気候変動の影響を、普段の生活の中で感じることはどれほどあるだろうか。おそらくほとんどの人は、意識すらしていないかもしれない。自分の日常生活が直接おびかされるようなことがないかぎり、そういった問題には関心が薄れてしまうのが人の性である。
2017年6月には、世界各国の気候変動への対策を取り決めるパリ協定について、トランプ大統領率いるアメリカ合衆国が「経済的なデメリットが大きいから」と離脱を発表したことが記憶に新しい。世界第2位の温室効果ガス排出国のアメリカの離脱は、世界に大きなショックを与えた。
そんなトランプ大統領の決定に、ユニークな方法で抗議した会社がある。スコットランド生まれのブルワリーBrewDog(ブリュードッグ)だ。BrewDogは、今年11月に気候変動への意識を高めるセゾンビール「Make Earth Great Again」の販売を開始した。
商品名は言わずもがな、トランプ大統領の選挙スローガン”Make America Great Again”のパロディだ。ラベルにはトランプ大統領と、温暖化により絶滅の危機にあるホッキョクグマが対峙したイラストが描かれている。
セゾンビールは、通常よりも高い温度で醸造されたビールだ。まるで、上がっていく気温をそれとなく伝えているようである。ほかにも「Make Earth Great Again」に使われている材料は、北極の氷が溶けた水や、温暖化によって数が減っているクラウドベリーなど、気候変動の影響をダイレクトに受けている地域からとれたものばかりだ。
さらに、スコットランドを中心に展開しているBrewDogの店舗では等身大のホッキョクグマのレプリカからビールが注がれるなど、気候変動に対する危機感をあおっている。
なぜこのようなビールの製造を決めたのか。BrewDogの創立者であるジェームズ・ワット氏は、「Make Earth Great Again」の発案についてこう語っている。
「わたしたちの住む地球の気候変動に、世界をひっぱっていくべきリーダーが無関心ではいけないと思いました。気候変動に対して何かアクションをしている団体を支援するため、そしてビールを愛する一般の人々の意識を高め、声を届けていくためにこのビールを作ったのです。ビールは万国共通の言語ですから。」
「Make Earh Great Again」の収益は、すべて気候変動対策に取り組んでいるチャリティー10:10に寄付される予定だ。
気候変動は世界的な問題であり、人々の生活にも少しずつ確実に変化をもたらしている。それはわたしたちにとっては今のところ小さすぎて、気が付かないかもしれない。しかし、問題が目に見えるようになってからでは遅いのだ。
「Make Earth Great Again」は、絶大な力を持つ国家にも、そしてわたしたちにも気候変動に目をそむけてはいられないということを教えてくれている。
【参照サイト】MAKE EARTH GREAT AGAIN
【参照サイト】MAKE EARTH GREAT AGAIN: BREWDOG’S NEW PROTEST BEER CHALLENGES LEADERS TO PRIORITISE CLIMATE CHANGE ISSUES