費者の信頼を失い、株価も一時急落したことが記憶に新しい。

社会に対してネガティブなインパクトをもたらす企業に対し、消費者が団結して「No」を出し、「不買」という権利を行使する。この消費者の力は、企業の行動を変えさせる大きな力を持っている。最近では「エシカル消費」という言葉も登場するなど消費者自身もより企業の振る舞いに敏感になってきており、「責任ある消費者」として社会に好影響を与えている企業から製品やサービスを購入したいという人が増えている。

しかし、エシカルな消費を実践しようと思ったときに立ちはだかる問題は、企業の日々の振る舞いの全てがユナイテッド航空の事件のように表沙汰となり、常に消費者の目にさらされているというわけではない点だ。

実際のところ、私たち消費者は自分が信頼しているブランドや企業がその裏で日々どのような行動をとっており、社会に対してどのような影響を及ぼしているのかについて、企業自身がCSRレポートなどで発信している情報を除けば、ほとんど知るすべがない。もしかすると、知らず知らずのうちに社会に悪影響をもたらしている企業に自分の財布からお金を渡してしまっている可能性もあるのだ。

このような企業活動の不透明性をなくし、社会に対してポジティブなインパクトを生み出している企業の商品やサービスを購入したい消費者の「正しい」選択を支援するために、ユニークな金融サービスを提供している企業がある。それが、米国カルフォルニアのロサンゼルスに拠点を置くスタートアップ金融機関「Aspiration」だ。

「Do Well, Do Good」をビジョンに掲げるAspirationは、富裕層向けサービスをメインとするウォール・ストリートの金融機関とは異なり、全ての人々に自分の価値観に沿った投資機会や金融サービスへのアクセスを提供することを目指している。

社会や環境に配慮した持続可能な事業運営を行っている企業に対し、100米ドルという小額からアプリで投資を行えるサステナブル投資ファンド「Redwood Fund」や、月額利用料やATM手数料も一切かからない預金サービス「Summit Account」など、従来の金融機関とは一線を画したユニークなサービスを提供している。

同社の一番の特徴は、ファンドの運用手数料に対して”Pay As You Wish”(ユーザーが好きなだけ支払う)という手法をとっていることだ。ユーザーはファンドに支払う手数料をゼロに設定することもできる。一律の手数料を課すのではなく、ユーザーが価値を感じた分だけ手数料を支払う仕組みにすることで、社会に対してポジティブな変化をもたらす投資へ参加する機会のハードルを下げるのが狙いだ。

しかし、同社は手数料のうち10%を貧困層へのマイクロ融資チャリティに寄付するという仕組みをとっており、それをアプリ上の手数料入力画面でユーザーにも明示することで、善意ある個人投資家に手数料を増やすインセンティブを設けている。このあたりの設計はさすがだ。実際にユーザーの85%がしっかりと手数料を支払っているという。

このAspirationが新たに始めたのは、同社の預金サービス「Summit Account」の利用者がデビットカードで決済をすると、モバイルアプリを通じて自分がお金を支払った企業が社会や環境に対してどのような影響を与えているのかをスコア形式で見られるというサービスだ。

「Aspiration Impact Measurement(AIM)」と名付けられた評価メソッドは、数千以上のデータを基にしてあらゆる企業を「People」(人々)と「Planet」(環境)という2つの軸から評価し、スコアリングしている。「People」はその企業の従業員の多様性やペイメントギャップ、地域社会に対する取り組みなどが評価対象となっており、「Planet」はその企業の環境・サステナビリティへの取り組みが評価対象となっている。

消費者は、小売店やレストランでデビットカードをスワイプするたびに支払先企業のAIMスコアがモバイルアプリに蓄積されていき、自身の消費活動が社会に対して好影響をもたらしているのかどうか、悪い振る舞いを行っている企業に加担していないかどうかを確認することができる。

現状ではユーザーはスコアを見ることしかできないため、購買した後に自身の選択が正しかったのかどうかをチェックするだけにとどまるが、将来的には購入前に企業のAIMスコアを確認できる機能も追加される予定だという。

既に投資の世界では、企業の社会・環境に対するパフォーマンスは長期的な投資リターンやリスクに関わる重要なファクターとして認識されているため、機関投資家に対しては様々な分析に基づく詳細なスコアリングデータが提供されており、日々の投資意思決定に活用されている。

Aspirationは同様の仕組みを消費者の購買意思決定の支援にも用いることで、消費者が持つ強大な力を、企業の振る舞いをポジティブな方向へと変革するドライバーにしようとしている。

CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)という言葉に代表されるように、私たちは企業に対して責任ある行動を求めているが、企業の活動に資金を提供しているのは「投資家」と「消費者」という2つのステークホルダーであることを考えれば、実は企業の行動を変えるうえで本当に重要なのは、投資家としての私たちであり、消費者としての私たちの行動なのかもしれない。

自分の預金がどのように運用されているかを知り、より社会に好影響を与える方法で運用をしてくれる金融機関にお金を預けること。日々の生活の中では責任ある消費者として正しい振る舞いをしている企業の商品やサービスを購入すること。こうした積み重ねによって「正しいことをすればするほど得をするという市場環境」を作っていけば、自然と企業の行動も変わっていくはずだ。

Aspirationは、そんな私たちの投資行動や消費行動を支援してくれるソーシャルグッドな金融サービスだ。

【参照サイト】Aspiration
【参照サイト】Are Your Buying Habits Remotely Ethical? This Bank Account Will Tell You

(※写真提供:Aspiration