カセットやCDプレーヤーと同様に、ひと昔前は一世を風靡したのにも関わらず、今となっては見かけることがほとんど無くなったMP3プレーヤー。ローテクノロジーと称されるまでに人気を失ったこのMP3プレーヤーを再利用し、新たなイノベーションを起こしている団体がある。
ドイツに本拠を置く社会的企業のURIDUがそれだ。URIDUは、アフリカの途上国で暮らす文字が読めない女性や一般的な情報へのアクセスがない女性をサポートするため、健康や仕事、暴力などに関する情報を提供する「URIDU MP3プレーヤー」を開発した。
このURIDU MP3プレーヤーには、健康、栄養、家族計画、育児、仕事の安全性など、アフリカに暮らす女性の生活向上に向けた様々なトピックに関する400以上の質問と回答が収録されている。これらの質問と回答は100ヶ国以上に住む10万人ものボランティアの人々の手によってクラウドソーシング形式でローカル言語に翻訳され、翻訳後はネイティブスピーカーによって音声が録音されている。
また、電気が通っていない遠隔地に住むすべての人々も好きなときにどこでも使うことができるように、充電には太陽光発電式を採用している。
世界保健機関(WHO)によると、より良い栄養や衛生、予防接種、健康教育(女性が大きな責任を負うすべての分野)などの環境が整えば、開発途上国で起こる病気の約4分の3は予防が可能だという。このURIDU MP3プレーヤーを普及すれば、これまで文字や読めずに情報にアクセスできなかった人々は新たな知識を手にし、これらの病気の予防に大きく貢献する可能性がある。
タンザニアでは国民健康福祉省との調整のもと、この「URIDU MP3プレーヤー」の提供をすでに実施しており、徐々に東アフリカの国々へもこのプロジェクトが広がりはじめている。現在の対応言語はアラビア語、タガログ語、インドネシア語、Kiswahili、Tieng Vetで、地方のNGOや協同組合などと協力して、農村で暮らす女性にURIDU MP3プレーヤーを無料で配布している。
ちなみにURIDU MP3プレーヤー1台にかかるコストは、スターバックスのカフェラテ2杯分の価格よりも低いという。過去に成功したテクノロジーを新しい用途に再活用し、ローコストでのサービス提供を実現しているという点においてもこのプロジェクトへの注目度は高いといえる。
忘れ去られたはずのオーディオ機器が、大きな使命を持って生まれ変わる。このURIDU MP3プレーヤーが、発展途上国の女性たちを支援することにより、彼女たちの生活環境が少しでもより良い方向へ向かうことを願わずにはいられない。
【参照サイト】Uridu
【参照サイト】MP3 IS NOT DEAD – IT IS SAVING LIVES IN AFRICA
(※画像提供:Uridu)