楽天「Rakuten Social Accelerator」、ビジネスアセットをフル活用で社会起業家を支援

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大企業に所属していると、自分が何のために仕事をしているのか分からなくなることがある。自分のスキルは社会の役に立つのか、「本当にやりたいこと」に今の自分は近づいているのか。一方で、社会起業家はアイデアを持って起業したものの、必要なスキルを持つ人もお金も足りない、何から始めればいいのか分からないという現状がある。

これらの問題に着目して、解決に向け取り組んでいる企業が、楽天株式会社(以下「楽天」)だ。楽天は2018年7月から2019年1月までの半年間、社会起業家と協働して社会課題の解決を目指すプログラム「Rakuten Social Accelerator(以下RSA)」を実施した。

Rakuten Social Accelerator

Rakuten Social Accelerator

楽天は社会課題の解決を目指す6つの社会的企業・NPO団体に対し、期間中5,390時間に及ぶ楽天社員によるサポートや活動資金の提供、楽天グループの各事業による支援など、幅広いサポートを行った。サステナビリティへの取り組みのひとつとして、楽天の強みであるテクノロジーを用いてソーシャルイノベーションを加速させることが本プログラムの目的だ。

IDEAS FOR GOOD編集部は、6団体と約80名の楽天有志社員による成果発表会「Rakuten Social Accelerator Demo Day」に参加した。今回は、RSAに採択された6団体と楽天との協働で生まれたそれぞれの成果について見ていこう。

1.おてつたび「あふれる地域の魅力を知ってほしい」

1番目の登壇企業である「おてつたび」は、少子化や若者流出といった課題がある地域に対して、お手伝いを通じて地域の魅力を知る旅を提供する株式会社である。おてつたびの狙いはお手伝いをした人と地域に住んでいる人との特別な関係性作りや、地域外の人にしか気づけないような地域の魅力を顕在化させること、そしてファンとして地域に関わる人を増やしていくことだ。

おてつたびCEO 永岡氏

おてつたびCEO 永岡氏

実はおてつたびの創業はRSAが始まった2018年7月だ。代表の永岡氏によると、期間中は楽天社員と共に立ち上げ期に必要なウェブサイトの見直し、契約書や利用規約などの作成、ユーザー向けの説明会などのベースづくりに励んだという。また、楽天のリソースを利用して数多くの自治体との協業も果たした。

楽天社員も含めて「仲間」となって走り抜けた創業の半年を、永岡氏は「終わってしまったことが寂しくて仕方がない」と振り返る。2019年はRSAが引き金となって始まったさまざまな協業を通じて飛躍の年にしていきたいという。また永岡氏は、宿泊者の声を発信して地域の宿を紹介するメディアを作るためにクラウドファンディングにも挑んでいる。離れていても特別な思い入れのある地域を増やす、というおてつたびによる挑戦は、始まったばかりだ。

2.放課後NPOアフタースクール「大人が楽しければ子どもはもっと楽しい」

2番目の登壇団体は共働き家庭の増加や子どもの自己肯定感の低下に着目した「放課後NPOアフタースクール」。子どもを狙った犯罪が起こりやすい時間帯である放課後を、子どもにとってのびやかで自由な時間にすることを目標に掲げている。「社会で子どもを育てること」をコンセプトに、子どもたちの多様な興味関心に対応する企業や地域の人材資源を提供しているのだ。自分自身でやりたいことを決める、やらないことを決められるという体験が、子どもたちの自己肯定感を高める。

RSAでは楽天社員が実際に現場に赴き、プロジェクションマッピング等の子ども主体のイベントのサポートや、企業参加を促す企業アンケート等を行った。

放課後NPO事務局 栗林氏

放課後NPOアフタースクール事務局 栗林氏

放課後NPOアフタースクール栗林氏によると、楽天の社員が子ども主体のプロジェクトに関わったことで、大人が真剣に面白がっている場面を子どもが生で目の当たりにできたことが大きかったという。大人が楽しんでいる背中を見ていた子どもはきっと、親の帰りを待っていたことも忘れて夢中になれる何かを見つけるだろう。そして大人になるのが楽しみになっていく。大人が楽しければ子どもはもっと楽しい。

3.AlonAlon「企業と知的障がい者をWinWinに」

知的障がい者の平均賃金は月額約1万5千円であることはどのくらい知られているだろうか。企業には障がい者の法定雇用率が定められているが、半分以上の企業が法定雇用率の要件を満たしておらずペナルティを払っている現状があり、障がい者の社会的自立の道は厳しい。そこで障がい者が企業に就職して社会的自立を果たせる方法を探し出したのが、3番目の登壇団体であるNPO「AlonAlon」だ。

AlonAlon理事長 那部氏

AlonAlon理事長 那部氏

AlonAlon理事長の那部氏は、会社移転時に企業が送りあう胡蝶蘭に注目した。AlonAlonは胡蝶蘭農園で知的障がい者が働ける環境を作り、企業はAlonAlonの子会社が事業を行う貸農園から胡蝶蘭農園を借りる。これにより企業は借りた胡蝶蘭農園で働く知的障がい者も雇用することになる。こうして企業は従来払っていたペナルティも企業に送る祝い花代も払う必要がなく、知的障がい者の就労支援という社会貢献も実現できるのだ。まさにWinWinの構造を日本各地に広げていくために、AlonAlon理事長の那部氏はRSAを利用した。

RSAからは楽天市場の提供やサイトの整備を受け、胡蝶蘭の売上150%増、就職者も出すことができた。那部氏のスーパーサラリーマン時代に培ったビジネスの力を社会企業としてのビジネスモデルに転換していることが革新的だ。那部氏は、今後も資本増強をしながら100年続く事業にしていくと話した。

4.G-Experience「多様な生き方の入り口に、ハイブリッドスクーリングを」

現在、不登校の中学生は約10万人おり、さらに行動には出さないが学校に行きたくないと思っている不登校傾向の中学生は約33万人にも上るという。4番目に登壇したのは大人の社会では働く場所の自由やパラレルワークが叫ばれる一方で、子どもは自分に合わない学校に通い続ける必要があるのか、と疑問を問いかけるG-Experienceプログラムディレクターの松浦氏だ。

G-Experience プログラムディレクター 松浦氏

「G-Experience」は、学校以外に学びの場を設け、学校外の興味関心も広げていくという「ハイブリッドスクーリング」を提案する。旅やプログラミング、朝市で出店する商品の開発といった、子ども自身が興味のある学びを選ぶことができるという「学校内に閉じない取り組み」だ。

RSAではハイブリッドスクーリングの認知拡大にむけたワークショップなどの活動や子どもの親に向けたアンケートの作成などを行った。今後はオンラインサロンを通じてハイブリッドスクーリングを実践するコミュニティを広げていく。多様な生き方に寛容になりつつある現代に合った子どもの学びを考え直す時代が来たのかもしれない。

5.日本食べる通信リーグ「ふるさとを見つけるためのパスポート」

日本の農業従事者の減少が顕著だ。5番目に登壇したのは、地方の一次産業従事者が疲弊していることに警鐘を鳴らしている「日本食べる通信リーグ」だ。食べ物がどこから来て、誰に作られたのかが見えづらいことが理由で、消費者が食という豊かさに無関心になっている。代表の高橋氏は、都市に住む人と地方に住む人の想いをつなげることで新たなコミュニティを作りたいと起業を決意した。

日本食べる通信リーグ代表理事 高橋氏

日本食べる通信リーグ代表理事 高橋氏

「都市と地方をかきまぜる」施策として、日本食べる通信リーグは、一次産業従事者の想いを伝える情報誌と、その食品のパッケージを全国に届ける。今回、スケールを拡大していきたい一心でRSAに応募したという。RSAでは日本食べる通信リーグの食材を使うレストランにステッカーを貼ったり、地域の豊かさを伝える動画のコンテストを行うなど食べる通信の購読者数増加に向けた施策に取り組んだ。

東日本大震災で、農家や漁師を中心とした被災者のために集まったボランティア自身も「生きる」ことのリアリティを感じるきっかけとなった。日本食べる通信リーグは生産者のための支援だけではなく、消費者が「豊かさ」を取り戻すためのツールだ。

6.WASSHA「今までになく新しいエコシステムを」

最後の登壇企業は「WASSHA」だ。工業の発展は国民の所得をあげるために必要不可欠だ。しかし、現在もなおアフリカでは1次産業従事者の人口が多いため一人あたりの所得が増えない。一方で、アフリカのインターネット普及率は世界中で類を見ない発展を遂げており、田舎の村にさえ3Gのネットワークが流れている。一次産業から二次産業へ、二次産業から三次産業へといったこれまでの先進国が辿ってきた発展の仕方ではないのがアフリカの現状だ。

WASSHA CEO 秋田氏

WASSHA CEO 秋田氏

WASSHAは未電化地域が6割を占めるアフリカで、LEDランタンを貸し出してミニマムの電力需要に応えるサービスを行ってきた。今後は新規事業として、RSAの中で立ち上げたECアプリをローンチする予定だ。識字率が低いアフリカでは事業の立ち上げ方や軌道に乗せる方法が浸透していない。WASSHAは研修やアプリ内のECを通してアフリカの起業家たちの与信作りまでをサポートしていく。

WASSHAのランタンによって仕事や勉強が夜中もできるようになり、さらに新規事業のアプリによって国内のビジネスも活性化していく。何の前例もない地域の中で、ゼロから国民の生活を変え、さらに国おこしに関わる取り組みになるだろう。

イベントを終えて

組織の枠組みを超えて、ゼロからイチを作ることをおもしろがる楽天社員と社会起業家の熱量を目の当たりにした。参加した楽天社員が誇らしげに、イキイキした表情で半年間の成果を述べていたのが印象的だった。このプログラムがもたらした価値として、楽天が社会起業家を支援しているプログラムに見えて、実は楽天社員にとっても大きな学びの機会となっている。楽天に代表される「楽天市場」から学生や自治体との人脈まで、楽天が持つフルアセットを用いて、かなりの労力や時間を費やして実現したプログラムだったが、KPIでは測りきれない価値があったのだろう。

RSAが終わった後の社会起業家がどうなっていくのか、そして参加した楽天社員がどのようにステップアップするのか、今後の活躍に期待したい。

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